退職金の支給義務

退職金の支給義務

退職金は、労働基準法などの法律によって、「支給しなさい」と定められているものではありません。退職金を支給するかどうかは、会社の自由です。

しかし、就業規則(退職金規程)で、退職金を支給することを定めた場合は、会社は就業規則(退職金規程)に基づいて、退職金の支給が義務付けられます。

労働基準法は労働条件の最低基準を定めた法律ですが、就業規則の内容が労働基準法の内容より、社員にとって有利に定められているときは、就業規則の内容が優先されます。

就業規則の内容が、会社と社員間の契約内容の一部として成立しますので、会社は社員に対して、退職金の支払いを約束したことになります。

退職金の減額

一度、就業規則(退職金規程)で、「退職金を支給する」と規定すると、後になって、退職金を減額したり、退職金制度を廃止したりすることは、非常に難しいです。

退職金の減額や退職金制度の廃止をするときは、就業規則の不利益変更の条件を1つずつ検討して進めないといけません。

そのときに、通常、退職金は大きな金額になりますので、社員が受ける不利益の程度も大きくなります。そのため、変更の必要性や代償措置等について、会社には高度なものが求められ、結果的に変更が認められないということも考えられます。

したがって、新しく退職金規程を作成する場合は、後になって、「退職金が支払えない」といった事態にならないよう繰り返しシミュレーションを行って、慎重に検討しないといけません。

若しくは、退職金規程は作成しないで、社員が退職する際に、その都度、会社が自由に退職金の金額を決定して、支給するという方法もあります。

社員にとっては、退職金がいくら支給されるのか分からないという不安が生じると思いますが、会社にとっては、何も制限を受けることがなく、自由に支給額を決められます。

退職金の現状

なお、ここ数年以内に設立された会社で言いますと、退職金制度は設けていない会社の方が多いように思います。

昔の右肩上がりの時代は、社員に長く勤務してもらいたいという考えから、社員を引き留めるために、退職金制度を設けていました。しかし、今の時代は、社員を引き留める必要性は、昔ほど大きくありません。

退職金制度を設ける意義が縮小し、会社の限られた資金を、退職金のために積み立てるのであれば、その分を賃金や賞与に上積みして在籍中に支払う方が、有効な使い道と考える会社が増えています。

中小企業退職金共済

それでも、退職金制度を設けたいと考える場合は、中小企業退職金共済(中退共)の利用をおすすめいたします。

数十年前の退職金は、「基本給×勤続年数別係数」で計算するものが一般的でした。このような基本給連動型の退職金制度は、将来的な債務(借金)を抱えることになります。

退職金のために積み立てていた資産の運用が予定通りにならなくて、多額の積立て不足が生じて困っている会社をたくさん見てきました。

中小企業退職金共済(中退共)は毎月積み立てていれば、それで会社の責任は果たしたことになりますので、将来的な債務(借金)が増えることはありません。

詳細は中退共のサイトをご覧になってください。

(2015/5作成)