週休3日制の導入

週休3日制とは

「働き方改革」や「ワーク・ライフ・バランス」という言葉が浸透して、従業員の私生活を考慮しない企業は敬遠されるようになりました。企業が様々な働き方を用意して、従業員が選択できるようにすることで、働きやすい職場になります。

その1つとして、「週休3日制」があります。全ての従業員に適用することは難しいですが、希望者が選択できる制度の1つとして検討する価値はあると思います。完全週休2日制が実現できていない企業については、まずは完全週休2日制の実現を目指しましょう。

週休3日制の導入

例えば、1日8時間勤務、週5日出勤(週40時間勤務)の企業で、週休3日制を導入する場合は、次の3つの方式が考えられます。

  1. 「1日10時間勤務、週4日出勤(週40時間勤務)で、賃金は維持」
    1週間の所定労働時間と賃金はそのままで、この方式が標準になります。
  2. 「1日8時間勤務、週4日出勤(週32時間勤務)で、賃金は維持」
    1週間の所定労働時間は減らすけれども賃金はそのままで、現実的には難しいと思います。
  3. 「1日8時間勤務、週4日出勤(週32時間勤務)で、賃金は2割減額」
    1週間の所定労働時間に応じて賃金を減額するもので、希望する従業員は少ないと思います。業績が悪化して、整理解雇を回避するための措置として、従業員に提案するケースもあります。

変形労働時間制

所定労働時間が1日8時間を超えると原則的には労働基準法違反ですが、1ヶ月単位の変形労働時間制を導入して、1ヶ月を平均して所定労働時間が1週40時間以内に収まっていれば、所定労働時間が1日10時間でも適法になります。

1日8時間を超えた時間に対して、割増賃金を支払う義務もありません。ただし、1ヶ月単位の変形労働時間制を採用する場合は、就業規則にその旨を規定しておく必要があります。

また、曜日の関係で理想通りに労働時間が収まらない場合は、1年間の総労働時間を維持して、1年単位の変形労働時間制を導入する方法も考えられます。1年単位の変形労働時間制を導入する場合は、就業規則に規定した上で、毎年、労働基準監督署に労使協定を提出しないといけません。

会社のメリット【週休3日制】

人材の確保

私生活上の事情が生じて、週休3日制なら辞めなくても済むという従業員がいれば、退職を防止できます。また、特別な事情がなくても、従業員を募集する際に週休3日制をアピールすれば、応募者の増加が期待できます。

生産性の向上

多能工や複数担当制を取り入れて、業務の仕組みを改善できれば、生産性の向上に繋がります。効率化のきっかけにもなります。

また、小売業やサービス業で忙しい曜日が決まっている場合は、その曜日に人員を集中して配置することで、売上げアップが期待できます。

残業時間の抑制

1日8時間勤務から1日10時間勤務に延長して、変形労働時間制を導入すれば、延長した2時間分に対する割増賃金の支払いが不要になります。また、1日10時間勤務していると、残業時間が増えにくくなります。

会社のデメリット【週休3日制】

コミュニケーションの不足

休日が増えたことで従業員間のコミュニケーションが不足して、それが原因で問題が生じる恐れがあります。取引先とも連絡が取れないため、対応が1日遅れて迷惑を掛けるかもしれません。また、出勤日数が減少しますので、社内会議や取引先とのアポイントの調整が難しくなります。

想定される問題を回避できるように、あらかじめ業務の仕組みを見直して、他の従業員がフォローできる体制を整備することが重要です。

人員の不足

週40時間勤務から週32時間勤務(1日8時間勤務、週4日出勤)に減らす場合は、人員を増やさなければ、同じ業務量を処理できません。

年次有給休暇の取得

1日10時間勤務になったとしても、年次有給休暇の付与日数は変わりませんので、1日8時間勤務の場合と比較して、免除される労働時間は25%増になります。

「他の従業員に迷惑が掛かるので休みにくい」、「毎週3日休んでいると別に年次有給休暇はいらない」と考える従業員が現れるかもしれません。

1年に5日の年次有給休暇を取得することが義務付けられましたので、夏季や年末年始に年次有給休暇の計画的付与ができるように、1年間の総労働時間は変えないで、所定労働日を調整することも考えられます。

副業による過重労働

増えた休日に副業や兼業をする従業員がいるかもしれません。その場合は、過重労働や競業企業への機密漏洩の危険があります。副業や兼業をする場合は、事前に会社に届け出て、許可を要することをルールとするべきでしょう。

従業員のメリット【週休3日制】

プライベートの充実

増えた休日に何をするかは千差万別ですが、できることの範囲が広がりますので、プライベートが充実します。多くの従業員が週休3日制を期待する最大の理由です。

接触頻度の減少

新型コロナウイルス感染症を防ぐために、接触頻度を減らすことが重要です。満員電車で通勤している場合は、週休3日制に変更することで、通勤時の接触頻度を2割減らせます。テレワークの導入が不可能な工場の製造現場等で、感染予防対策として週休3日制が推進されています。

ストレスの軽減

休日が1日増えることで、睡眠時間を十分に確保できますので、ストレスが軽減されます。

従業員のデメリット【週休3日制】

手取りの減少

「1.1日10時間勤務、週4日出勤(週40時間勤務)で、賃金は維持」の場合でも、残業時間が減少して、手取りが減少するケースがあります。説明が不十分なまま導入すると、従業員から不満を持たれるかもしれません。

心身の疲労

1日10時間勤務に延長する場合は、体力的・精神的に疲れて、終業時刻までパフォーマンスを維持できない従業員がいるかもしれません。終業時刻の2〜3時間前に休憩時間を追加する等の工夫が必要です。

週休3日制の試験導入

週休3日制は様々なデメリットが想定されますので、導入するとしても、3ヶ月や6ヶ月の期間を区切って試験的に導入するのが良いと思います。試験導入後に従業員から聞き取り調査をして、継続するか廃止するか検証します。

また、週休3日制より緩やかに、2週間ごとに5日の休日を設定する方法も考えられます。

(2022/7作成)