フリーアドレスの導入
フリーアドレスとは
通常の職場では、従業員1人1人に専用の座席と机があって、毎日、そこで仕事をします。フリーアドレスでは、従業員は自分の座席や机がなくて、その都度、自由に好きな場所で仕事をします。
社内に無線LAN(Wi−Fi)を整備して、各自に貸与したノートパソコンやスマートフォン等を使って仕事をするイメージです。IT企業など、比較的新しくてクリエイティブな仕事をする企業で積極的に取り入れられていますが、カルビーや総務省など、それ以外の企業でも導入が進んでいます。
職場環境の変化
数年前までは、机の上に固定電話とデスクトップパソコンがあって、業務のやり取りの中心は紙の書類でした。しかし、現在は職場環境が変化して、ノートパソコンやスマートフォンが普及し、ペーパーレス化が進んでいます。従来は難しかったフリーアドレスの導入が容易になり、現実的な選択肢としてフリーアドレスが注目されています。
特に最近は、在宅勤務(テレワーク)を導入する企業が増えていますので、「全員分の座席を用意しなくても良いのではないか?」と考える企業が増えています。在宅勤務(テレワーク)をしている従業員も、「どこにいても仕事ができる」と実感していることでしょう。
メリット@スペースを活用できる
フリーアドレスを導入して、例えば、10人分のスペースを8人分のスペースに縮小すれば、2人分のスペースが空きます。これをミーティング、オンライン会議、休憩、カフェ等のスペースに転用すれば、スペースを有効に活用できます。
メリットAコストを削減できる
フリーアドレスを導入して、オフィスを縮小できれば、賃料等のコストを削減できます。従業員が少し増えたとしても、人数分の座席や机を新しく用意する必要がありません。また、同時にペーパーレス化を進めることができれば、印刷やコピーに掛かる費用を削減できます。
メリットBコミュニケーションが活性化する
座席を固定しないので、これまで話をする機会がなかった従業員と会話をしたり、コミュニケーションの幅が拡がります。幅広い従業員と話し合っている中で、新しいアイデアや企画が生まれるかもしれません。コミュニケーションが活性化して、部署間の壁を取り払うことにも繋がります。
また、些細な要望やアドバイス、確認したいことがあったとしても、場所が離れていると、わざわざ伝えるのが面倒になってしまいます。フリーアドレスで自由に移動できれば、世間話のついでに伝えることができます。生産性が向上したり、ミスを防止できたり、些細なことでも積み重なると大きいです。
メリットC職場が整理整頓される
座席を固定していると、書類や資料を山積みにする者がいます。フリーアドレスにすると、出勤時にロッカーから自分の仕事道具を取り出して、退勤時にロッカーに収納します。自然と仕事で使う物が、自分で持ち運べる量に制限されます。書類や資料を机の上に放置して帰ることがなくなりますので、職場が綺麗に整理整頓されます。
また、整理整頓とペーパーレス化によって、書類や資料を探すための無駄な時間がなくなり、生産性が向上します。
デメリット@居場所が不明になる
フリーアドレスにすると、誰がどこにいるのか分からなくなります。上司によるチェックやフォローが不十分になって、ミスやクレームが増加するかもしれません。
部署内のコミュニケーションが疎かになる場合は、スケジュール等の管理方法を見直す必要があります。業務の進捗状況や成果を把握するために、定期的に報告・連絡・相談を求めたり、ミーティングの機会を設けたり、コミュニケーションツールを活用したりすることが考えられます。
デメリットA従業員に不満が生じる
- 落ち着いて仕事ができない。
- 自分の座席がなくなることで、疎外感を感じたり、不安になる。
- 出退勤や移動の際に、自分の仕事道具を持ち運ばなければならないのが煩わしい、など。
フリーアドレスに対して、様々な不満が生じることがあります。フリーアドレスを導入する目的を理解してもらうことが大事です。
デメリットB導入コストが掛かる
フリーアドレスを導入する場合は、各自のノートパソコンを接続するために、無線LAN(Wi−Fi)を整備する必要があります。セキュリティ上の問題がある場合は、予め解決しないといけません。また、必要に応じて新しく調達する物がある場合は、その購入費用が掛かります。
- 仕事道具を収納するためのロッカー
- スペースの用途を変更する場合は新しいオフィス家具
- ノートパソコン、スマートフォン、タブレット等
- コミュニケーションツール等
レイアウトを変更する場合は、工事を伴うこともあります。
フリーアドレスの導入目的
フリーアドレスを導入する場合は、ルールを決定したり、後で効果を検証したりするために、最初に目的を明確に定めることが重要です。従業員の協力が欠かせませんので、従業員に目的を説明して、理解が得られるかが第一関門になります。
フリーアドレスは手段でしかありませんので、目的を達成できないことが明らかになった場合は、固定席に戻すことも十分にあり得ます。
部署を限定して導入
問題が続出して対応できない事態になる恐れがありますので、いきなり全ての部署を対象として導入するべきではありません。
在宅勤務(テレワーク)が難しくて、在席率が高い部署では、フリーアドレスを導入してもスペースを縮小できませんので、効果は期待しにくいです。また、オープンで自由に行き来できるようになりますので、従業員の賃金を計算する等、個人情報や機密情報を取り扱う部署も向かないです。
在宅勤務(テレワーク)が可能で、在席率が低い部署に限定して、フリーアドレスの区域(エリア)を制限した上で、試験的に導入する方法が良いです。営業部門などが該当しやすいと思います。
フリーアドレスのルール設定
試験導入で問題が生じたときは、その都度、従業員と話し合って、ルールを設定します。対象範囲を拡大するときに備えて、問題点は積極的に聞き取るようにします。
例えば、個人宛に届いた郵便物を本人に渡せないという問題が生じたときは、郵便物の置き場所を決めれば対処できます。また、フリーアドレスを適用していても、集中して仕事をしたい時間があるかもしれません。フリーアドレスから隔離して、仕事に集中できるスペースを設けることもあります。
(2023/6作成)