慶弔休暇の注意点

慶弔休暇とは

本人が結婚したり、家族や親族が亡くなったりしたときは、それが平日だったとすると、参列するために、従業員は会社を休まざるを得ません。

このような慶事や弔事があった場合、多くの会社では慶弔休暇を取得できるようになっています。

「慶弔休暇」ではなく、忌引のケースに限って「忌引休暇」と呼んでいたり、慶事や弔事以外のケース(ボランティア休暇、被災休暇、ドナー休暇等)も含めて「特別休暇」と呼んでいたりする会社もあります。ここでは、「慶弔休暇」で統一しています。

法律上の規定

労働基準法では、年次有給休暇や産前産後休業等が定められていて、条件を満たしている従業員が休暇を請求してきたときは、会社は休暇を与える義務があります。

しかし、慶弔休暇は、労働基準法等の法律で定められている制度ではありません。

したがって、従業員が「親戚が亡くなったので休みたい」と言ってきたとしても、法律上、会社は休暇を与える義務はありません。

慶弔休暇は福利厚生の1つとして、会社の意思で設けている制度という位置付けになります。

慶弔休暇の制度設計

年次有給休暇や産前産後休業等は、あらゆるケースを想定して、法律や通達等で、「このような場合はこのように取り扱う」といったことが決められています。そのため、例外的な事態が生じても、大抵、正しい対応方法が見付かります。

しかし、慶弔休暇は法律的な拠り所がありませんので、それぞれの会社において、どのような事態が生じても対応できるよう制度設計をする必要があります。

せっかく、従業員に安心して休んでもらうことを期待して、法律を上回る制度を設けたにもかかわらず、不満やトラブルを生じさせる元になるようでは、逆効果になってしまいます。

就業規則

慶弔休暇の制度を設ける場合は、就業規則に記載しないといけません。

就業規則に規定をすると、不公平な対応を防止できる反面、会社は就業規則に基づいて、慶弔休暇を与えることが義務付けられます。

一方、就業規則に慶弔休暇に関する記載がなければ、その会社には慶弔休暇の制度がないということになります。

慶弔休暇の事由と付与日数

慶弔休暇の制度設計をする際は最初に、どのような場合に、何日の休暇を付与するか、を検討します。なお、慶弔休暇の事由や付与日数は、それぞれの会社が自由に決定することですので、親族の範囲をどこまで認めるか、事由ごとに何日まで認めるか、は会社によって大きく異なります。

参考に、国家公務員のケースを紹介しておきます。

  1. 本人の結婚・・・5日
  2. 妻の出産・・・2日
  3. 配偶者、父母の死亡・・・7日
  4. 子の死亡・・・5日
  5. 祖父母、兄弟姉妹、父母の配偶者又は配偶者の父母の死亡・・・3日
  6. 孫、おじ又はおば、子の配偶者又は配偶者の子、祖父母の配偶者又は配偶者の祖父母、兄弟姉妹の配偶者又は配偶者の兄弟姉妹、おじ又はおばの配偶者の死亡・・・1日

一旦、就業規則に慶弔休暇の事由と付与日数を定めると、後になって、事由や付与日数を減らすこと(就業規則の不利益変更)は難しいので、最初は事由を制限して無理のない少ない日数から始めるのが良いでしょう。

また、慶弔休暇について、労使間の思い違いやトラブルが起きやすいポイントがいくつかあります。次の点に注意をして、就業規則で明確に規定しておけば、トラブルは避けられるはずです。

慶弔休暇の適用範囲

慶弔休暇の適用範囲は、会社が自由に決められます。正社員にだけ、適用することにしても構いません。

また、例えば、パートタイマー用の就業規則に慶弔休暇の記載がなければ、パートタイマーには慶弔休暇が適用されないことになります。

しかし、パートタイマー用の就業規則がない場合は、パートタイマーにも正社員用の就業規則が適用されます。そして、慶弔休暇の項目で、パートタイマーの適用を除外していなければ、パートタイマーも慶弔休暇を取得できることになります。

もし、パートタイマーに慶弔休暇を与えたくない場合は、適用を除外する規定を追加する必要があります。アルバイトや契約社員、嘱託等についても同じです。

更に、試用期間中の従業員に慶弔休暇を与えたくない場合も、就業規則にそのように記載する必要があります。

慶弔休暇の取得手続き

年次有給休暇や産前産後休業等など、法律で定められた休暇を許可制にすることはできませんが、慶弔休暇は、事前に会社の許可を得るよう義務付けることができます。

また、虚偽による取得を防止するために、会社が必要と認めたときは、その事実を証明する書類を提出させられるよう就業規則に規定しておくべきです。

慶弔休暇の連続取得

妻の出産や弔事に伴う休暇は、原則的には、該当した日から連続して与えるよう規定するべきです。このような記載がないと、関係のない日に休むよう求められてトラブルに発展します。

ただし、結婚休暇は新婚旅行での利用を想定していますが、入籍をして数ヶ月後に出発するケースがあります。それでも、無期限に認めることは趣旨に反しますので、結婚休暇の取得は入籍した日から6ヶ月や1年以内に限定するべきでしょう。

休日の算入

慶弔休暇を連続して与えるとすると、休日と重なるケースが出てきますので、休日と重なる日の取扱いを定めておく必要があります。

例えば、土・日が休日で、金曜日から5日間の結婚休暇を取得する場合で考えてみましょう。

「慶弔休暇中の休日は休暇の日数に算入する」とすると、金・土・日・月・火と休めることになります。反対に、「慶弔休暇中の休日は休暇の日数に算入しない」とすると、金・月・火・水・木と休めることになります。

無給の慶弔休暇

慶弔休暇を取得した日については、年次有給休暇を取得した日と同じように、通常の勤務をしたものとして、有給で処理をする会社が一般的です。

慶弔休暇を取得した日は、法律的には無給でも構いません。しかし、就業規則に慶弔休暇の規定があると、有給で処理をする会社が一般的ですので、「有給で処理される」と思い込んでトラブルになる可能性があります。

また、慶弔休暇を無給とすると、結果的に、従業員は年次有給休暇を取得します。そうなると、就業規則に慶弔休暇の規定を設ける意味が余りありません。

無給で処理をするのでしたら、トラブルの元になりかねませんので、個人的には就業規則には慶弔休暇に関する記載はしない方が良いと思います。

(2018/9作成)