労使委員会の活用

就業規則の不利益変更

会社の置かれている環境が変わると、現行の制度に不都合が生じて、制度の見直しを迫られることがあります。場合によっては、就業規則の変更を伴うこともあるでしょう。

そして、就業規則を従業員にとって不利益に変更するときは、従業員が受ける不利益の程度、変更しないといけない必要性の程度、代償措置など、いくつかの条件を総合的に考慮して、合理性の有無が判断されます。

更に、会社は従業員に対して、十分な説明や交渉をしたかどうかも重視されます。

労働組合の同意

従業員の多数が加入している労働組合がある場合は、その労働組合が交渉相手として、会社と対等な立場で協議ができると推定されます。

そして、就業規則の不利益変更について、労働組合から同意が得られれば、不利益変更が認められる可能性が高まります。しかし、今は、労働組合のない会社が増えています。

従業員の過半数を代表する者

労働組合がない会社は、従業員を集めて説明会を開催することはできますが、人数によっては交渉が難しく、収拾がつかないケースもあります。

そこで、労働基準法では、36協定等の労使協定を締結する当事者として、「従業員の過半数を代表する者」(過半数代表者)の制度があります。

従業員の過半数が加入する労働組合がない場合は、この「過半数代表者」が同意することによって、36協定であれば、本来は禁止されている1週40時間又は1日8時間を超える時間外労働ができるようになります。

この過半数代表者を交渉相手として、就業規則の不利益変更の同意が得られるよう協議や交渉をすることが考えられます。

しかし、過半数代表者は1人ですので、情報量や交渉力は、会社と比べるとどうしても劣ります。そのため、過半数代表者から不利益変更の同意を得たとしても、従業員の意思を十分に反映しているのかという疑問が残ります。また、そのような重大な責任を従業員1人に押し付けるのは、負担が大き過ぎて酷です。

労使委員会の要件

以上のことから、会社と従業員が対等な立場で協議、交渉する機関として、「労使委員会」を設置してはいかがでしょうか。

「労使委員会」とは、労働基準法により、企画業務型裁量労働制を導入するための要件として定められている制度です。労働基準法により、労使委員会に求められる要件として、次の内容が定められています。

なお、企画業務型裁量労働制を導入しないで、会社が任意で「労使委員会のようなもの」を設置する場合は、このような要件を満たしていなくても構いませんが、満たしていれば適法な労使委員会として認められます。

労使委員会の委員

労使委員会の委員は、会社を代表する者と従業員を代表する者で構成されます。そして、委員の半数は、従業員の過半数代表者が任期を定めて指名することになっています。なお、労働基準法で言う「管理監督者」は、従業員を代表する委員になることはできません。

労使委員会の議事録

会社は労使委員会の議事録を作成して、3年間保存しないといけません。また、議事録は従業員に周知することが定められています。

労使委員会の運営規程

労使委員会の運営について、必要な事項に関する規程を作成しないといけません。また、運営規程を作成、変更するときは、労使委員会の同意を得る必要があります。

不利益な取扱いの禁止

会社は、従業員が労使委員会の委員であること、労使委員会の委員になろうとしたこと、労使委員会の委員として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをすることが禁止されています。

労使委員会の効力

労使委員会にはこのように厳しい要件が求められていることから、過半数代表者の制度と比較して、より公正で、労使委員会の決議内容は重要な意義を持ちます。

このため、労働基準法では、労使委員会の委員の5分の4以上の多数により決議をしたときは、36協定や1年単位の変形労働時間制、フレックスタイム制、年次有給休暇の計画的付与等の労使協定に代替できる効力が認められています。

労使委員会の活用例

労使委員会は、労働条件を決定したり、変更したりする際に、労使協議を行う機関として機能することが期待できます。従業員側から複数の者が交渉に参加しますので、他の従業員の納得度も高まります。

例えば、就業規則を不利益変更する際に、労使委員会の委員の多数により、変更を認める決議をしたときは、変更の合理性があったと認められる可能性が高くなります。

また、会社が従業員を解雇するときに、解雇の正当性が問題になることがありますが、労使委員会において事前協議をして、多数により決議をしたときは、適正に行われたことを示すことができます。

解雇以外に配置転換や出向、懲戒処分など、権利濫用の可能性がある命令や処分を行う際にも同様のことが言えます。

更に、残業時間の削減に取り組むときに、会社から一方的に残業時間を削減するよう指示をしてもなかなかうまくいきません。そのような場合に、労使委員会を開催して、どのような取り組みが考えられるのかといった、従業員からの意見を吸い上げることも期待できます。

労使委員会の設置手順

労使委員会を設置する場合の手順は次のとおりです。

  1. 36協定の過半数代表者を選出するときと同じように、投票や挙手、話合い、回覧等によって、従業員の過半数代表者を選出します。その際は、従業員を代表する労使委員会の委員を選出するために行うことを明示する必要があります。
  2. 会社と過半数代表者で、労使委員会の委員の人数を決めます。委員の人数については、特に決まりはありませんが、1対1では委員会になりませんので、会社側2名、従業員側2名が最小の構成になります。
  3. 過半数代表者が、管理監督者でない者の中から、従業員を代表する委員を任期を定めて指名します。あらかじめ指名される者から同意を得ておきます。
  4. 会社が、会社を代表する委員を任期を定めて指名します。
  5. 労使委員会の同意を得て、労使委員会の運営規程を作成します。運営規程で定める内容は、招集、開催、定足数、議事、議長の選出、決議の方法、その他労使委員会の運営に必要な事項についてです。

(2017/2作成)