タイムカードと労働時間・残業時間|切捨て・承認制のポイント
タイムカードによる労働時間の把握
タイムカードで労働時間を管理・把握をしている会社が多いです。その場合に問題になるのが、「タイムカードの打刻時間=労働時間(残業時間)」となるのか、端数の時間を切り捨てて残業手当を支払っても良いのかということです。
通常、タイムカードの打刻時間は「出社した時刻」「退社した時刻」を記録したものです。これは、会社にいた時間に過ぎません。
一方、残業手当を支払う義務がある労働時間(残業時間)とは、勤務していた時間(厳密に言うと会社の指揮命令下に置かれていた時間)のことを言います。
したがって、タイムカードの打刻時間と実際の労働時間(残業時間)には誤差(差異)が生じて、この誤差(差異)の取扱いが問題になります。
労働時間(残業時間)とタイムカードの乖離
このときに、タイムカードのみで労働時間を管理・把握している会社は、労働時間を示す客観的な資料がタイムカードしかありませんので、タイムカードの打刻時間が労働時間と推定されます。特に裁判になったときは、書面による証拠が重視されます。
タイムカードの打刻時間の中に、労働時間ではない時間(例えば、始業時刻より1時間前に出勤して新聞を読んだり、終業時刻後に同僚と世間話をしたりする時間)が含まれている場合は、会社がそれを証明しない限り認められません。
タイムカードは、出勤した時刻ではなく、業務を開始する直前に打刻、退勤した時刻ではなく、業務を終了した直後に打刻するよう指導して、実際の労働時間とタイムカードの打刻時間の誤差をできる限り小さくすることが、第一の対策として考えられます。
端数の切捨ては何分まで許されるか
タイムカードで労働時間を管理・把握している会社から、「タイムカードの時間は何分までなら切り捨てが認められるか?」という相談を受けることがあります。
実際の労働時間(残業時間)に基づいて、1分単位で計算をして残業手当を支払う義務があります。これが大原則です。タイムカードの時刻ではありません。重要なことですので繰り返しますが、“実際の労働時間(残業時間)”が基準になります。
しかし、タイムカードの打刻時間と実際の労働時間(残業時間)には誤差があることも事実です。切り捨てても問題がない時間については、職場とタイムレコーダーの設置場所の距離など、それぞれの会社によって事情が異なります。
例えば、毎日、定時の終業時刻から10分以内にタイムカードを打刻していれば、常識的に考えて、毎日、定時の終業時刻まで勤務していたものとして処理をしても問題はないと考えられます。
しかし、切捨ての時間が30分になると、その時間は勤務していなかったと会社が合理的に説明することは難しいと思います。労働基準監督署の調査があると、是正勧告や指導の対象になります。
残業承認制の導入で打刻時間リスクを回避する
労働時間を示す客観的な資料がタイムカードしかない場合は、タイムカードの打刻時間が労働時間と推定されます。このリスクを回避するために、第二の対策として、残業承認制の導入を推奨します。
従業員が残業(時間外労働や休日労働)をするときは、事前に所属長から(例えば、30分単位で)指示又は承認を条件とすることをルールとすれば、労働時間(残業時間)を示す証拠になります。
残業承認制を正しく運用していれば、タイムカードの打刻時間を10分程度切り捨てることになったとしても、問題になることはないでしょう。
しかし、それぞれの時間に30分を超えるような差異があると、残業承認制が正しく機能していないと判断される恐れがあります。残業を承認しないときは帰宅させること、残業を黙認しないことが大事です。
従業員が勝手にダラダラと残業したとしても、会社が黙認していた場合は、会社は残業手当を支払う義務があります。
また、遅刻や早退等についても同様に、タイムカードだけで管理をするのではなく、遅刻・早退届を併せて利用する方法も良いでしょう。
(2017/11作成)
(2026/3更新)
執筆者:社会保険労務士 木下貴雄【 登録番号 第27020179号 】
就業規則を専門とする社会保険労務士です。メールを用いた関連サービスは20年以上の実績があり、全国の中小零細企業を対象に、これまで900社以上の就業規則の作成・変更に携わってきました。
