社会保険の適用拡大

社会保険の適用拡大

通常、週30時間以上勤務をする場合は、社会保険(厚生年金保険と健康保険)に加入することが義務付けられています。

この社会保険の適用範囲が拡大されて、平成28年10月から、「特定適用事業所」に勤務をする「短時間労働者」に対して、加入が義務付けられるようになりました。

「特定適用事業所」とは

従業員数が500人を超える会社は、「特定適用事業所」に該当します。

工場や支店等の事業所が複数の地域にある場合は、法人番号が同じかどうかで判断をします。法人番号が同じ場合は、同一の事業所として、従業員数はそれぞれを合計します。

また、従業員数が500人を上回ったり下回ったりしている場合は、1年間のうち6ヶ月以上、500人を超えることが見込まれるかどうかで判断をします。

なお、従業員数は、「短時間労働者」を除いた厚生年金保険の被保険者数をカウントします。

「短時間労働者」とは

1週間の所定労働時間が30時間未満で、次の4つの要件を全て満たす者については、「短時間労働者」に該当します。

@1週間の所定労働時間が20時間以上である

1週間の所定労働時間とは、その者が通常の週(祝祭日等がない週)に勤務すべきとされている時間のことで、雇用契約書や就業規則等で確認をします。雇用保険の取扱いと同じで、時間外勤務の時間や休日勤務の時間は含みません。

なお、所定労働時間を1週間単位で定めていない場合は、1週間の所定労働時間の平均を算出します。1ヶ月単位で定めている場合は、1ヶ月間の所定労働時間を12分の52で割って算出します。1年単位で定めている場合は、1年間の所定労働時間を52で割って算出します。

また、所定労働時間が週20時間未満となっていても、タイムカード等を確認して、残業時間を除いた実際の基本となる労働時間が週20時間以上で、今後も同様の状態が見込まれる場合は、所定労働時間は週20時間以上であるものとして取り扱われます。

A1年以上の雇用が見込まれる

期間の定めがなく雇用された場合、雇用契約の期間が1年以上の場合は、当然、これに該当します。

雇用契約の期間が1年未満であっても、契約が更新される可能性があることが雇用契約書等で明示されている場合、同様の雇用契約で雇用された者がいて1年以上雇用された実績がある場合は、1年以上の雇用が見込まれるものとして取り扱われます。

なお、当初は1年以上の雇用が見込まれなかった場合であっても、その後に、1年以上の雇用が見込まれることになったときは、その時点から、1年以上の雇用が見込まれるものとして取り扱われます。

B賃金の月額が88,000円以上である

時間給や日給を月額に換算した金額に、1ヶ月分の諸手当を合計した金額で判断をします。ただし、次の賃金や手当は除きます。

C学生でない

大学、高等学校、専修学校等に在学する学生については、適用の対象外になります。ただし、雇用保険の取扱いと同じで、夜間部の学生や休学中の学生は、適用の対象になります。

社会保険の加入によるメリット

社会保険に加入することで、次のようなメリットがあります。

@将来、もらえる年金が増えます

例えば、賃金の月額が88,000円とすると、厚生年金保険の保険料は月額8,000円(年額96,000円)です。

1年間加入したとすると、将来、月額500円(年額5,800円)の年金が受け取れます。40年間加入したとすると、将来、月額19,300円(年額231,500円)の年金が受け取れます。

ざっくり言いますと、16年以上年金を受け取れば、元が取れる計算になります。

A厚生年金保険の給付が受けられます

厚生年金保険に加入すると、万一、障害がある状態になった場合は、障害厚生年金が支給されます。また、万一、死亡した場合は、遺族に遺族厚生年金が支給されます。

B健康保険の給付が受けられます

健康保険に加入すると、ケガや出産によって仕事を休まないといけない場合に、賃金の3分の2程度の傷病手当金や出産手当金が支給されます。

C社会保険料は会社と折半して負担します

自身で負担する保険料の倍の金額を納付していることになり、それが将来受け取れる年金に繋がります。

また、現在、国民年金や国民健康保険の保険料を支払っている場合は、保険料が安くなることがあります。一方、現在、配偶者等の扶養に入っている場合は、手取り額は減少します。

被扶養者の基準

社会保険の被扶養者の基準として年収130万円が定められていますが、この基準に変更はありません。ただし、適用拡大後の加入要件を満たす場合は、年収が130万円未満であっても被扶養者になることはできません。自身で社会保険に加入することになります。

標準報酬月額の追加

現在、厚生年金保険の標準報酬月額の下限は、98,000円(報酬月額 101,000円未満)ですが、改正に伴って、88,000円(報酬月額 93,000円未満)の等級が新しく追加されました。

中小企業への影響

今回の社会保険の適用拡大は、従業員数が500人を超える会社が対象ですが、500人以下の会社についても多少の影響があります。

まずは、従業員の扶養に入っている配偶者等です。従業員の配偶者等が、500人を超える会社で勤務をしている場合は、勤務先で社会保険に加入することになるかもしれません。その場合は、扶養を外す手続きをする必要があります。

また、社会保険の適用範囲については、平成31年9月30日までに検討を加えて、必要な措置を講ずることが定められています。そのときの状況によりますが、従業員数の基準が300人や100人に変更されたり、従業員数の基準がなくなる可能性もゼロではありません。

(2018/7作成)