現物給与と労働保険料(年度更新)

労働保険の年度更新

労災保険と雇用保険を併せて労働保険と呼びます。(健康保険と厚生年金保険を併せて社会保険と呼びます。)

労働保険の保険料は、毎年、「年度更新」という手続きによって計算することになっています。

具体的には、毎年、4月1日から翌年3月末日までの1年間を単位として、従業員に支払った賃金総額に、事業の種類ごとに定められた保険料率を掛けて、労働保険料を算出します。

この計算により、前年度の労働保険料を確定させて、新年度の労働保険料の概算を算出、納付します。

この一連の手続きを「年度更新」と言って、毎年6月1日から7月10日までの間に行うこととされています。

現物給与と労働保険料

労働保険料は、普通は通貨で支払う賃金のみを基準にして計算するのですが、従業員に食事を支給したり、住宅を提供したり、通貨以外で支給したものがある場合は「現物給与」として取り扱うこととされています。

この「現物給与」の価額は、厚生労働大臣が定めることになっていて、その価額を賃金総額に算入して計算しなければなりません。

現物給与の価額は、都道府県ごとに、物価の変動等に応じて見直されます。

現物給与の具体例

参考に、東京都の場合、食事の価額については、次のように定められています(平成30年4月)。

1ヶ月当たり1日当たり朝食のみ昼食のみ夕食のみ
20,700円690円170円240円280円

また、東京都の場合、住宅の価額については、1ヶ月当たり畳1畳につき、2,590円と定められています(平成30年4月)。

会社から従業員に食事や住宅を提供して、従業員がその費用を負担していない(会社が全額を負担している)場合は、上の現物給与の価額を算入して、賃金総額を計算します。

一方、従業員が食事や住宅の費用を負担(会社が従業員から費用を徴収)している場合は、原則として、賃金には算入しなくても良いことになっています。

ただし、従業員の負担額が現物給与の価額の3分の1を下回る場合は、3分の1との差額を賃金とみなして、賃金総額に算入して計算しなければなりません。

例えば、東京都の会社で、食事を提供して、従業員から食事代を徴収していないとすると、1ヶ月当たり、20,700円の現物給与を支給しているとみなして、賃金総額を計算します。

このときに、従業員から食事代として月額10,000円を徴収しているとすると、現物給与の価額(20,700円)の3分の1(6,900円)を上回りますので、現物給与は支給していないことになります。

また、従業員から食事代として月額5,000円を徴収しているとすると、現物給与の価額の3分の1との差額(6,900円−5,000円=1,900円)を、現物給与の価額として、賃金総額に算入することになります。

(2018/5作成)