平均賃金とは

平均賃金とは

労働基準法では、賃金を補償するときの基準となる賃金として、「平均賃金」というものが定められています。

この平均賃金は、算定しないといけない事由が生じた日の前日からさかのぼった3ヶ月の間に、その社員に支払われた賃金の総額を、その3ヶ月の暦日数(出勤日数ではありません)で割って算出します。

つまり、暦日1日あたりの賃金ということです。

平均賃金を用いるケース

平均賃金を算定しないといけない事由として、次のケースが労働基準法で定められています。

解雇予告手当を支払うとき

解雇をするときは30日以上前に本人に予告しないといけませんが、この解雇の予告をしない場合は平均賃金の30日分以上を解雇予告手当として支払わないといけません。

また、解雇予告の日数が30日に満たない場合は、満たない日数分の平均賃金を支払わないといけません。

休業手当を支払うとき

会社の都合で休業させる場合は、1日につき平均賃金の60%以上を休業手当として支払わないといけません。

年次有給休暇の賃金を支払うとき

年次有給休暇を取得した日については、所定労働時間勤務したものとみなして賃金を支払っている会社が大半ですが、平均賃金で支払う方法も認められています。

ただし、その場合は就業規則(賃金規程)に平均賃金で支払うことを規定しておく必要があります。

休業補償等の給付を行うとき

社員が業務上の災害に遭ったときの賃金の補償として、休業補償等の給付を行うことが定められています。この金額の基礎として平均賃金が用いられます。

休業補償以外では、障害補償、遺族補償、埋葬料、打切補償、分割補償があります。これらは、通常は労災保険から給付が行われます。

減給の制裁を行うとき

就業規則で減給の制裁を定める場合において、減給できる金額は違反行為1回につき平均賃金の半額までとされています。

これは社員に支給するものではありませんが、制裁の限度額の基準として定められています。

平均賃金を算定しないといけない事由が生じた日とは

3ヶ月間とは

平均賃金は、過去3ヶ月の間に支払われた賃金総額とその期間の暦日数により算出します。

このときに、賃金の締切日がある場合は、算定事由が生じた日の直前の賃金締切日を基準にして3ヶ月さかのぼることとなっています。

例えば、賃金の締切日が毎月15日の会社で、7月20日に算定事由が生じた場合は、直前の締切日となる7月15日が基準になります。そして、これから3ヶ月さかのぼった4月16日から7月15日までの期間に対する賃金総額を、その期間の暦日数91日で割って算出します。

なお、算定事由が生じた日の前日からさかのぼりますので、賃金締切日の7月15日に算定事由が生じたときは、その前の締切日の6月15日が基準になります。

除外される期間

平均賃金を計算する3ヶ月の間に、次の期間が含まれる場合は、その期間の日数とその期間中の賃金を控除して計算します。

  1. 業務上の傷病のために休業した期間
  2. 産前産後の休業をした期間
  3. 会社の都合で休業をした期間
  4. 育児休業、介護休業の期間
  5. 試用期間

これらの期間中は無給であったり、通常より賃金が低いので、これらの期間を含めて計算すると平均賃金が低くなってしまいます。このため、これらの期間と賃金は除外して計算することになっています。

試用期間は平均賃金の計算から除外することになっていますが、試用期間中に平均賃金を計算することになった場合は計算ができません。そのときは例外的に、試用期間(直前の締切日までの期間)の日数とその賃金総額で計算します。

また、入社して3ヶ月未満で3ヶ月に足りない場合も、入社日から直前の締切日までの期間とその賃金総額で平均賃金を計算します。

賃金の総額とは

平均賃金を計算するときの賃金の総額には、通勤手当や割増賃金、歩合給など、全ての賃金が含まれます。

ただし、賞与(3ヶ月ごとに支払われる場合は含めて計算しないといけません)や臨時に支払われた賃金(結婚祝金や見舞金、退職金など、臨時的、突発的な理由に基づいて支給するもの)は、賃金総額には含みません。

平均賃金の最低保障

日給制や時給制の者については最低保障が定められています。

通常は3ヶ月の暦日数で割って計算するところを、その期間の出勤日数で割った金額に100分の60を掛けた金額が最低保障額となります。

そして、原則的な方法で計算した平均賃金と、この方法で計算した平均賃金を比較して高い方が平均賃金となります。

例えば、過去3ヶ月間の賃金総額が320,000円、暦日数が92日、出勤日数が40日とします。

このときに、原則的な方法で計算すると平均賃金は、3,478.26円(320,000円/92日)となります。

一方、最低保障額は4,800円(320,000円/40日×60/100)となり、最低保障額の方が高額になります。したがって、4,800円が平均賃金になります。

また、月給制の者について、私傷病等による欠勤は、それが通常の勤務状態であると考えられますので、欠勤期間も含めて平均賃金を計算することになっています。

しかし、この場合も、欠勤しなかったと仮定したときの賃金総額を、その期間中の所定労働日数で割った金額に100分の60を掛けた金額が最低保障額となります。

(2012/5作成)
(2014/5更新)