年次有給休暇の計画的付与
年次有給休暇の計画的付与
年次有給休暇は、毎年ほぼ全部使い切るのが普通だったり、ほとんど使われなかったり、取得のされ方が会社によって大きく異なります。
全体的に見ると、年次有給休暇の取得率は50%程度です。
労働基準法では、年次有給休暇の取得を促進するために、社員が持っている年次有給休暇を、取得日を特定して計画的に(強制的に)消化させる制度が定められています。
これを「年次有給休暇の計画的付与」と言います。
年次有給休暇の計画的付与の概要
「年次有給休暇の計画的付与」として消化させることができるのは、社員が持っている年次有給休暇の内、「5日を超える日数分」です。
5日分は個人が自由に取得できるよう残しておくこととされています。
例えば、年次有給休暇が20日ある社員については、5日を残した15日分を計画的付与の対象にすることができます。
なお、「5日を超える日数分」には、未消化で翌年度に繰り越された年次有給休暇がある場合は、この繰り越された分も含みます。
年次有給休暇の計画的付与のメリット
退職時のトラブル防止
社員から「有給休暇を全部取ってから退職する」と言われて、どう対応すれば良いか、という相談がよくあります。
会社から取得日数を減らすよう説得しても、「有給休暇を取る」と本人が聞き入れなければ、最終的に会社は拒否できません。それだけ年次有給休暇は強い権利とされています。
年次有給休暇は6.5年以上の勤務で20日分が与えられますので、繰越し分も含めると最大で40日になります。年次有給休暇を全く取得しないで退職時に全部取得されると、約2ヶ月分の賃金を支払うことになります。
このようなトラブルが起きるのは、年次有給休暇がほとんど利用されていない会社が大半です。「有給休暇を取らないで頑張っているのに評価されていない」といった不満を持って、このような取得をするのではないでしょうか。
年次有給休暇を計画的に消化することによって、未消化の年次有給休暇を減らすことができますし、不満のガス抜き、リフレッシュにも繋がると思います。
事前対応が可能
労働基準法上、年次有給休暇は前日までに申請があれば、原則的には認めないといけません。繁忙期であれば業務に支障が生じる場合もあるでしょう。
しかし、計画的付与により、事前に年次有給休暇の付与日を定めていれば、それに向けて対応する時間が十分にありますので、業務への影響を最小限にすることができます。
繁忙期の取得の抑制
閑散期に計画的付与の対象日を設定すれば、繁忙期の年次有給休暇の取得を抑制できます。
年次有給休暇の計画的付与の方法
年次有給休暇の計画的付与には、次の3つの方法があります。それぞれの会社の実態に合った方法を選択すると良いでしょう。
会社全体
年次有給休暇の付与日を定めて、会社全体(社員全員)に一斉に付与するものです。
例えば、暦の関係で休日(祝日)が飛び石となっている場合に、間の平日を対象日にして連休にしたり、ゴールデンウィークや夏期休日、年末年始休日などに組み込んで大型連休にしたりする方法があります。
グループ別
課単位やそれぞれの課を半々にする等、グループ別に分けて、グループ毎に年次有給休暇の付与日を定めて、交代で付与するものです。
会社の業務は継続して行えますので、会社全体を休業させることができない場合に適しています。土曜日だったり、閑散期に利用するケースが多いです。
グループ分けは、それぞれの会社の実情に応じて、半分の社員で対応するのが難しいようであれば2グループではなく、3グループに分けるのも良いでしょう。
個人別
個人毎に年次有給休暇の付与日を定めて付与するものです。
本人や家族の誕生日、結婚記念日など、社員の個人的な記念日を対象にしている会社もあります。家族には喜ばれますし、会社に対する家族の安心感も高まるのではないでしょうか。
また、勤続年数が一区切りしたときに、長期の年次有給休暇を消化することにしている会社もあります。
年次有給休暇の計画的付与制度の導入
年次有給休暇の計画的付与の制度を導入する場合は、就業規則に規定して、労使協定を締結することが条件になっています。
就業規則
就業規則に、「年次有給休暇の計画的付与に関する労使協定を締結した場合は、従業員の有する年次有給休暇のうち5日を超える部分について、会社は労使協定の定めによって年次有給休暇を取得させることがある。」といった規定を設けます。
労使協定
労使協定で締結する内容は次のとおりです。なお、この労使協定は労働基準監督署に届け出る必要はありません。
- 対象となる年次有給休暇の日数
- 年次有給休暇の付与日
- 年次有給休暇が足りない者の取扱い
- 付与日を変更することが予想される場合はその手続き
年次有給休暇が足りない者の取扱い
年次有給休暇の計画的付与を行う場合は、個人が自由に取得できる年次有給休暇として5日分を確保しないといけません。
そこで、例えば、計画的付与として8日を対象としたときに、ある社員が持っている年次有給休暇が10日とすると、5日分は確保しないといけませんので、年次有給休暇は3日分が足りません。
この場合の対応としては、次の方法が考えられます。
- 計画的付与の日も通常の勤務をさせる
- 不足する日数分だけ特別に有給休暇を与える
- 休業させる(この場合は、会社の都合で休業させるため、休業手当として平均賃金の60%以上を支給しないといけません。)
(2013/3作成)
(2014/5更新)