女性活躍推進法の概要)
女性の就業の現状
男性の就業率(就業者数を15歳から64歳までの人口で割った割合)は約82%で大きな変動はありません。一方、女性の就業率は、2008年前後は約60%だったものが、近年では約67%となっていて着実に上昇しています。
しかし、現状では次のような調査結果があり、女性が職場で十分に活躍しているとは言えません。
- 就業していない女性のうち、約300万人が就業を希望している。
- 第一子を出産した女性は約6割が退職していて、出産や育児を理由にして退職する女性が多い。
- 女性が一旦退職した後に再就職する場合は非正規雇用が多く、女性の非正規雇用の割合は5割を超えている。
- 女性の管理職(課長以上、会社役員など)の割合は約1割で、国際的に見ると低い。
一方、少子化の進展により、将来の人手不足が懸念されています。これを解消するためにも、女性の活躍が重要と考えられています。
また、希望に応じて女性が働けるようにすることは、活力がある社会を実現するためにも大事なことです。
このような背景があって、女性活躍推進法が制定され、2016年4月1日から施行されています。正式名称は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」と言い、女性が職場で活躍しやすいよう推進することを目的とした法律です。
なお、この法律は10年間の時限立法で、2026年3月31日で効力を失います。
一般事業主行動計画
女性活躍推進法で大きな柱となるものが「一般事業主行動計画」で、女性の活躍を推進するための取組内容を定めることになっています。従業員数が301人以上の企業は、一般事業主行動計画を策定して、労働局に届け出ることが義務付けられています。
従業員数が300人以下の企業については、一般事業主行動計画の策定と届出は努力義務となっています。しかし、女性の活躍を推進するための取組は、優秀な人材の採用や退職の予防に繋がりますので、企業規模に関係なく意義があることです。従業員数が300人以下の企業も取り組むようお勧めいたします。
一般事業主行動計画を策定する手順が、指針で次のように示されています。
体制の整備
女性の活躍を推進するための取組を効果的に行うためには、組織のトップが関与して、体制を整備することが重要です。
また、組織全体の理解と協力が必要ですので、例えば、人事労務の担当者や管理職の他に、現場の男女従業員を加えた委員会を設置する方法も有効です。
状況の把握と課題の分析
自社の課題を明らかにするために、基礎項目として、次の項目を把握することが義務付けられています。
- 採用者のうち女性が占める割合
- 男女別の平均勤続年数
- 時間外労働の時間数等
- 管理職のうち女性が占める割合
把握した内容を検討して、自社の課題がどこにあるのか分析を行います。また、必要に応じて任意で把握する項目として、次の項目が例示されています。
- 男女別の「採用者数/応募者数」
- 女性従業員の割合
- 男女別の育児休業の取得率等
- 年次有給休暇の取得率
- 男女別の配置転換の実績
- 男女別の再雇用の実績、など
行動計画の策定
具体的に取り組む課題を選定し、一般事業主行動計画を策定します。一般事業主行動計画には、次の事項を記載することになっています。
- 計画期間
- 数値目標
- 取組内容
- 取組の実施時期
行動計画の周知
数値目標を達成するためには組織全体で取り組む必要がありますので、書面を交付したり、メールを送信したりして、従業員に一般事業主行動計画の内容を周知しないといけません。
行動計画の公表
一般事業主行動計画は従業員に周知した上で、インターネットを利用したりして外部にも公表することが義務付けられています。
厚生労働省が運営している「女性活躍・両立支援総合サイト」内の「女性の活躍推進企業データベース」を利用して行うことが想定されています。自社のホームページで公表する方法でも構いません。
行動計画の届出
更に、一般事業主行動計画は所定の様式により、労働局に届け出ることが義務付けられています。一般事業主行動計画の内容を変更した場合も、変更の届出を行う必要があります。
行動計画の推進
一般事業主行動計画に基づいて取組を実施します。また、定期的に数値目標の達成状況や取組の実施状況をチェックして、その結果を後の取組や計画に反映し、改善していくことが重要です。
女性の活躍状況の公表
従業員数が301人以上の企業は、女性の活躍状況を定期的に公表することが義務付けられています。従業員数が300人以下の企業は努力義務となっています。
公表する情報は「採用者のうち女性が占める割合」など18項目が挙げられていて、これらの中から各企業が状況を把握した項目を選択して公表します。「状況の把握と課題の分析」で挙げられている項目と重複しているものが多いです。
全ての項目を公表しなくても構いませんが、たくさん公表すれば就職活動中の女性に企業の姿勢が伝わって好印象を与えられると思います。こちらも、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」を活用することが想定されています。
えるぼし認定
一般事業主行動計画を届け出た企業のうち、女性の活躍推進に関する取組の実施状況等が優良な企業は、厚生労働大臣から「えるぼし認定」を受けられます。
「えるぼし認定」は、評価項目をクリアした項目数に応じて3段階に分かれています。
認定を受けた企業は、認定マークを商品や広告等に使用できます。女性の活躍を推進している企業であることをアピールできますので、イメージアップに繋がります。
また、公共調達が行われるときは加点評価を受けられます。更に、日本政策金融公庫による低利融資(基準利率から−0.65%)の対象になります。
中小企業が行動計画を策定して目標を達成したときは、両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)を受給できる場合があります。女性の活躍推進に積極的に取り組みたいという中小企業は、検討してはいかがでしょうか。
(2020/3作成)