問題社員が多くなった原因は?

問題社員が増えている?

経営者の方から、「最近は困った社員が増えた」と言って相談を受ける機会が多くなりました。

そのときによく聞くのが、「最近の若い社員は義務を果たさないで、権利ばかりを主張したがる」といった言葉です。

「今の若い者は...」というのは、昔から繰り返し言われる言葉ですが、それぞれの時代背景も影響するのでしょう。

従来の会社と社員の関係

問題を起こす社員が増えてきた、その根本には、会社と社員の関係が、これまでと変化してきていることにあると思います。

会社による保護

昔の高度成長の時代は、「終身雇用」と「年功賃金」により、会社が社員を保護していました。

要するに、社員が定年退職するまで会社は雇用を保障して、賃金は年功的で会社に在籍している限り自動的に上昇していました。

会社による支配

会社は社員に対して、「終身雇用」と「年功賃金」を約束する代わりに、社員を支配、言い換えると「言いなりに」してきました。

例えば、転勤や配置転換は、会社の都合で一方的に行って、社員はこれに従わせます。従わない場合は退職するしかありません。

また、部下は上司の指示通りに行動することが求められます。若い社員に対して、「会社に従っていれば悪いようにはしない」と説得して、多少理不尽なことであっても、会社の言うことに従わせることができました。

このようなことから、社員は自分の考えを抑えて、会社に依存をする傾向が強くなります。

会社【保護+支配】→社員
←【従属+依存】

過渡期のひずみ

このような関係が大きく変化しています。今の時代、会社が終身雇用と年功賃金を約束することはできません。終身雇用と年功賃金が約束できなければ、社員を言いなりにさせることはできません。

会社による保護と支配を基礎とした組織運営が成り立たなくなって、様々な場面でひずみが生じています。

整理解雇(リストラ)

指示命令型の上下関係の組織において、最終的な責任は命令を出した者にあります。命令をそのまま実行した社員に責任はありません。

上から指示命令を受けて、その通りに実行し続けてきたのに、会社がつぶれそうになったから、急に辞めてくれと言われても、社員には理解できません。

成果主義賃金

成果主義賃金と呼ばれる賃金制度も同じです。

成果に対する責任を取らせるためには、社員に権限の一部を委譲して、自由な裁量を与えないといけません。自由な裁量を与えないで、成果に対する責任を取れというのは無茶な話です。

従来の関係の終わり

今の若い社員にとって、終身雇用や年功賃金は昔の話で、「会社に雇ってもらっている」という感覚が希薄になっています。会社に依存することなく、自律していると言えます。

会社とは上下関係ではなく対等な関係という意識が強いので、残業をすれば残業手当をもらうのは当たり前、年次有給休暇を取るのは当然の権利と思うことでしょう。このときに、会社が従来の上下関係で対処しようとする所に、トラブルの原因があるのではないでしょうか。

会社が終身雇用と年功賃金を約束できないとすると、社員は会社の無理な要求に従う理由がありません。今の時代に、「会社に従っていれば悪いようにはしない」と説得して、信用する者はいないでしょう。

会社【保護+支配】→社員
←【従属+依存】

今はもう、この関係が成立しなくなっています。会社は社員を保護できないのだから、社員を言いなりにさせることはできません。この認識が経営者の間に広がれば、労使間のトラブルは減るのではないでしょうか。

これからの会社と社員の関係

対等な関係

会社と社員は上下関係から、対等な関係に変わります。法律の遵守は当たり前のこととして、サービス残業を強要したり、年次有給休暇を拒否したりすることはできないようになります。

また、対等な関係になるために、ある程度は社員に権限を委譲しないといけません。

社員の自律

社員も会社に依存するのではなく、自律する必要があります。つまり、会社から言われたことだけをやっていれば十分なのではなく、自ら考えて行動できないといけないということです。

社員の能力を活かせる場を提供する

会社が将来を約束できないとなると、自律した優秀な社員は自分のキャリアについて考えるようになるでしょう。今の会社で自分を活かせる場がないと、その会社にいる意味がなくなり、退職していく恐れがあります。会社は、個々の社員が能力を発揮できる場を如何に提供できるか、が最も重要な課題になってくるでしょう。

では、どのような環境を提供するか。それは、多くの仕事のチャンスを与えることです。自律した人材の条件の1つは、問題を発見する能力があるということです。つまり、与えられた仕事をこなす能力以上に、自ら仕事を作り出す能力があるということです。

会社が目指す方向性と個々の社員に求める成果を明確にして、社員から提案が出てくればやらせてみる。そうすれば、社員の満足度も上がるし、会社の発展にも貢献してくれるでしょう。

(2004/7作成)
(2014/5更新)