労働関係の時効

労働関係の時効

社員から未払いの残業手当の支払いを求めて訴えられたときに、いつまでさかのぼって支払わないといけないのかという時効が問題になることがあります。

また、例えば、10年前に行われた解雇の無効を訴えることができるのか、ということが問題になったりします。

労働関係の時効についてお送りします。

労働基準法上の時効

労働基準法では、退職金の請求権は5年、賃金、災害補償、その他の請求権は2年、で時効によって消滅することとされています。

「賃金」には、残業手当や賞与など労働の対償として支払う全てのものが含まれます。なお、時効の起算日は権利が発生した日ですので、賃金については賃金の支払日が起算日となります。

また、「災害補償」の請求権も2年とされていますが、通常、業務災害が起きたときは労災保険に基づいて補償が行われます。

そして、労災保険(「労働者災害補償保険法」)では、療養補償給付、休業補償給付、葬祭料、介護補償給付、療養給付、休業給付、葬祭給付、介護給付及び2次健康診断等給付を受ける権利は2年、障害補償給付、遺族補償給付、障害給付及び遺族給付を受ける権利は5年、で時効によって消滅することとされています。

「その他の請求権」とは、休業手当の支払いや退職時の証明書の交付、年次有給休暇の請求権などがあります。これにより、未使用の年次有給休暇は翌年度に限って繰り越しができることになっています。

従来は「退職金」も賃金と同じで時効は2年とされたのですが、退職金は一般的に高額で、支給に関してトラブルになりやすいこと等から、時効は5年に延長されました。

時効の中断

時効の進行中に、請求や差押え、相手方の承認などがあった場合は、時効が中断します。時効が中断すると、残りの期間が経過しても時効は完成しないで、時効の進行がリセットされます。

請求とは、裁判上の請求のことで、訴訟を提起することを言います。

また、例えば、「残業手当を支払って欲しい」と裁判外で通知をする催告があったときも、その6ヶ月以内に訴訟を提起すれば時効は中断されます。

更に、個別労働紛争解決促進法に基づいて行われるあっせんが打ち切られた場合も、打ち切りの通知を受けた日から30日以内に訴訟を提起すれば、あっせんの申請時に訴訟の提起があったものとして、時効は中断されます。

相手方の承認とは、例えば、会社が「未払いの残業手当がある」と認めることを言います。

時効の援用

残業手当の時効は2年ですが、時効の2年が過ぎても、自動的に支払い義務が消滅することはありません。

支払い義務を消滅させるためには、会社が「2年以上前のものは時効で支払い義務がないから支払わない」、「消滅時効を援用する」と主張しないといけません。

2年を超える未払いの残業手当を請求してくるケースが稀にありますので、このような請求があったときは、2年以上前のものが含まれていないか必ず確認をして、2年以上前のものが含まれている場合は、会社は時効の援用を主張する必要があります。

民法上の時効

労働基準法で定められているものは以上のとおりですが、労働基準法で定められていないものについては民法が適用されます。

民法では、一般債権は10年間行使しなければ時効により消滅することとされています。

安全配慮義務違反

セクハラやパワハラの被害を受けたり、長時間労働を強いられたりして、職場の環境が原因で病気になったりすることがあります。

このような場合に、安全配慮義務違反(債務不履行)を根拠にして損害賠償を請求する場合は、原則どおり、権利を行使できる時点から10年で時効になります。

権利を行使できる時点とは、損害が発生した時点が原則ですが、じん肺に関するものは、管理区分について行政上の決定を受けたときから消滅時効が進行するものとされています。

不法行為

不法行為に基づく請求権の時効は、被害者が損害及び加害者を知った時点から3年、不法行為があった時点から20年とされています。

労働基準法で定められているとおり、未払いの残業手当の請求権の時効は2年ですので、ほとんどの訴訟は最初から過去2年分の残業手当の請求しか行いません。

しかし、会社が意図的に社員の労働時間の把握を怠って、長時間労働をさせていたケースでは、不法行為として3年分の未払いの残業手当の支払いを命じた裁判例があります。

解雇無効の訴え

解雇をして長期間経過した後に解雇の無効を訴えることができるのかという問題があります。

労働契約関係が存在することの確認を裁判所に提起するのですが、請求権を行使する場合とは異なるため、時効とは別の問題として取り扱われます。

解雇無効の訴えは、いつまでなら可能とは定められていません。それぞれのケースにより個別に判断されます。解雇してどれぐらいの期間が経ったのか、解雇当時の状況、これまで訴えられなかった事情等が考慮されます。

裁判例では、解雇をして10年以上経っているケースでは信義則に反するとして訴えが認められなかったり、8年経っていて訴えが認められたといったケースがあります。また、解雇に関して異議を申し立てないで退職金を受け取って3年ほど経過したケースでは、本人が解雇を黙認していたと判断されました。

付加金の支払い

解雇予告手当、休業手当、残業手当、年次有給休暇の賃金の未払いがあって、訴訟が提起されたときは、裁判により未払い金に加えて同一額の付加金の支払いを命じられることがあります。

付加金は、労働基準法で定められている規定で、悪質な場合に制裁として裁判所が命じるものです。

残業手当の時効は2年ですが、意図的に支払わなかったりしていると、2倍の金額(4年分)の支払いを求められることがあります。

メールマガジン

(2015/3作成)