採用時の提出書類
採用時の提出書類
社員を採用すると、社会保険の加入手続きが必要になったり、確認しないといけない事項があったりします。
そのため、採用に際して、社員から様々な書類を提出してもらいます。採用時の提出書類として、一般的なものは次のとおりです。
それぞれの書類を提出してもらう目的や注意点などを解説していますので、必要と思うものがあれば、就業規則に追加してはいかがでしょうか。
(1)履歴書
本人の経歴等を確認するための書類です。採用面接のときに、既に提出してもらっている場合は不要です。
(2)住民票記載事項証明書
住所、生年月日、氏名等を確認するための書類です。履歴書でも分かりますが、念のため、公的な書類で確認する場合に提出してもらいます。
住民票記載事項証明書とは、住民票の登録事項のうち、請求者が請求する項目だけを抜粋して証明する書類です。
住民票や戸籍謄本(抄本)を求めるケースがありますが、プライバシー上の問題がありますので、これらの書類は求めないで下さい。
(3)誓約書
就業規則の遵守、機密漏洩の禁止、異動の承諾などについて約束する書類です。約束の内容が明らかになりますので、取っておくのが望ましいです。また、社員としての自覚を促す効果も期待できます。
(4)身元保証書
身元保証書を提出させることによって、社員が会社に損害を与えて、本人が賠償できないときは、身元保証人に損害賠償を請求できます。
ただし、監督責任があるのは第一に会社ですので、身元保証人に請求できるのは、通常は損害額の2〜3割程度が限界とされています。
(5)健康診断書
労働安全衛生法により、社員を雇い入れるときは、会社は健康診断を実施することが義務付けられています。
ただし、採用前に行った健康診断(入社日からさかのぼって3ヶ月以内に行った健康診断に限ります)の証明書がある場合は、会社が行う健康診断を省略できます。
(6)源泉徴収票
年末調整を行うために、当年中に前職がある場合に提出してもらいます。
(7)給与所得者の扶養控除等申告書
所得税を計算するときに必要な書類です。
(8)年金手帳
厚生年金の加入手続きに際して必要な書類です。未成年者の場合は年金手帳を持っていない場合があります。その場合は新規に発行されます。
(9)雇用保険被保険者証
前職がある場合に、雇用保険の番号(被保険者番号)を確認するために提出してもらいます。
個人に割り振られた被保険者番号は転職をしても引き継がれます。そして、前職で雇用保険の失業給付等を受けていない場合は、前職での雇用保険の加入期間を通算することができます。
要するに、雇用保険の被保険者番号を引き継ぐことで、次の失業給付の金額が増えることがあります。逆に言うと、引き継がないと損をすることもあり得ます。
雇用保険の被保険者番号が確認できない場合は、新しい番号が発行されます。
(10)通勤経路届
通勤手当の確認のために使います。
(11)自動車運転免許証の写し
業務で自動車を運転する場合に、万一、無免許を放置していて事故が起きると、会社に管理者責任が問われます。業務で運転する機会がある場合は提出させて下さい。最初は、現物で停止されていないか等を確認すると良いでしょう。
(12)資格証明書、免許証の写し
自動車運転免許証と同じです。無資格や無免許を放置していて事故が起きると、会社に管理者責任が問われます。必要な場合は必ず提出させて下さい。
(13)卒業証明書、学業成績証明書
新卒採用で卒業を条件としている場合に提出してもらいます。
(14)口座振込同意書
給与の銀行振り込みを行う場合に、口座番号等を記載して提出してもらいます。
(15)その他会社が必要と認めたもの
この項目を就業規則に記載しておけば、必要に応じて、記載している以外の書類も提出させることができます。ただし、具体的に就業規則に記載しておいた方が指導もしやすいので、提出させることが決まっている書類は省略しないで就業規則に記載して下さい。
プライバシー
家族に関係する書類を提出させているケースがありますが、業務に関係のない書類を提出させると、プライバシー上の問題がありますので求めないようにして下さい。
家族手当の支給や健康保険の被扶養者とするための資料として使うものであったり、業務に関係する最低限の内容であれば問題ありません。
書類の提出期限
書類の提出期限が「採用後、速やかに」となっている就業規則がありますが、「速やかに」ではいつまでなのかハッキリしません。
「入社日まで」、「入社日から1週間以内」、「入社日から2週間以内」のように、具体的に定めておいた方が良いでしょう。
採用の取り消し
経歴詐称等による不正な入社を防止するために、正当な理由がなく、期限までに書類を提出しない場合、提出書類に虚偽の記載を行った場合は、採用を取り消すこと(解雇)ができるように就業規則に記載しておいた方が良いでしょう。提出されない場合に指導がしやすくなります。
ただし、実際に解雇が有効と認められるかどうかは、その内容や程度、理由等によってケースバイケースです。
その事実を知っていたら採用しなかったというほどの重大な経歴詐称等であれば、解雇は有効と認められます。また、書類の未提出については、その書類を提出させることの必要性があって、提出が採用の条件になっていることを本人に十分説明することが求められます。
記載事項の変更の届出
提出書類の記載事項に変更があったときも同様に、就業規則に、「変更があったときは、その都度2週間以内」のように提出期限を具体的に定めておいた方が良いでしょう。社員が引っ越したり、扶養家族が減ったりしたときに、各手当の不正受給に繋がる場合があります。
また、「会社が必要と認めたとき」も改めて提出を求めることができるようにしておいた方が良いです。不正の疑いがあるときに、不正の有無を確認するために、提出を命じることが可能になります。
(2015/7作成)