表彰制度

表彰制度とは

表彰制度とは、従業員の功労や善行を褒め称えて、それを社内の者に広く知らせる制度です。

就業規則では、懲戒や制裁と並べて表彰の規定を設けることが多いですが、うまく機能していない会社もあるようです。

違反行為をした従業員に罰を与えるだけでは味気ないです。良い行いをした従業員を褒め称える表彰制度を見直してはいかがでしょうか。

なお、報酬金を目指して販売金額を競わせるインセンティブ制度は、ここで取り上げている表彰制度とは別のものと考えてください。

人事制度と表彰制度の違い

従業員の成果や能力、貢献度等を評価して、昇給や賞与の額を決定します。これを人事評価制度や賃金制度と言いますが、業務に関連しないものは評価の対象にはなりません。また、人事評価は個人単位で行いますし、人事評価の結果を周囲に知らせることはありません。

一方、表彰制度は周囲に知らせることが前提ですし、業務に関連しないものを評価したり、グループを対象とすることもあります。表彰制度は、人事制度では捉えられない部分を補完する制度と言うこともできます。

モチベーションの向上

昇給によってモチベーションが高まるとしても一時的なものです。賃金は衛生要因であって、動機付け要因ではないことが明らかになっています。つまり、賃金は不満を解消することはできても、モチベーションの維持・向上は期待できないということです。

動機付け要因としては、達成、承認、仕事そのもの、責任、昇進等が挙げられています。表彰されることによって、会社や周囲から“承認”を得られます。それが動機付けとなって、従業員のモチベーションが向上し、結果的に会社の成長に繋がります。

表彰の内容

表彰は、永年勤続や業務改善提案がよく知られていますが、それぞれの会社によって様々です。具体的には次のようなものがあります。

業務に関連しないものが対象になったり、多様性のあることが表彰制度の大きな特徴です。

従業員にして欲しい行動

会社が定める制度は、会社からのメッセージです。従業員に「このような者を表彰する」と周知して、うまく機能すれば、従業員はそのように行動するようになります。まずは、「従業員にはこうして欲しい」という内容を明らかにしてください。

優秀な業績を上げた者でも構いませんが、「他の従業員のために頑張っているけど認めてもらえない」と、人事評価では捉えられない部分に光を照らすのが効果的です。具体的に表現することが難しい場合は、抽象的な内容でも構いません。ただし、この場合は表彰に値するかどうか、役員会等で審査をする必要があります。

例えば、大阪府の太陽パーツ株式会社では、「大失敗賞」という制度があります。これは、1年間で最も大きな失敗をした者を表彰するもので、「失敗を恐れずに挑戦して欲しい」という会社の考えを制度化したものです。この前向きな精神が組織風土として定着し、特許技術等の成果を生んでいます。受賞しなかった者にも、失敗しても許されるという会社のメッセージが伝わります。

また、提案数が最多の者など、頑張れば誰でも受賞できるような内容が1つはあった方が良いと思います。

表彰の対象者

表彰の対象者は、個人の場合もありますし、グループの場合もあります。

また、正社員だけを対象とするのではなく、パートタイマーやアルバイトなど、全ての従業員を対象とした方が良いです。正社員でない者は周りから承認を得られる機会が正社員と比べると少ないので、表彰による効果が大きいです。

表彰の方法

表彰は通常は表彰状を授与して行いますが、副賞として賞金や賞品を付けることもあります。なお、賞金を付けている会社は5割程度、賞品を付けている会社は1割から2割程度のようです。あくまでも副賞ですので、賞金や賞品は制度を継続できる程度の金額で構いません。

また、永年勤続表彰については、これまでの労をねぎらうために、副賞としてリフレッシュ休暇を与えたり、旅行券を渡したりするケースが増えています。

公表の方法

表彰は本人を褒めるだけでは不十分で、社内の者に広く知らせなければ意味がありません。創立記念日、年末年始、年度末、全体会議など、全ての従業員が集まる機会があれば、その場で表彰式を行います。

そして、このような功労や善行があったと受賞理由を皆の前で説明して、大々的に褒め称えることが重要です。社内報や掲示板だけで発表していると、承認欲求を満たしにくいので、効果が薄れてしまいます。

また、最初は新鮮で盛り上がっても、数年もすると飽きられて負担になることがありますので、公表の方法や賞品を変えるといった工夫をすることも大事です。

表彰の頻度

表彰の内容によっては不定期に発生しますが、表彰は定期的に1年に1回実施している会社が多いです。

業務改善提案をグループ別のコンテスト形式で実施する場合がありますが、そのような場合は半年ごとに行うケースもあります。

受賞者の選定

永年勤続表彰など、具体的な基準を設定できるものは自動的に決まりますが、そうでないものは選考をする必要があります。

例えば、各部門長や担当役員が従業員の功労や善行を取り上げて、部門長会議や役員会議に持ち寄って、審査をする方法が考えられます。部門長や役員の負担が大きければ、従業員同士で他薦を募って、従業員の功労や善行を教えてもらうことにしても良いでしょう。どちらにしても、あらかじめ会社としてどのような者を表彰するのかという方針を明らかにしておく必要があります。

また、審査をして表彰に至らなかったとしても、表彰の会議に取り上げたという事実を公表したり、部門単位で改めて表彰をしたりすることも考えられます。

(2020/4作成)