朝型勤務の導入

朝型勤務

「朝型勤務」を導入する会社が増えています。

「朝型勤務」とは、始業時刻を1時間前後前倒ししたり、終業時刻後に行っていた残業を始業時刻前に行うようにしたりして、勤務時間を朝型に移行するものです。

ゆう活とは

政府においても、「ゆう活」と名付けて、様々な情報を提供したり、一般企業に導入を要請したりしています。

「ゆう活」とは、朝の早い時間に仕事を始めて、早い時間に仕事を終えることによって、夕方に出来た時間を有効に活用して、生活を豊かにしようとする取り組みです。

国家公務員を対象にして、7月と8月の2ヶ月間だけですが、勤務時間(始業時刻と終業時刻)を1時間から2時間、前倒しして、朝型勤務「ゆう活」を導入しています。

朝型勤務のメリット

朝型勤務には、次のように、従業員にも会社にも、両方にメリットがあります。

プライベートの充実

夕方に自由な時間が増えますので、家族と過ごしたり、子育てを分担したり、家族の介護をしたり、家事をしたり、趣味の時間に充てたり、プライベートが充実します。また、学習意欲のある従業員は、資格を取得したり、語学を学んだり、自身のスキルアップに励むかもしれません。

仕事だけ充実していても、プライベートが充実していなければ、味気ない生活になってしまいます。最近は、ワークライフバランスという言葉が浸透してきました。

これからは人口が減っていきますので、従業員のプライベートを軽視する会社は、従業員を確保できなくなって淘汰されていくでしょう。朝型勤務を導入してプライベートが充実すれば、会社に対する満足感や信頼感が高まりますので、従業員の確保にも繋がります。

残業時間の削減

朝の早い時間は電話がかかってきませんので、仕事に集中できます。また、朝は頭が冴えていますので、仕事が捗ります。結果的に生産性が向上し、残業時間の削減に繋がります。

通勤の混雑回避

現状では多くの人が同じ時間帯に出勤しますので、電車は満員で、道路は渋滞します。朝1時間でも早く出勤すれば、満員電車や交通渋滞から逃れられます。通勤による体力の消耗も抑えられます。

節電(光熱費の削減)

従業員が会社に留まっている時間を毎日1時間でも短くすれば、節電になり、光熱費を削減できます。

朝型勤務導入の注意点

朝型勤務を導入して、勤務時間を1時間前倒ししただけでは、節電くらいしか効果は期待できません。残業時間の削減を目的にして、より効果のあるものとするためには、いくつか注意しなければならないことがあります。

残業に対する意識改革

上司が残業している部下を評価すれば、部下の残業時間は必ず増えていきます。残業に対する認識を、プラス評価からマイナス評価に改めないといけません。残業している部下に対して、上司は「頑張っているな!」ではなく、「今やらないといけない仕事なのか?」と声を掛けるべきです。

そして、上司が率先して定時に帰宅して、部下も定時に帰宅しやすい雰囲気にすることが大事です。早く帰ると白い目で見られるから仕方なく残業をしているというケースが少なくありません。気兼ねなく帰れるようにすることで、会社は無駄な残業手当の支払いを抑えられます。

終業時刻後の管理強化

朝型勤務にしても、帰る時間が変わらなければ、朝の勤務が増えるだけという最悪の結果になってしまいます。

例えば、始業時刻を1時間前倒しするのであれば、終業時刻も1時間前倒しすることは当然として、19時以降の残業は「原則禁止」、21時以降(午前6時まで)の残業は「完全禁止」にして消灯するといったルールも良いでしょう。当日に終えられなかった仕事は、翌日の朝に回します。

終わりの時刻を意識しないで仕事をすると、ダラダラと時間が過ぎていきます。終わりの時刻を強制的に19時や21時と決めれば、それまでに完了するためには何時までに何をしなければならないのかと考えます。そして、緊張感を維持したまま、その日1日の仕事を効率的に進められるようになります。

また、会議は16時以降に設定しないといった工夫も必要でしょう。

残業承認制の併用

朝型勤務を導入しても、残業するかどうかの判断を従業員に委ねたままでいると、残業時間はなかなか減らないでしょう。

残業をする場合は、事前に上司の指示又は承認を義務付けるべきです。これにより、仕事があるから残業をしているというように、切迫していない緊急度の低い残業をなくすことができます。

部下から残業の申出があったときは、その都度、上司が、納期や業務の割り振り、割増賃金を支払っても行う価値があるか、等を考慮して、残業をする必要があるかどうかを判断します。

そして、残業をする必要がある場合は、当日の終業時刻後か、翌日の始業時刻前かを指定します。残業をする必要がない場合は、業務命令で残業をさせないこととします。

朝型勤務を効果のあるものにするためには、ある程度厳しく管理をする必要があります。

業務の効率化

仕事の量が同じなら、朝型勤務を導入しても、勤務時間が前倒しされるだけですので、本来は残業時間が減ることはありません。

成果を維持したまま残業時間を削減するためには、業務を効率化することが不可欠です。作業の無駄を排除したり、業務を効率化する提案は積極的に受け入れてください。

朝型勤務の適用が不向きなケース

朝型勤務は、どのような職場にもお勧めできる制度ではありません。交替勤務の職場で導入しても意味がありませんし、次のような事情がある場合は、早朝に出勤することは難しいので、無理に適用しない方が良いです。

朝型勤務導入後の調査

朝型勤務を導入して最初の数ヶ月間は、会社が期待したとおり、残業時間はある程度減少すると思います。しかし、管理がルーズになると、徐々に元の状態に戻ってしまいます。そのため、残業時間が増えていないか、定期的に会社は調査をする必要があります。

そのときに、色々と検討しなければならないことが出てくるかもしれません。場合によっては、従来よりも残業時間が増えて、元の時間帯に戻すべきという結論に至るケースもあります。

(2018/4作成)