男女雇用機会均等法の改正(平成19年)
男女雇用機会均等法の改正
男女雇用機会均等法が改正され、平成19年から施行されています。
男女雇用機会均等法の改正に関連して、これからは、男女で社員を区別するのではなく、会社が社員1人1人の適正を把握して、活用する方法を考えないといけません。
また、女性社員が活躍できる場を提供したりして、そのような前向きな取り組みが、結果的に会社の発展にも繋がると思います。
男女雇用機会均等法の改正についてお伝えいたします。主な改正ポイントは、次の4つです。
1.男性に対する差別禁止
これまでは、女性に対する差別だけが禁止されていましたが、今回の改正により、男女双方に対する差別が禁止されることになりました。例えば、
- 一般事務の仕事は女性の方が適正がある
- 女性の方が扱いやすい
といったことを理由にして男性を排除したり、長時間労働や転居を伴う転勤を男性にしかさせていなかったりすると、男性差別として、男女雇用機会均等法違反を主張される可能性があります。
会社としては、女性社員に対する配慮として行っているものであったとしても、結果的に、それが男女間の格差を生み出す恐れがあるという考えから、今回の改正で、男性差別という観点が取り入れられました。
これからは男女で区別するのではなく、個々の社員の適性を見て、処遇を考えないといけません。
2.差別禁止の対象範囲の拡大
従来から、募集・採用、配置・昇進・教育訓練、福利厚生、定年・解雇については、男女差別が禁止されていました。
今回の改正により、これらに加えて、降格、職種変更、雇用形態の変更(正社員からパートタイマー等)、退職勧奨、雇止めについても、性別を理由とした差別が禁止されることになりました。
また、配置については、業務の配分や権限の付与も含まれることが明確化されました。例えば、営業部門において、社内事務は女性、外回りは男性と区別していたり、男女で決裁権限が違っていたり、男女で異なる取扱いをしている場合は改善が必要です。
その他の処遇や取扱いの違いについても、男女を基準とするのではなく、別の合理的な基準が求められます。
3.間接差別の禁止
間接差別とは、
- 性別以外の事由を要件に、
- 一方の性の構成員に他の性の構成員と比較して相当程度の不利益を与えるものを、
- 合理的理由なく講じること
と定義付けられています。要するに、表向きは性別とは無関係に処遇しているとしても、結果的に、男女間に格差を生じさせることを言います。
省令により、次の3つのケースが間接差別として禁止されることが明示されています。
- 募集、採用に当たって、労働者の身長、体重、体力を要件とすること
- 総合職の募集、採用に当たって、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること
- 昇進に当たって、転勤の経験があることを要件とすること
どれも一方の性(女性)が満たしにくい要件で、合理的な理由がなければ、間接差別として法律違反になります。
ポイントは、「職務との関連性」や「業務上の必要性」などの合理性の有無で、合理性が認められれば、現実に男女間で格差があったとしても、間接差別にはなりません。そのままの取扱いを維持できます。
なお、これらは例示されているだけで、これらに該当しなければ問題ないということではありません。これらに該当しなくても、裁判において、間接差別として違法と判断されるケースがあります。
今回の法律を改正する前の段階で、
- 学歴・学部要件
- 世帯主要件
- 正社員とパートタイマーの処遇格差
- 福利厚生等におけるパートタイマーの除外
の4つは、間接差別になり得る例として挙げられていましたが、省令からは外されました。間接差別と判断される可能性が高いので、これらについても注意しておくべきです。
4.妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止
従来から、妊娠、出産、産前産後休業の取得を理由とする解雇は禁止されていました。しかし、解雇以外の取扱いは禁止されていなかったため、解雇していないケースには対応できませんでした。
このため、解雇以外にも対象範囲が広げられ、不利益取扱いが禁止されることになりました。例えば、
- 妊娠・出産を理由にとして正社員からパートタイマーに雇用形態を変更すること
- 妊娠を理由に期間雇用者の雇い止めを行うこと
- 賞与の算定において実際の休業期間を超えて働かなかったものとして計算すること
などが挙げられています。
なお、休業期間中の賃金を支払わないことや、賞与や退職金の算定において休業した期間は勤務しなかったものとして計算すること(日割で控除する等)は、不利益取扱いには該当しません。
もう1つ大事な改正点として、妊娠中及び産後1年の間に行った解雇は、原則無効とされることになりました。
これは、どんな理由があっても解雇できないということではなく、会社が、
- 妊娠、出産、産前産後休業を理由とする解雇ではないこと
- 妊娠や出産に起因する能率低下や労働不能を理由とする解雇でないこと
を証明した場合は、解雇は認められます。労働基準法では、産前産後休業とその後の30日間は、どんな理由があっても解雇は禁止されていますので、制限の程度が異なります。
(2007/11作成)