兼業について

兼業について

最近は、昇給がなくなったり、ボーナスや残業手当が減ったりして、手取りの収入が少なくなっていることがあります。

そのような状況で、生活を維持するために、休みの日にアルバイトをしている社員が増えているようです。

そこで、他の会社と掛け持ちで働く「兼業」について、お伝えします。

兼業による影響

皆さんの会社の就業規則では、服務規律に、「会社の許可を得ないで、他の会社等の業務に従事したり、自ら事業を営んではならない」といった規定があって、これに違反した場合は懲戒処分の対象になっているのではないでしょうか。

本来、勤務時間外は社員の自由な時間です。しかし、別の所で深夜勤務をして、そのまま朝に会社に出勤してくると、寝不足で、会社の業務に悪影響が出てきます。

また、長時間労働が続くと疲労が蓄積され、本人の健康を害してしまう恐れがあります。もし、このような状況を放置していて、労災事故が起きると、会社に損害賠償責任が及ぶことも考えられます。

更に、別の勤務先が同業他社だと、会社の機密情報が漏れる恐れがありますし、風俗関係だと、会社の信用問題にもかかわってきます。

兼業の取り扱い

このようなことから、会社は社員の勤務時間外の兼業について、一定の制限を加えることができます。

しかし、原則的には、勤務時間外は社員の自由な時間ですので、兼業は一切認めないということはできません。会社の業務に支障(疲労回復、対外的信用、機密漏洩)が生じない程度のものであれば、認めないといけないと考えられています。

したがって、業務に支障が生じないかどうかを判断するために、通常、就業規則では「会社の許可を得ないで、・・・」となっています。

兼業の取り扱いのルール

兼業を黙認していると、会社に責任が及んだり、機密漏洩の危険があったりします。兼業の取り扱いのルールを定めましょう。

兼業の許可基準

まずは、兼業は許可制として、会社が許可した場合に限って認めることとします。あらかじめ兼業の許可基準を定めておきましょう。

兼業の許可申請書

社員が兼業を行う際は、「兼業許可申請書」を提出してもらいます。

許可申請書の内容は、兼業先の会社名、業務内容、勤務期間、雇用の形態(アルバイト・正社員・派遣・嘱託など)などです。許可基準と照らし合わせて、許可するかどうか判断します。

兼業の対象者

全ての社員を同じように扱うことはできません。重要な職務を担っている社員については、兼業を一切禁止することも許されるでしょう。

兼業の誓約書

兼業の許可を与えて、兼業を開始するときは「誓約書」を提出してもらいます。

なお、誓約書の中で、兼業を許可した場合でも、欠勤や遅刻が多くなったりして、業務に支障が生じた場合は、兼業を制限できるようにしておきます。更に、虚偽の申請や申請を怠った場合は、懲戒処分を行うこととします。

労働時間の取り扱い

もう1つ兼業に関して注意しないといけないことがあります。労働時間の取扱いについてです。

1日8時間又は1週40時間を超えて勤務させた場合は、会社は割増の時間外勤務手当を支払わないといけません。この労働時間は、勤務先が異なっていても通算することになっています(労働基準法第38条第1項)。

したがって、会社の勤務時間と兼業先の勤務時間の合計が、1日8時間又は1週40時間を超えたときは、その超えた時間に対して時間外勤務手当を支払わないといけません。この場合、どちらの会社が割増の時間外勤務手当を支払う義務があるのでしょうか?

なかなか難しい問題なのですが(社員が請求してくることは考えにくいので?)、とりあえず、会社の勤務時間と兼業先の勤務時間の合計が、1日8時間又は1週40時間を超えないよう管理して下さい。超えることが分かっている場合は、過重労働の心配がありますので、そのような兼業は許可しないで下さい。

(2006/8作成)
(2014/6更新)