現物給与と社会保険料(標準報酬月額)
社会保険料決定の仕組み
従業員の社会保険料(厚生年金保険と健康保険の保険料)は、標準報酬月額を基準にして決定されます。
そして、標準報酬月額は1年に1回更新することになっていて、毎年7月に算定基礎届を作成して、年金事務所(又は事務センター)に届け出ていると思います。
その算定基礎届には、4月、5月、6月に支払った給与の額を記載することになっています。
現物給与と社会保険料
通常は、通貨で支払った給与だけを記載すれば良いのですが、現物で支払ったものがある場合は、それも“現物給与”として記載を求められることがあります。
例えば、会社が従業員の食事代を補助したり、会社が借り上げた住宅(社宅や寮など)に従業員を住ませたりしている場合は、注意をする必要があります。
“現物給与”に該当する場合は、通貨に換算して、算定基礎届に記載しないといけません。「通貨によるものの額」の欄の隣に、「現物によるものの額」の欄が設けられています。それぞれを合算した金額により、標準報酬月額(社会保険料)が決定されます。
現物給与の具体例
通勤定期券を現物で渡している場合は、現物給与として取り扱われます。3ヶ月や6ヶ月の複数月の通勤定期券を渡している場合は、1ヶ月当たりの金額が報酬月額になります。
食事と住宅については、「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」(厚生労働省告示)により、現物給与を通貨に換算するための基準額が設定されています。
食事と住宅以外の自社製品等について、労働組合と締結した労働協約で価額を定めている場合は、その価額を報酬として算入します。労働協約で価額を定めていない場合は、時価(実際費用)を報酬として算入します。
住宅
会社が従業員に借り上げ住宅、社宅、寮などの住宅を提供している場合は、都道府県ごとに厚生労働大臣が定める現物給与の価額に換算して報酬を算出します。
住宅については畳1畳当たりの価額が設定されていて、部屋に畳を敷いていない場合は1.65平方メートルを1畳として計算します。
また、価額を算出する場合は、居間、茶の間、寝室、客間等、居住用の部分のみが対象になります。台所、トイレ、浴室、玄関、廊下等は含めません。
住宅費用の一部を従業員が負担(従業員から徴収)している場合は、厚生労働大臣が定める価額から、本人負担分を差し引いた額が現物給与となり、報酬に算入します。
例えば、東京都の会社で、居住用の部分が10畳、本人負担分が月15,000円だったとします。東京都の場合は、畳1畳につき2,590円と定められています(平成30年4月)。
2,590円×10畳=25,900円が現物給与となりますが、本人から15,000円を徴収していますので、この分を差し引くと、10,900円となります。この金額を現物給与として、報酬に算入することになります。
食事
会社が従業員の食事代を補助(従業員に食事を支給)している場合は、都道府県ごとに厚生労働大臣が定める価額を現物給与として、報酬に算入します。
従業員が食事代の一部を負担している場合は、厚生労働大臣が定める価額から本人負担分を差し引いた額が現物給与となり、差額を報酬に算入します。
ただし、従業員が現物給与の価額の2/3以上を負担している場合は、報酬には算入しません。現物給与は一切支給していないものとみなされます。具体例を挙げて見てみましょう。
【2/3以上を負担(徴収)する場合】
例えば、東京都の場合は、1ヶ月当たりの価額が20,700円と定められています(平成30年4月)。この3分の2を計算すると、20,700円×2/3=13,800円になります。
したがって、1ヶ月当たり13,800円以上の食事代を従業員から徴収している場合は、食事の現物給与は支払っていないとみなされます。
【2/3未満を負担する場合】
例えば、1ヶ月当たりの食事代として、従業員が10,000円を負担している場合は、現物給与の価額(20,700円)の2/3未満の負担となります。
この場合は、現物給与の価額から本人負担分を差し引いた額が報酬になります。つまり、20,700円−10,000円=10,700円を現物給与として、報酬に算入することになります。
このときに、1円未満の端数が生じた場合は切り捨てて計算します。
ここでは1ヶ月当たりで例示しましたが、従業員から食事代を1日ごとに徴収していたり、1食ごと(朝食、昼食、夕食)に徴収していたりする場合は、それぞれの価額が定められています。
都道府県ごとに異なる金額が定められていて、例えば、東京都の場合は次のように定められています(平成30年4月)。
1ヶ月当たり | 1日当たり | 朝食のみ | 昼食のみ | 夕食のみ |
---|---|---|---|---|
20,700円 | 690円 | 170円 | 240円 | 280円 |
現物給与の価額は物価の変動等により見直されますので、毎年度最新版を使うよう注意してください。
また、算定基礎届を作成する場合以外にも、資格取得届(従業員を採用したとき)、月額変更届(2等級以上変動したとき)、賞与支払届(賞与を支給したとき)を作成する場合も同様に、現物給与を記載する必要があります。
(2018/5作成)