役職定年制
役職定年制とは
役職定年制とは、部長や課長等の役職者が所定の年齢に達したときに、役職を解任する制度です。通常は55歳から60歳の範囲内で設定しています。
年功序列の傾向がある企業では、一度役職に就くと、原則として解任(降格)はありません。そのため、係長が次世代幹部のポテンシャルがあって、課長の職務を遂行できそうな場合でも、課長が部長等に昇進するか、(定年)退職でもしない限り、課長のポストに就けることができません。
役職定年制は、組織の新陳代謝を図ったり、ポスト不足を解消したりすることを目的として導入されます。また、1990年前後に定年退職の年齢を55歳から60歳に引き上げる政策が実施されて、その際に導入されたケースもあります。役職定年制は、歴史が長い大企業で導入されているケースが多いです。
役職定年制のメリット
- 役職定年制で組織が若返ることによって、変化に対応しやすくなったり、新しいアイデアが生まれたり、組織の活性化が期待できます。
- ポストがなくて昇進や成長が見込めないと、モチベーションが低下して、退職することがあります。数年後にポストが空くことが決まっていると、モチベーションの維持・向上が期待できます。
- 年功序列賃金となっている場合は、人件費の高騰を抑制できます。
- <若い従業員に役職を与えて経験を積ませることで、次世代幹部の選抜や育成ができます。
解任後の業務
一方で、役職を解任された従業員は、「会社に必要とされなくなった」と考えて、モチベーションが低下する可能性が高いです。役職定年制の避けて通れないデメリットで、従業員同士の関係が悪化すると、会社全体に悪影響が及びます。
解任した後に活躍できる環境を用意する必要がありますが、どのような業務にやりがいを感じるかは個人によって異なります。役職者としてのプライドがありますので、会社から不本意な業務を押し付けると反感を持たれます。
マネジャーの業務を廃止して、これまでの知識・経験・人間関係等を活かそうとすると、同じ部署でプレイヤーとして従事する方法が第一に考えられます。しかし、以前の部下が上司になって、立場が入れ替わると、以前の上司である部下に対して「指示や命令がしにくい」と気兼ねをすることがあります。
上司と部下は上下関係ではなく、役割であると認識してもらえれば良いのですが、個々の関係によっては難しい場合があります。職務内容によりますが、組織図のラインから外れて、スペシャリストとして独立した地位を新設する方法もあります。
その他に考えられる業務としては、新入従業員や後輩に技能を継承したり、新任の役職者の相談相手になったり、新しいスキルを身に付けて他の部署に配置転換をするケースもあります。関連企業があれば、出向や転籍という方法もあります。
本人の希望を聴いて、受け入れられる余地があるか検討して、会社として期待する役割と成果を明示して、丁寧に話し合うことが大事です。
なお、役職に就けるときに、プレイヤーからマネジャーに業務を完全に切り替えるより、プレイング・マネジャーとして両方の役割を担当し続ける方が解任後の移行をスムーズに行えます。
モチベーションの維持
役職を解任されると目標を失って、漠然とした不安を感じる人もいます。キャリア研修を実施して、今後のキャリアをどのように形成していくべきかが明確になれば、不安は解消されると思います。
また、肩書に拘る人もいますので、「担当課長」「専任課長」「専門課長」など、呼称に工夫をすることもあります。課長等の呼称を残しておけば、対外的な仕事にも影響が生じにくいです。
賃金の減額は、「会社が期待していない証拠だ」と感じて、モチベーションの低下の原因になりやすいです。役職を解任することによって、役職手当を不支給とすることは問題ありませんが、基本給等を減額する場合は根拠が必要で、相応の理由がなければ本人から納得は得られないでしょう。
これまでと同等の成果を期待するのであれば、それを明確に伝えて、基本給は減額するべきではないと思います。
後任の適任者の不在
後任の役職者が前任のような成果を出せなかったり、場合によっては混乱を招くことがあります。ある程度は順応するための期間が必要ですが、前任者や周囲の者がサポートしたとしても、経験不足や能力不足が明らかな場合は、役職定年を見送ることも考えられます。
また、少人数で業務を処理している部署も、登用できる適任者がいないケースがあります。役職定年をする時期は決まっていますので、それに合わせて計画的に後任を育成しておくべきでしょう。
定年年齢の引上げ
高年齢者雇用安定法によって、次のいずれかの措置を講じて、65歳まで雇用することが義務付けられています。
- 再雇用制度を導入する
- 定年年齢を引き上げる
- 定年制を廃止する
現在は、60歳で定年退職して、嘱託従業員として65歳まで再雇用する措置を講じている企業が多いです。再雇用のタイミングで賃金を減額するケースが一般的ですが、60歳になっても心身共に健康な人が増えて、人手不足の影響もあって、定年年齢を65歳に引き上げる企業が増えています。
60歳以降も正社員のまま65歳まで、相応の戦力として期待しつつ、60歳で役職を解任する場合に役職定年制の導入が考えられます。
なお、国家公務員については、2023年度から2031年度に渡って、定年年齢が段階的に60歳から65歳に引き上げられます。これに伴って、60歳以上の職員を対象にして、役職定年制が導入されました。なお、一般企業については、65歳への定年年齢の引上げは、今の所は法律で義務付けられていません。
役職任期制とは
近年は年功序列の傾向が弱まって、成果主義やジョブ型雇用の人員配置・登用を取り入れる企業が増加していますので、年齢のみを基準とした役職定年制の導入率は低下しています。
役職定年制と似た制度で、導入している企業は少ないですが、役職任期制という制度があります。役職任期制とは、任期を設定して役職に就けて、任期が満了したときに、その間の成果を評価して、再任、昇進、解任の判定を行う制度です。任命する際に、あらかじめ期待する成果を具体的に明示することが望ましいです。
役職の解任が滅多にない職場で解任(降格)をすると、遠回しの退職勧奨と受け止めて、転職するケースが多いです。任期満了による解任を前提として、登用と解任を定期的に行って、再チャレンジの機会を与えるようにすれば、モチベーションの維持が期待できます。
また、解任する仕組み(制度)を設けて、解任は定期的に実施されるものと社内で認識されれば、解任によるダメージが軽減して、その後の業務等について、前向きな話合いができるようになると思います。
(2025/7作成)
