育児介護休業法の改正(2022年施行)

育児介護休業法改正の趣旨

男女ともに仕事と育児を両立できるようにして、出産や育児を理由とする退職を防止することを目的として、育児介護休業法が改正されました。

出生時育児休業の創設

原則として、育児休業の取得は一子につき1回に限られていて、特例として、出産後8週間の期間内に父親が取得した育児休業については、育児休業の回数に数えないこととされていました。「パパ休暇」と呼ばれている仕組みです。

この仕組みが廃止されて、「出生時育児休業」が独立した制度として創設されました。「出生時育児休業」は父親が対象で、出産して8週間の期間内に4週間(28日)の範囲内で休業できます。なお、出産後の8週間は、母親にとっては産後休業の期間に当たります。

現行の育児休業(パパ休暇)の申出は、休業開始日の1ヶ月前までに行うことになっていましたが、出生時育児休業の申出は、休業開始日の2週間前までとなっていて、2回に分割して取得できます。

また、通常の育児休業の期間中は就業できませんが、労使協定を締結して、労使間で個別に合意した場合は、出生時育児休業の期間中の就業が可能になります。男性の育児休業(パパ休暇)の利用が進まないことから、利用を促進するために、柔軟な制度が創設されました。

2022年10月1日から施行されています。

雇用環境の整備と意向確認

育児休業に関して、企業から働き掛けがなかったり、上司の理解が足りなかったりすると、特に男性従業員は育児休業を取得しにくい傾向があることから、改正によって、次の2つの措置を講じることが義務付けられました。

1つ目として、育児休業を取得しやすくするために雇用環境を整備すること、です。具体的には、育児休業に関する研修を実施したり、相談窓口を設置したり、複数の措置の中から選択することになります。

2つ目として、(本人又は配偶者の)妊娠や出産を申し出た従業員に対して、企業から個別に育児休業等の制度を周知して、育児休業等の取得について意向を確認すること、です。制度の周知方法は、面談で説明をしたり、書面等で情報提供をしたり、複数の措置の中から選択することになります。

この制度は、2022年4月1日から施行されています。

育児休業の分割取得

従来の育児休業の取得は、一子につき1回に限られていました。ただし、パパ休暇、及び、保育所に入所できない等の理由で育児休業を延長する場合(1歳から1歳6ヶ月になるまで、1歳6ヶ月から2歳になるまでの各期間)は取得の回数には数えません。

改正によって、1歳までの育児休業が、2回に分割して取得できるようになりました。出生時育児休業も2回に分割して取得できますが、これとは別に、通常の育児休業に関する取扱いです。

また、1歳以降、1歳6ヶ月以降に育児休業を延長する場合は、育児休業の開始日は各期間の初日しか認められていませんでしたので、各期間の途中で夫婦が休業を交代することは不可能でした。

改正によって、各期間の初日に加えて、配偶者の育児休業終了日の翌日以前の日を育児休業の開始日とすることが認められます。つまり、育児休業を延長する場合、各期間の途中で夫婦が交代して休業できるようになりました。

2022年10月1日から施行されています。

育児休業の取得状況の公表

育児休業の取得を促進するため、従業員数が1,000人を超える企業に対して、毎年1回、育児休業の取得状況を公表することが義務付けられました。

公表が義務付けられる具体的な内容は、省令で定められることになっていて、男性の育児休業の取得率、育児休業や育児目的休暇の取得率が挙げられています。

この制度は、2023年4月1日から施行されています。

有期雇用の取得要件の緩和

従来の有期雇用の従業員が育児休業を取得する場合は、@勤続1年以上である、A1歳6ヶ月になるまでの間に退職することが明らかでない、という2つの要件が定められていました。改正によって、@勤続1年以上の要件が廃止されて、Aのみになりました。介護休業についても同じです。

ただし、従来から、労使協定を締結した場合は、勤続1年未満の者については、育児休業の申出を拒否することが認められています。これまでは無期雇用の従業員が対象でしたが、この取扱いは改正後も有効ですので、有期雇用の従業員もこれに当てはめて、同じルールで適用を除外できます。

この制度は、2022年4月1日から施行されています。

育児休業給付の整備

従業員が育児休業を取得したときは、雇用保険から育児休業給付金(最初の6ヶ月は休業開始時賃金の67%、6ヶ月以降は50%)が支給されます。

育児介護休業法の改正を踏まえて、従業員に不利益が生じないように分割取得に対応する等、雇用保険法が整備されています。また、出生時育児休業の創設に合わせて、出生時育児休業給付金が支給されます。

社会保険料の免除

従来の社会保険料(厚生年金保険と健康保険の保険料)は、月の末日に育児休業を取得している場合に限り、その月の社会保険料が免除されました。育児休業の取得日数に関係なく、月をまたぐかどうかがポイントになります。

この仕組みは残したまま、改正によって、育児休業の開始日と終了日が同じ月で、2週間以上休業(例:8月5日から8月25日まで休業)した月の社会保険料も免除されるようになりました。

また、これまでは、賞与を支給した月の末日に育児休業を取得している場合は、賞与に対する社会保険料が免除されました。そのため、賞与支給月の末日だけ育児休業を取得して、社会保険料の納付を免れるケースがありました。

改正によって、賞与に対する社会保険料については、1ヶ月を超える育児休業を取得した場合に限り、免除の対象になります。賞与支給月の末日に育児休業を取得しているという免除要件は撤廃されました。

この制度は、2022年10月1日から施行されています。

(2023/8作成)