労働時間等設定改善法

勤務間インターバル

働き方改革関連法が成立し、勤務間インターバル制度を導入することが努力義務として課されることになりました。

働き方改革関連法は、労働基準法や労働安全衛生法など複数の法律に及んでいて、勤務間インターバル制度は「労働時間等設定改善法」という法律(指針)で定められています。

労働時間等設定改善法

労働時間等設定改善法は、最初は、平成4年に「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法」(時短促進法)として成立して、年間の労働時間を1,800時間にすることを目標に掲げていたのですが、その目標はほぼ達成されました。

しかし、実際は、非正規の短時間労働者が増加した結果、労働時間の平均値が減少したもので、一律の目標を設定する意義がなくなってきました。

そのため、従業員が健康で充実した生活を送れるようにするために、会社が自主的に労働時間等の設定を改善する取り組みを促進することを目的として、名称が「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」(労働時間等設定改善法)に改められて、平成18年から施行されています。

「労働時間等設定改善法」は、自主的な取り組みを促進するための法律ですので、会社に対して強制的に義務付ける規定はなく、努力義務を定めた規定で構成されています。

労働時間等設定改善指針

会社が適切に対処できるようにするために、労働時間等設定改善法に基づいて、具体的な内容が「労働時間等設定改善指針」として定められています。「労働時間等見直しガイドライン」と呼ばれることがありますが、同じものです。

指針(ガイドライン)で定められている内容も強制的に義務付けられることはありませんが、長時間労働を抑制したり、年次有給休暇の取得を促進したりすることによって、会社は残業手当を削減でき、従業員はワーク・ライフ・バランスを実現できます。

また、会社のイメージアップ、有能な人材の確保、定着率の向上にも繋がります。最近は、特定の従業員に大きな負担が掛かるケースが増えていますが、それが行き過ぎると、作業能率の低下や健康の悪化を招きます。

指針(ガイドライン)で定められている内容を紹介します。

労使間の話合いの機会の整備

まずは、次のような実態を把握することから始めます。

実情に合った対策を実行するためには、現場の従業員の協力が欠かせません。労使間で話し合う場として、後で説明する委員会を設置する方法が望ましいです。

また、確実に実行するためには、具体的な目標、措置の内容、実施時期などを決定して、計画的に取り組むことが大事です。

年次有給休暇を取得しやすい環境の整備

年次有給休暇は、心身の疲労の回復、生産性の向上、ワーク・ライフ・バランスの実現に役立ちます。次のような取り組みを検討して、年次有給休暇を取得しやすい環境を整備しましょう。

  1. 年次有給休暇の計画的付与を実施する。
    強制的に(会社全体、グループ別、個人別に)年次有給休暇を取得させる方法ですので、確実に取得率が向上します。取得日を閑散期に設定すれば、業務に与える影響を抑えられます。
    また、労働基準法が改正されて、1年間に5日の年次有給休暇を取得させることが義務付けられますので、これをクリアするためにも有効な手段です。
  2. 連続して年次有給休暇を取得するよう促す。
    休日の前後の出勤日に年次有給休暇を連続して取得すれば、従業員は渋滞や混雑から回避できるようになります。
  3. 年次有給休暇を半日単位で取得できるようにする。
  4. 子供の学校休業日や地域のイベント等に合わせて、年次有給休暇を取得しやすいよう配慮する。
  5. 上司が積極的に年次有給休暇を取得する。
  6. 月単位で年次有給休暇の取得状況を確認して、低調であれば、声掛けをして取得を促す。

時間外労働、休日労働の削減

次のような取り組みを検討して、時間外労働、休日労働を削減しましょう。

また、労働基準法が改正されて、時間外労働の上限が設定されますので、これに対応する必要があります。

特に配慮を必要とする従業員

全員一律に労働時間等を設定すると、個人的な事情を抱えている従業員にとっては負担が大きいかもしれません。次のような者については、それぞれの事情に応じて適切な対応をすることが望ましいです。

他社との取引上の配慮

社内で労働時間等の設定の改善に取り組んでも、取引先の都合によって、取り組みが阻害されることがあります。他社と取引をする場合は、次のような事項について配慮することが、指針(ガイドライン)で定められています。

労働時間等設定改善委員会

経営者が独断で取り組むより、複数の従業員が参加する委員会を設置して、審議、決定する方法が合理的です。

なお、次の要件を満たす場合、委員の5分の4以上の多数によって決議したときは、労使協定の代わりとすることが認められています。ただし、36協定は除かれています。

  1. 委員の半数が、従業員の過半数代表者の推薦を受けた者であること
  2. 議事録を作成し、3年間保存すること
  3. 委員の任期、委員会の招集、定足数、議事等を定めた運営規程を作成していること

(2020/12作成)