是正勧告とは|労働基準監督署が調査・指摘する7項目と対応策

労働基準監督署の調査

労働基準監督署の調査には、「定期監督」と「申告監督」と呼ばれるものがあります。

申告監督に該当する場合は、定期監督より厳しくチェックされる傾向がありますが、どちらに該当するかは通常は教えてもらえません。どちらであっても、労働基準法を根拠にして調査するものですので、会社は応じる必要があります。

是正勧告とはどのようなものか

労働基準監督署が調査を行って、労働基準法や労働安全衛生法に違反している事実が発覚したときは、是正勧告が行われます。明らかな法違反ではないけれども、法違反に繋がる恐れがある事項については、指導が行われます。

法律に違反している場合は、労働基準監督官は、逮捕したり、送検したりする権限がありますが、重大な違反、悪質な違反でない限り、いきなり逮捕や送検されることはありません。しかし、是正勧告を受けたにもかかわらず、会社が放置していると、書類送検される可能性があります。

労働基準監督署が調査をして、労働基準法違反として指摘する事項は、ある程度決まっています。労働基準監督署の調査ポイントと指摘されないようにするにはどうすれば良いのかまとめました。

労働条件の明示

従業員を採用するときは、雇用契約書や労働条件通知書を交付して、労働条件を明示していますか?

労働基準法第15条
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。

会社は、採用時に、賃金、労働時間、契約期間、勤務地、職務内容など、労働条件を記載した雇用契約書や労働条件通知書を作成して、従業員に明示することが義務付けられています。

調査を受けたときに、従業員に交付した雇用契約書や労働条件通知書の控え等を提示できないと、是正勧告が行われます。

雇用契約書を作成していない場合は作成して、次から採用する従業員に交付してください。法改正によって、記載しなければならない明示事項が追加されましたので、漏れがないようにする必要があります。

就業規則の作成及び届出

従業員数が10人以上の会社は、労働基準監督署に就業規則を届け出ていますか?

労働基準法第89条
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

パートタイマー等も含めて従業員数が10人以上の会社は就業規則を作成して、労働基準監督署に届け出ることが義務付けられています。就業規則を変更した場合も、その都度、労働基準監督署に届け出る必要があります。

調査を受けたときに、労働基準監督署の受付印が押印された就業規則を提示できないと、是正勧告が行われます。就業規則の変更を伴う法改正があったときは、それに合わせて就業規則を変更する必要があります。未対応の場合は指導の対象になります。

従業員数が10人以上になったときは就業規則を作成して、就業規則を変更したときは、その都度、労働基準監督署に届け出てください。

36協定(時間外・休日労働に関する協定届)

時間外労働・休日労働をしている場合は、36協定を労働基準監督署に届け出ていますか?

労働基準法第36条
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第32条から第32条の5まで若しくは第40条の労働時間又は前条の休日に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。

1日8時間又は1週40時間の法定労働時間を超える時間外労働をさせる場合は、36協定を労働基準監督署に届け出る必要があります。届け出ていない状態で時間外労働をさせていると、労働基準法違反になります。

労働基準法第36条は、36協定を届け出れば、時間外労働が可能になるという構成ですので、労働基準法第36条違反ではなく、法定労働時間を定めた労働基準法第32条違反として取り扱われます。休日労働についても同様に、労働基準法第35条違反として取り扱われます。

また、36協定で定めている限度時間を超えて時間外労働をしていないかどうかも調べられます。

労働基準監督署の調査で、36協定の有無は必ずと言っていいほどチェックされます。36協定は初歩的な書類で、これが未整備の会社は他も不十分だろうと推測されて、他の事項も入念にチェックされます。

36協定には有効期限があって、最大1年間ですので、有効期限が切れている場合も、労働基準法違反になります。毎年決まった時期に作成して、労働基準監督署への届出を忘れないよう注意してください。

なお、就業規則は、「従業員数が10人以上の会社」という条件がありますが、36協定は1人でも対象者がいれば届け出る必要があります。

労働時間

労働基準法第32条

  1. 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
  2. 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。

原則的には、1週40時間又は1日8時間を超えて労働させることが禁止されています。ただし、36協定を作成して、労働基準監督署に届け出れば、違法でなくなります。

休日

労働基準法第35条
使用者は、労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならない。

原則的には、1週間に1回は休日を与えることが義務付けられています。

賃金の支払

賃金を支払うときに、税金と社会保険料以外のものを控除していませんか?控除している場合は労使協定を締結していますか?

労働基準法第24条
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

賃金は、全額を支払うことが原則で、税金や社会保険料などの法令で定められている以外のものを控除することが禁止されています。それら以外の食事代金や従業員旅行の積立金などを控除する場合は、従業員の過半数代表者と労使協定を締結する必要があります。

賃金台帳や給与明細を確認して、税金と社会保険料以外のものを控除しているにもかかわらず、労使協定を締結していない場合は、是正勧告が行われます。

税金と社会保険料以外のものを控除していない会社は、労使協定を締結する必要はありません。税金と社会保険料以外のものを控除している会社は、労使協定を締結してください。なお、この労使協定は届け出る必要はありません。

時間外労働・休日労働・深夜労働の割増賃金

時間外労働・休日労働・深夜労働に対して、適切に割増賃金を支払っていますか?

労働基準法第37条
使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

時間外労働に対しては2割5分以上、休日労働に対しては3割5分以上の率で計算した割増賃金を支払うことが義務付けられています。また、月60時間を超える時間外労働については、中小企業を含めて、5割以上の割増率が適用されます。

賃金台帳(給与明細)やタイムカード(出勤簿)を確認して、30分未満の労働時間を切り捨てたり、上限金額(上限時間)を設定したりして、割増賃金を適正に支払っていないと、是正勧告が行われます。

また、割増賃金の基礎となる賃金から除外できる賃金(手当)が限定されていますが、除外できない賃金(手当)を除外していると、労働基準法で定められた割増賃金の金額に満たないことになりますので、その場合も、是正勧告が行われます。

是正勧告が行われたときは、不足額について、さかのぼって支払うよう求められます。なお、賃金請求権の消滅時効は5年ですが、当分の間は3年とされています。

管理監督者

労働基準法第41条
この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

  1. 別表第1第6号(林業を除く。)又は第7号に掲げる事業に従事する者
  2. 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
  3. 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

労働基準法上の管理監督者に該当する場合は、労働時間、休憩及び休日に関する規定が適用されませんので、結果的に割増賃金(深夜勤務手当は除きます)の支払いが不要になります。

そのため、管理監督者を拡大解釈して、適用している場合に、それが否定されることがあります。その場合は通常の従業員として取り扱って、さかのぼって未払いの割増賃金を支払うよう是正勧告や指導が行われます。

なお、管理監督者とは、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」とされていますので、肩書が課長や部長であっても、経営者としての権限がない者は認められません。

賃金台帳

賃金台帳を作成していますか?

労働基準法第108条
使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。

一定の事項を記載した賃金台帳を作成することが義務付けられています。給与明細と似ていますが、必要事項を網羅していれば、給与明細を賃金台帳として提示しても構いません。

調査を受けたときに、賃金台帳(給与明細)を提示できなかったり、必要な記載事項が不足している場合は、是正勧告が行われます。賃金台帳の法定記載事項を確認して、作成してください。

年次有給休暇

1年に5日以上の年次有給休暇を取得させていますか?

労働基準法第39条第7項
使用者は、第1項から第3項までの規定による有給休暇の日数のうち5日については、基準日から1年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。

法改正があって、10日以上の年次有給休暇を付与した従業員に対して、1年に5日の有給休暇を取得させることが義務付けられました。取得日数が5日に満たない従業員がいる場合は、是正勧告が行われます。

年次有給休暇の付与日数や取得日数を適正に管理するために、年次有給休暇管理簿を作成することも義務付けられています。調査の際に、提示できるようにしてください。

健康診断

採用時及び毎年1回定期に健康診断を実施していますか?

労働安全衛生法第66条
事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない。

労働安全衛生法によって、雇入れの際、及び、1年に1回以上の定期健康診断を実施することが義務付けられています。これを実施していない場合は、是正勧告が行われます。

また、健康診断の結果を記録した健康診断個人票の作成も義務付けられていますので、未整備の場合は是正勧告の対象になります。

協会けんぽの補助を利用する等して、定期健康診断を行ってください。

(2016/7作成)
(2026/3更新)


社会保険労務士 木下貴雄

執筆者:社会保険労務士 木下貴雄【 登録番号 第27020179号 】
就業規則を専門とする社会保険労務士です。メールを用いた関連サービスは20年以上の実績があり、全国の中小零細企業を対象に、これまで900社以上の就業規則の作成・変更に携わってきました。