無断欠勤の対応

安否の確認

無断欠勤は頻繁に起きることではありませんので、どのように対応すれば良いか戸惑うことがあります。

まずは、最悪のケースに備えて、事件や事故に巻き込まれていないか、電話やメール等で安否の確認をすることが大事です。翌日になっても無断欠勤が続いて、繰り返し電話やメールをしても連絡が取れない場合は、次のような手段が考えられます。

後で確認を求められることがありますので、いつ、誰が、どのような対応をしたのか記録を残してください。

警察への届出

居留守を使っていたり、家族や友人の話から、本人の意思で会社からの連絡を拒否していることを確認できた場合は別ですが、事件や事故に巻き込まれた可能性がある場合は、家族と相談して、警察に届け出ることも考えられます。

稀なケースですが、逮捕されていたということもあります。その場合は、容疑の内容や本人の認否等を考慮して、個別に対応することになります。本人が容疑を認めている場合は、自主的に退職を申し出ることがありますが、容疑を否認している場合は、解雇は慎重に検討しないといけません。

1ヶ月の行方不明

行方不明(連絡拒否)の状態がしばらく続くこともあります。代わりの者を採用しないと業務が停滞して困ることもあるでしょう。また、在籍している間は社会保険(健康保険と厚生年金保険)の保険料が掛かりますので、いつまでも在籍させることはできません。

会社から解雇する場合は、本人に解雇の意思表示をする必要があるのですが、連絡が取れない場合はそれができません。家族に「○○さんを解雇する」と言っても無効です。そのような場合に、「公示送達」という方法があります。

しかし、公示送達の手続きは面倒で、通知書や申請書を作成して、添付書類を用意して、簡易裁判所に申し立てる必要があります。

解雇しようすると面倒ですが、「行方不明が1ヶ月以上に及んだとき」を従業員による退職の意思表示とみなして、自動退職の事由として就業規則に規定しておけば、自動退職が有効になります。解雇ではありませんので、解雇予告や解雇制限など、解雇に関する規制を受けることはありません。公示送達の手続きも不要です。

「自動退職の期間を1ヶ月ではなく、2週間にできないか?」と相談されることがあります。1ヶ月であれば解雇予告が30日と定められていることから、均衡が取れていて無難に対応できますが、2週間では短過ぎて認められないという意見があります。無効になることを考えると、1ヶ月にしておくのが良いです。

無断欠勤の理由

従業員と連絡が取れた場合は、本人に無断欠勤をした理由を確認して、それぞれの理由に応じて対応することになります。

正当な理由がない場合

正当な理由がない場合(「仕事が嫌になった」等)は、出勤するか、退職するか、本人に選んでもらいます。

出勤する場合は、無断欠勤という違反行為をしていますので、始末書を提出させたり、就業規則に基づいて懲戒処分を行うべきです。懲戒処分をしないで見過ごしていると、会社は無断欠勤を黙認していたと受け取られます。また、無断欠勤を繰り返したときは、更に重い懲戒処分とすることを本人に通知してください。

退職する場合は、退職届を提出してもらってください。会社が退職を望む場合は、面談する際に退職届を準備しておくと良いでしょう。押印がなくても自筆の署名があれば十分です。なお、この場合は、再発を戒める必要はありませんので、懲戒処分は不要です。

出勤も退職もしない場合は、出勤するよう促した上で、無断欠勤が2週間に及んだときは、就業規則に基づいて懲戒解雇することを本人に通知してください。

そして、会社が解雇(懲戒解雇)するときは、労働基準法によって、次のいずれかの方法で、解雇の予告をすることが義務付けられています。

ただし、労働基準監督署による解雇予告の除外認定を受けたときは、解雇予告の手続きが免除されます。なお、通達において、「原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合」が、認定すべき事例の1つとして挙げられています。

本人が「解雇してもらってもいい」と言ったとしても、2週間は待った方が良いです。無断欠勤が2週間に及んで、労働基準監督署に「解雇予告除外認定申請書」を提出すれば、通常は認定を受けられます。

出勤を督促していることが求められますので、面談や電話の内容を記録し、メールや文書等を保存しておくことが大事です。

懲戒解雇の事由についても、「2週間ではなく、1週間に短縮できないか?」と相談されることがあります。特別な事情がなければ1週間では認定を受けられない可能性が高いので、2週間としておくのが無難です。

ハラスメントを受けた

セクハラやパワハラを受けたという場合は、(無断欠勤は許されることではありませんが、)正当な理由となりますので、会社は解雇できません。

会社には安全配慮義務や職場環境配慮義務がありますので、どのような事実があったのか調査をして、適正に対処する必要があります。そして、出勤に支障がないと判断したときは、調査結果や措置の内容、相談窓口等の説明をして、従業員に出勤を命じることになります。

うつ病になった

うつ病等の精神疾患のため会社に連絡できなかったという場合は、治療を優先して、無理に出勤させるべきではありません。会社は病状を把握する必要がありますので、医療機関での受診を勧めて、診断書を提出してもらってください。

就業規則に休職の規定を設けている場合は、休職を適用します。休職の規定がない場合は、一定期間様子を見て、復帰できる見込みがなければ、解雇を検討することになります。

ただし、うつ病等の原因がプライベートによるものか、業務(過重労働、セクハラ、パワハラ等)によるものかによって、対応が異なります。

労働基準法によって、業務上の病気や怪我で休んでいる期間と、その後の30日間は解雇が禁止されています。業務に起因する場合は会社に責任がありますので、解雇することはできません。休職期間満了による退職も認められません。

また、脳梗塞や心筋梗塞を発症したり、事故に遭って入院したりして、連絡を取ることが難しいケースもあります。精神疾患以外の病気や怪我の場合も、上と同様の対応になります。

(2021/11作成)