労災保険の給付

労災保険の給付

業務災害又は通勤災害を受けたときは、労災保険から様々な給付を受けることができます。

療養補償給付(療養給付)

業務災害又は通勤災害によって負傷したりしたときに、労災指定病院等で、必要な療養(診察や手術、治療、薬剤の支給等)を、治癒するまで受けられます。

「治癒」とは、一般的には元の状態に治ること言いますが、労災保険においては、症状が固定し、治療の効果が期待できなくなった状態を言います。したがって、元の状態に戻らない場合でも、治癒したと判断されることがあります。

この給付は、業務災害の場合は無料で受けられますが、通勤災害の場合は初診時に200円の一部負担金を支払わないといけません。

また、労災指定病院等以外で治療等を受けた場合は、一旦治療費等を全額支払って、後日に必要な療養の費用の支給を受けることになります。

ところで、通勤災害の場合は、会社に補償責任がないため、給付の名称に「補償」の文字が付きません。他の給付も同じです。

休業補償給付(休業給付)

業務災害又は通勤災害による傷病の療養のために休業し、賃金が受けられない場合に、休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の60%に相当する額が支給されます。

「給付基礎日額」とは、通常は、労働基準法の平均賃金と同じ額です。

また、休業(補償)給付とは別に、休業4日目から、休業1日につき給付基礎日額の20%に相当する額が「休業特別支給金」として支給されます。

「特別支給金」とは、労災保険の給付とは別枠の制度で、社会復帰促進等事業として行われるものです。労災保険の給付申請をすれば、同時に特別支給金の給付申請もしたことになります。

傷病補償年金(傷病年金)

業務災害又は通勤災害による傷病が、療養を開始して1年6ヶ月が経過しても、治癒(症状が固定)していなくて、障害の程度が傷病等級に該当する場合に支給されます。

支給額は、障害の程度に応じて、給付基礎日額の313日分から245日分の年金となります。

傷病(補償)年金を受給する場合は、休業(補償)給付は受給できません。また、障害の程度が傷病等級に該当しない場合は、引き続き、休業(補償)給付が支給されます。

また、傷病(補償)年金とは別に、障害の程度に応じて、114万円から100万円の一時金が、「傷病特別支給金」として支給されます。更に、障害の程度に応じて、算定基礎日額の313日分から245日分の年金が、「傷病特別年金」として支給されます。

「算定基礎日額」とは、ボーナス等の特別給与を算定の基礎として計算するものです。

障害補償給付(障害給付)

業務災害又は通勤災害による傷病が治癒(症状が固定)して、障害等級の第1級から第7級に該当する障害が残ったときは障害(補償)年金、障害等級の第8級から第14級に該当する障害が残ったときは障害(補償)一時金が支給されます。

障害(補償)年金は、障害の程度に応じて、給付基礎日額の313日分から131日分の年金となります。

また、この場合、障害(補償)年金とは別に、障害の程度に応じて、342万円から159万円の一時金が、「障害特別支給金」として支給されます。更に、障害の程度に応じて、算定基礎日額の313日分から131日分の年金が、「障害特別年金」として支給されます。

障害(補償)一時金は、障害の程度に応じて、給付基礎日額の503日分から56日分の一時金となります。

また、この場合、障害(補償)一時金とは別に、障害の程度に応じて、65万円から8万円の一時金が、「障害特別支給金」として支給されます。更に、障害の程度に応じて、算定基礎日額の503日分から56日分の一時金が、「障害特別一時金」として支給されます。

遺族補償給付(遺族給付)

業務災害又は通勤災害により死亡し、一定の遺族(年金の受給資格者※)がいるときは、遺族の数に応じて、給付基礎日額の245日分から153日分の遺族(補償)年金が支給されます。

また、この場合、遺族(補償)年金とは別に、遺族の数にかかわらず、一律300万円の一時金が、「遺族特別支給金」として支給されます。更に、遺族の数に応じて、算定基礎日額の245日分から153日分の年金が、「遺族特別年金」として支給されます。

業務災害又は通勤災害により死亡し、一定の遺族(年金の受給資格者※)がいないときは、給付基礎日額の1000日分の遺族(補償)一時金が支給されます。

また、この場合、遺族(補償)一時金とは別に、遺族の数にかかわらず、一律300万円の一時金が、「遺族特別支給金」として支給されます。更に、算定基礎日額の1000日分の一時金が、「遺族特別一時金」として支給されます。

※遺族(補償)年金の受給資格者

遺族(補償)年金の受給資格者となるのは、生計を維持していた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹ですが、妻以外の遺族については、年齢の条件があります。ただし、一定の障害(障害等級第5級以上の身体障害)がある場合は、年齢要件は外されます。

受給資格者の順位は次のとおりで、最上位の者に対して支給されます。

  1. 配偶者(夫の場合は60歳以上、妻は年齢要件なし)
  2. 子(18歳の年度末まで)
  3. 父母(60歳以上)
  4. 孫(18歳の年度末まで)
  5. 祖父母(60歳以上)
  6. 兄弟姉妹(18歳の年度末まで、又は、60歳以上)
  7. 55歳以上60歳末満の夫、父母、祖父母、兄弟姉妹

葬祭料(葬祭給付)

業務災害又は通勤災害により死亡した際に、葬祭を行った者に対して、給付基礎日額の30日分に315,000円を加えた額(その額が給付基礎日額の60日分に満たない場合は、給付基礎日額の60日分)が支給されます。

介護補償給付(介護給付)

障害(補償)年金又は傷病(補償)年金を受給していて、神経・精神の障害及び胸腹部臓器の障害の程度が第1級又は第2級に該当し、現に介護を受けている場合に支給されます。

支給額は、介護の費用として支出した実費ですが、常時介護か随時介護か、親族等による介護を受けているかどうか、によって上限額(月28,300円から月104,290円)が異なります。

(2015/11作成)