公益通報者保護法の概要
公益通報者保護法
公益通報者保護法とは、公益通報者の保護を図ること、及び、法令遵守によって国民生活の安定や社会経済の発展に資することを目的として、公益通報したことを理由とする不利益な取扱いの禁止、公益通報に関して企業がとるべき措置等について、定められた法律です。
食品の偽装表示や自動車のリコール隠しなど、国民生活の安全や安心を損なうような不祥事は、企業内部の労働者等による通報がきっかけで明らかになるケースが少なくありません。公益のために行った通報は正当な行為として、通報者は解雇等の不利益な取扱いから保護されるべきです。
労働者等が法令違反を発見したときに、どこにどのような通報をすれば保護されるのか、公益通報に関するルールを明確にするために、公益通報者保護法が成立して、2006年から施行されています。
公益通報
公益通報者保護法によって、「公益通報」とは、①労働者等が、②不正の目的でなく、③勤務先の法令違反行為を、④一定の通報先に通報すること、と定義されています。
それぞれに範囲や要件が定められていて、この定義に当てはまらない場合は、法律による保護を受けることができません。
労働者等
公益通報が認められるのは、労働者、退職者、役員です。また、取引先の労働者、退職者、役員も含まれます。
「労働者」は、労働基準法上の労働者で、正社員、パートタイマー、アルバイト、派遣従業員等のほか、公務員も含みます。「退職者」は、退職又は派遣契約が終了してから1年以内の者に限られます。「役員」は、取締役、会計参与、監査役、理事など、法人の経営に従事する者です。
不正の目的
通報を、不正の利益を得る目的で行ったり、他人に損害を加える目的で行った場合は、公益通報とは認められません。
勤務先の法令違反行為
公益通報者保護法で指定された約500本の法律において、刑罰(懲役や罰金等)又は過料(行政罰)の対象となる違反行為とされています。
実際に違反行為が生じていなくても、刑罰又は過料に繋がる違反行為が生じようとしている場合も含みます。また、取引先の法令違反行為、従業員が1人のみの企業の法令違反行為も対象になります。
一定の通報先
通報先は、①企業内部、②行政機関、③企業外部のいずれかで、通報先ごとに保護を受けるための条件が定められています。
①企業内部・・・勤務先又は勤務先があらかじめ定めた通報先(弁護士、労働組合、グループ企業等)です。「法令違反が行われていると思うこと」が条件になります。行われようとしている場合も含みます。
②行政機関・・・法令違反の事実について、処分や勧告等の権限がある行政機関です。「法令違反が行われていると信じる理由があること(目撃した、証拠がある等)」、又は、「法令違反が行われていると思い、かつ、氏名等を記載した書面を提出すること(電子メールの送信等も可)」が条件になります。法令違反が行われようとしている場合も含みます。
③企業外部・・・法令違反の事実を通報することが、その発生や被害の拡大を防止するために必要と認められる者(報道機関、消費者団体、事業者団体、労働組合等)です。「法令違反が行われていると信じる理由があり、かつ、次のいずれかに該当すること」が条件になります。法令違反が行われようとしている場合も含みます。
- 企業内部や行政機関に通報すれば、解雇等の不利益な取扱いを受けると信じる理由がある
【例:以前に通報をした同僚が解雇された】 - 企業内部に通報すれば、法令違反の証拠が隠滅、偽造、変造される恐れがあると信じる理由がある
【例:企業ぐるみで法令違反を行っている】 - 企業内部に通報すれば、通報者が特定される事項を漏らされると信じる理由がある
【例:以前に通報した同僚が社内で知れ渡って、その後、適切な再発防止策が整備されていない】 - 勤務先から企業内部や行政機関に通報しないよう要求された
【例:上司から誰にも言わないよう口止めされた】 - 書面で企業内部に通報した日から20日を経過しても、調査を行う旨の通知がない又は調査を行わない
【例:書面で通報して20日を経過したが何も連絡がない】 - 個人の生命・身体に危害、財産に多額の損害が生じ、又は、急迫した危険があると信じる理由がある
【例:健康被害が発生する危険のある食品が販売されている】
公益通報者の保護の内容
公益通報したことを理由として行った解雇や派遣契約の解除は無効になります。
公益通報したことを理由として、降格、減給、不当な配置転換、嫌がらせ、派遣従業員の交代の要請など、不利益な取扱いをすることが禁止されます。
勤務先が公益通報によって損害を受けたとしても、公益通報者に対して損害賠償を請求することはできません。
内部通報体制の整備
従業員数が300人を超える企業は、内部通報を受け付けて、適切に対応するための体制を整備することが義務付けられています。
まず、通報に関する業務を担当する者として、従事者を指定する必要があります。従事者は、窓口で通報を受け付けたり、違反行為の調査をしたりして、通報者の氏名等を知り得る者で、通報者の個人情報について守秘義務を負います。調査の結果、法令違反行為が明らかになった場合は、速やかに、是正するための措置をとらないといけません。
法改正によって、2022年6月から義務化された内容で、従業員数が300人以下の企業については、努力義務とされています。
行政機関や報道機関等に法令違反行為を通報されて、思い掛けず問題が大きくなることを考えると、内部通報の体制を整えて、積極的に内部通報を受け付ける方が賢明と思います。実際に内部通報の体制を整備する際は、消費者庁から、「内部通報に関する内部規程例」や「公益通報者保護法に基づく指針」等が公開されていますので、参考にすると良いでしょう。
なお、従事者を配置した内部通報の受付窓口が、ハラスメントに関する相談の受付窓口を兼ねることは可能です。
また、受付や調査等の際は利害関係者の影響を受けないようにして、匿名による通報であっても受け付ける必要があります。その場合は、調査結果や是正措置等を通知したり、追加で確認したりするために、通報者に対して、連絡手段として個人が特定できないメールアドレスを利用するよう伝える方法が考えられます。
(2025/9作成)
