育児介護休業法の改正(平成29年施行)
育児介護休業法改正の目的
家族の介護や妊娠、出産、育児を理由にして退職するケースが増えていて、社会問題になっています。
男女ともに退職することなく、【仕事と介護】、【仕事と育児】を両立できる社会を実現するために、育児介護休業法が改正されました。
改正の概要をお伝えいたします。
介護休業の分割取得
これまでの介護休業は、原則1回のみで、対象家族1人につき、93日まで取得できることになっていました。
これが改正により、対象家族1人につき、93日という日数は変わりませんが、3回を上限として、分割して取得できるようになりました。通算して93日というということで、介護の始期、終期、その間の期間での取得が可能になりました。
また、これまでは、所定労働時間の短縮措置等を利用した期間も通算して93日が上限となっていましたが、改正後はそれぞれ独立して利用できるようになり、介護休業を取得した期間だけを通算することになりました。
なお、自分で介護をすると退職に繋がりやすいことから、休業するのではなく働きながら対応することが望ましいということから、日数は93日のままです。
介護休暇の取得単位の柔軟化
これまでの介護休暇(対象家族が1人の場合は年5日、2人以上の場合は年10日の取得が可能)は、1日単位で取得することが原則となっていました。
これが改正により、半日単位の取得が可能になりました。通院の付添いや介護保険の手続き、ケアマネジャーとの打合せ等で、丸1日の休暇は必要ないというケースがあり、そのようなケースに対応できるようになります。
なお、「所定労働時間の2分の1」が半日単位の原則ですが、労使協定を締結したときは「午前」と「午後」を半日の単位とすることも可能です。また、所定労働時間が1日4時間以下の者については、適用しなくても構いません。
介護のための所定労働時間の短縮措置等
これまでの所定労働時間の短縮措置等は、介護休業を取得した期間と通算して93日の範囲内で利用できることになっていました。
これが改正により、介護休業とは別に、利用開始から3年の間で2回以上の利用が可能になりました。3年という期限がありますが、こちらも分割して利用できるようになりました。
なお、所定労働時間の短縮措置等として、会社は次のいずれかの措置を選択しないといけません。内容はこれまでと同じです。
- 所定労働時間の短縮措置(短時間勤務)
- フレックスタイム制度
- 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ(時差出勤)
- 従業員が利用する介護サービス費用の助成
介護のための所定外労働の免除
育児に関しては所定外労働の免除制度がありましたが、介護に関してはありませんでした。改正により、介護に関しても所定外労働の免除制度が新設されました。
この制度は、介護が終了するまで利用可能です。介護はいつまで続くか予測が難しく、長期に及ぶことがありますので、会社によっては負担になるかもしれません。
なお、事業の正常な運営を妨げる場合は、請求を拒否できます。また、引き続き雇用された期間が1年未満の者は、労使協定を締結して適用を除外することができます。
有期契約労働者の介護休業の取得要件の緩和
期間を定めて雇用された者について、介護休業の取得要件が次のように緩和されました。
- 引き続き1年以上雇用されていること
- 93日経過日から6ヵ月を経過する日までの間に、その労働契約が満了することが明らかでない者
「休業開始予定日から93日を経過する日以降も雇用継続の見込みがあること」が要件の1つとして定められていましたが、改正により、削除されました。また、2.については、これまで1年と定められていたものが、記載のとおり6ヶ月に短縮されました。
介護休業等の対象家族の範囲の拡大
介護休業等の対象家族は、これまでは、祖父母、兄弟姉妹、孫については、同居かつ扶養している者に限られていましたが、改正により、同居と扶養の条件がなくなって、範囲が拡大されました。
子の看護休暇の取得単位の柔軟化
子の看護休暇も介護休暇と同様に、これまでは1日単位で取得することが原則となっていましたが、改正により、半日単位の取得が可能になりました。子の健康診断や予防接種といった場合に、柔軟に取得できるようになりました。
有期契約労働者の育児休業の取得要件の緩和
期間を定めて雇用された者について、育児休業の取得要件が次のように緩和されました。
- 引き続き1年以上雇用されていること
- 子が1歳6ヶ月になるまでの間に、その労働契約が満了することが明らかでない者
「1歳以降も雇用継続の見込みがあること」が要件の1つとして定められていましたが、改正により、削除されました。また、2.については、これまで2歳と定められていたものが、記載のとおり1歳6ヶ月に短縮されました。
育児休業等の対象となる子の範囲
育児休業等の対象となる子は、これまでは、法律上の子である実子、養子に限られていましたが、改正により、特別養子縁組の監護期間中の子、養子縁組里親に委託されている子、が追加されました。
就業環境の整備
これまでは、妊娠、出産、育児休業、介護休業等を理由とする不利益な取扱い(解雇、雇止め、減給等)が禁止されていました。これに、次の内容が追加されました。
妊娠、出産、育児休業、介護休業等を理由とする、上司や同僚等による就業環境を害する行為を防止するために、雇用管理上必要な措置を講じることが義務付けられます。セクハラを防止するために義務付けられている措置(従業員への周知、相談体制の整備等)と同様のものです。
派遣社員については、派遣先にも同様の防止措置を講じることが義務付けられます。また、不利益取扱いの禁止規定が、派遣先にも適用されます。
施行期日
改正された育児介護休業法は、平成29年1月1日から施行されています。
介護休業給付金の給付率の引上げ
育児休業給付金については、賃金の67%(6ヶ月経過後は50%)が支給されていますが、介護休業給付金の給付率は40%となっていました。
これが改正により、平成28年8月1日以降は給付率が67%に引き上げられました。なお、この項目は、雇用保険法の改正によるものです。
(2018/6作成)