労災保険のよくある質問
労災保険のよくある質問
労災事故は頻繁に起きるものではありませんので、労災保険を使うときは色々疑問に思われることが多いようです。
労災保険についてよくある質問を取り上げてみました。
労災保険を使ったら保険料は上がるのでしょうか?
安全対策を行って労災事故を抑制した企業を優遇して、安全対策を怠って労災事故を繰り返す企業に保険料負担を課す制度があります。
これを労災保険のメリット制と言い、労災事故の多い少ないによって、労災保険の保険料が、±40%の範囲で増減されます。
ただし、メリット制が適用されるのは、次のいずれかの企業です。
- 社員数が100人以上の企業
- 社員数が20人以上100人未満で、災害度係数が0.4以上の企業
※災害度係数=社員数×(労災保険率−0.6/1,000)
例)50人×(7.5/1,000−0.6/1,000)=0.345・・・メリット制の対象外 - 建設業等で労災保険料が100万円以上の企業
したがって、建設業等以外で社員数が20人未満の場合はメリット制の対象外ですので、労災保険を使っても保険料が上がることはありません。
また、通勤災害は企業努力で防ぐことができませんので、通勤災害を申請しても保険料が上がることはありません。
労災保険を使ったら調査に入られる?
翌日から職場に戻れる程度の軽いケガの場合は、通常は、書類を提出するだけで済みます。
しかし、翌日以降も会社を休む程度のケガの場合は、事故が起きた原因を調査するために、労働基準監督署の職員がやって来て、再発防止の対策を立てることになるケースが多いです。
労災事故が起きたときに、労災保険を使わないと?
労災事故を労働基準監督署に報告しなかったり、虚偽の報告をすることを「労災隠し」と言います。
労働基準監督署では、悪質な労災隠しを行った企業を書類送検するなど、かなり厳しい対応を行っています。
なお、バンドエイドを貼って済むような病院に行く必要がない程度のケガについては、労災保険の手続きは不要です。
労災保険を使ったら会社の責任を認めたことになる?
最近は、精神疾患や腰痛など、業務が原因かどうか疑わしいケースで、労災保険の申請を会社に要望してくる社員が増えているようです。場合によっては、会社に損害賠償を請求してくることもあります。
傷病の発生原因が業務にあるとは思えない、労災の申請をすれば業務が原因であったと認めることになるのかと不安に思われることもあると思います。
そのような場合は、労災保険の申請用紙に「本人の主張に基づき記入したもので、事実確認をして記入したものではない」と記載しておけば、後日、労働基準監督署が調査・確認をして労災認定の判断をすることになります。
不注意でケガをしても労災と認められるのでしょうか?
腰痛等の“病気”は簡単に労災と認定されることはありませんが、勤務時間中の“ケガ”であれば、本人の不注意であっても(会社に落ち度がなくても)、余程のケースでない限り労災と認められます。
例外的に、飲酒運転や犯罪行為をしていてケガをした場合や、仕事から離れて私的なこと(パチンコなど)をしてその帰りにケガをした場合等は認められません。なお、休憩時間中や出張で移動している最中のケガも、通常は労災と認められます。
賃金はどうなるのでしょうか?
休業4日目以降(休業補償給付)
仕事中のケガ等のために働くことができず、会社を休むことになって、賃金が支給されない場合は、労災保険から「休業補償給付」が支給されます。
休業補償給付の金額は休業1日につき平均賃金の60%ですが、休業特別支給金として平均賃金の20%が加算されますので、結果的に賃金の80%が補償されることになります。
なお、休業補償給付が支給されるのは、会社を休んだ日数が通算して4日目からです。
休業3日目まで
労働基準法では、社員が仕事中のケガ等のために会社を休んだときは、会社が平均賃金の60%の賃金補償を行うことが義務付けられています。
4日目以降は、会社が支給する代わりに、労災保険から休業補償給付が支給されますので、会社の支払義務は免除されます。ただし、3日目までは、会社が平均賃金の60%(80%ではありません)を支払わないといけません。
また、勤務時間の途中にケガをして早退した場合も、早退した時間に対して賃金の60%を支給する必要があります。
(2010/11作成)
(2014/5更新)