教育訓練給付金

教育訓練給付金とは

雇用保険の保険料の大部分は、従業員が失業したときに支給される「求職者給付」(基本手当)に使われますが、使い道はそれだけではありません。

雇用を継続したまま、従業員が育児休業や介護休業を取得したり、60歳以降の賃金を減額したりしたときに支給される「雇用継続給付」があります。

今回紹介する「教育訓練給付」も、雇用保険の保険料を財源とする制度です。厚生労働大臣が指定する教育訓練講座を自己負担で受講した場合に、その費用の一部が補助されます。自主的な能力開発やキャリアアップを支援して、雇用の安定を図ることを目的とした制度です。

教育訓練給付制度は2014年に大きな改正が行われ、従来の制度を引き継いだ「一般教育訓練給付金」と新設された「専門実践教育訓練給付金」の2種類になりました。

専門実践教育訓練給付金は専門的で実践的な教育訓練が対象となるため、一般教育訓練給付金より、支給対象期間が長く、給付率が高くなっています。

また、2018年1月から給付率の引上げや支給要件の緩和など、制度が拡充されています。能力開発やキャリアアップのために、従業員に利用を勧めてはいかがでしょうか。なお、教育訓練給付制度は、雇用保険に加入していれば、パートタイマーや契約社員等も利用できます。

一般教育訓練給付金の支給額

教育訓練施設に支払った教育訓練経費(入学料と受講料)の20%に相当する額が支給されます。ただし、支給額は10万円が上限で、20%相当額が4千円を超えない場合は支給されません。

また、受講開始日前1年以内に、キャリアコンサルタントによるキャリアコンサルティングを受けた場合は、その費用(上限2万円)を教育訓練経費に加算できます。

なお、教育訓練を修了しなかった場合(修了証明書を提出できない場合)は、支給されません。

一般教育訓練給付金の支給対象者

受講開始日現在で、雇用保険に3年以上加入している従業員が対象になります。ただし、初めて利用する場合は、当分の間は、雇用保険の加入期間は1年以上に緩和されています。

また、前に教育訓練給付金を受給したことがある場合は、3年以上経過している必要があります。そのため、同時に複数の教育訓練を受講しても、重複して受給することはできません。

なお、退職日から受講開始日までが1年以内で、条件を満たしている場合は、失業中の方も利用できます。退職して、基本手当(失業給付)を受給していても差し支えありません。

一般教育訓練給付金の支給申請

教育訓練の受講を修了した日から1ヶ月以内に、支給申請書をハローワークに提出する必要があります。

その際は、修了証明書、領収書、雇用保険被保険者証などの書類を添付することになっています。やむを得ない理由がない限り、郵送や代理人による提出は認められていませんので、本人が直接ハローワークに出向いて提出しないといけません。

専門実践教育訓練給付金の支給額

教育訓練施設に支払った教育訓練経費(入学料と受講料)の50%に相当する額が支給されます。ただし、支給額は1年につき40万円が上限で、50%相当額が4千円を超えない場合は支給されません。訓練期間は最長3年ですので、3年間で最大120万円の受給が可能です。

更に、専門実践教育訓練の受講を修了して1年以内に、目標としていた資格や学位を取得した場合は、教育訓練経費の20%に相当する額が追加して支給されます。ただし、雇用保険に加入していることが条件になっています。

合計すると70%に相当する額になりますが、1年につき56万円(3年で168万円)が上限です。また、10年の間に複数回の専門実践教育訓練を受講する場合、10年間の教育訓練給付金の合計支給額は168万円が限度とされています。

なお、教育訓練を修了する見込みがない場合(受講証明書又は修了証明書を提出できない場合)は、支給されません。

専門実践教育訓練給付金の支給対象者

受講開始日現在で、雇用保険に3年以上加入している従業員が対象になります。ただし、初めて利用する場合は、当分の間は、雇用保険の加入期間は2年以上に緩和されています。

また、前に教育訓練給付金を受給したことがある場合は、3年以上経過している必要があります。なお、退職日から受講開始日までが1年以内で、条件を満たしている場合は、失業中の方も利用できます。

専門実践教育訓練給付金の支給申請

専門実践教育訓練給付金の支給申請をする場合は、最初に、受講開始日の1ヶ月前までに、ハローワークに受給資格確認票や雇用保険被保険者証などの書類を提出しないといけません。やむを得ない理由がない限り、本人が直接ハローワークに出向いて提出することとされています。

次に、専門実践教育訓練給付金は、受講中も支給されます。ただし、受講開始日から6ヶ月ごとに、ハローワークに支給申請書を提出する必要があります。各期間の末日から1ヶ月以内が申請期間で、受講を修了したときは受講修了日から1ヶ月以内が申請期間になります。

その際は、受講証明書(修了証明書)、領収書、受給資格者証などの書類を添付することになっています。

また、目標としている資格や学位を取得したときは、取得した日から1ヶ月以内が申請期間になります。

なお、申請期限が過ぎたとしても、2年間の時効が完成していない場合は、要件を満たしていれば手続きが可能で、給付を受けられます。一般教育訓練給付金も同じです。

指定教育訓練講座

受講しようとする教育訓練講座が、厚生労働大臣の指定を受けているかどうかは、インターネットの「教育訓練給付制度 検索システム」で調べられます。

一般教育訓練では、情報処理技術者資格、簿記検定、介護職員初任者研修修了を目指す講座など、働く方の職業能力アップを支援する講座が対象になっています。

専門実践教育訓練では、一定の資格(調理師、栄養士、看護師、保健師、介護福祉士、理学療法士、作業療法士、美容師、理容師、電気工事士など)の取得を目標とする講座、専門学校の職業実践専門課程、専門職大学院など、中長期的なキャリア形成を支援する講座が対象になっています。

支給要件照会

教育訓練の受講の手続きをする前に、「教育訓練給付金支給要件照会票」によって、受講開始(予定)日現在で、受給資格があるかどうか、受講する教育訓練講座が厚生労働大臣の指定を受けているかどうか、前もってハローワークに照会できるようになっています。郵送でも可能ですが、電話による照会はできません。

教育訓練支援給付金

受講開始日に45歳未満で失業状態の方が、退職して1年以内に、初めて専門実践教育訓練(通信制、夜間制を除く)を受講する場合は、教育訓練支援給付金が支給されます。

教育訓練支援給付金の支給額は、基本手当(失業給付)の日額の80%に相当する額です。ただし、基本手当を受給できる期間(待期期間と給付制限期間も)は支給されません。基本手当を受給し終わってから、専門実践教育訓練の受講が終了するまで支給されます。

教育訓練支援給付金は、2022年3月31日までの時限措置として定められた制度です。

(2020/9作成)