ジョブ・リターン制度

ジョブ・リターン制度とは

「ジョブ・リターン制度」とは、一度退職した従業員を再雇用する制度です。

再雇用というと定年退職した従業員を継続雇用するケースを連想すると思いますが、ジョブ・リターンは、定年以外の理由で退職して、しばらく経過した後に再び雇用するケースを言います。「カムバック制度」や「出戻り社員」と呼ばれることもあります。

求人の募集をしても、応募者が集まりにくい状況が続いています。今後も15歳以上65歳未満の生産年齢人口は減少することが決まっていますので、何も手を打たなければ、採用が困難な状況が改善されることはありません。

人材を確保する手段の1つとして、ジョブ・リターン制度を導入する企業が増えています。

ジョブ・リターン制度のメリット

通常の採用と比較して、ジョブ・リターン制度には様々なメリットがあります。

即戦力となる

会社は本人の能力を把握して、本人も具体的な業務内容や社内の仕組みを理解していますので、即戦力として期待できます。即戦力となる人材を確保できることが、ジョブ・リターン制度の一番のメリットです。

ミスマッチが起きにくい

会社は本人の人柄を知っていて、本人も職場の雰囲気に馴染みやすいです。また、会社から何を求められているか分かっていますので、ミスマッチが起きにくいです。在籍中に会社と合わなかった人が、ジョブ・リターン制度を利用することは考えにくいです。

採用コストが掛からない

新規採用をする場合は、ハローワークで募集をしたり、求人広告を出稿したり、面接をしたり、費用や時間が掛かりますが、ジョブ・リターン制度の場合は大部分を省略できます。非常に効率的です。

また、新入社員に対して行う研修や教育、専門知識を習得させるために行う研修や教育が不要ですので、そのコストも抑えられます。

職場が活性化する

ジョブ・リターン制度に応じる従業員は、会社に対して良い印象を持っていて、比較的モチベーションが高いケースが多いです。そのような従業員がいると、職場が活性化します。

従業員は安心して就職できる

退職時と状況が変わって、どこかで働きたいと考えている人にとっては、これまでの経験を活用できますし、新しい職場に馴染めるかといった心配がいりません。従業員は安心して就職できます。

ジョブ・リターン制度の注意点

ジョブ・リターン制度はメリットばかりではありません。いくつか注意しないといけないことがあります。

やむを得ない家庭の事情で退職した人は許せるとしても、転職先を見付けて退職して出ていった人は、一度は会社を裏切った者として受け入れがたいと考える従業員もいます。

ジョブ・リターン制度の対象者を、結婚、出産、育児、介護、配偶者の転勤、病気療養など、退職理由で限定する方法が考えられます。

また、復帰後のポジションや賃金等の処遇をどうするか、既存の従業員とのバランスを考慮して、慎重に検討する必要があります。場合によっては、納得できない従業員が現れて、モチベーションが低下する恐れがあります。

従業員への意見聴取

転職が一般的な業界や会社では、ジョブ・リターン制度を受け入れやすいと思いますが、そうでない業界や会社では抵抗があるかもしれません。

それぞれの会社によって反応が違うと思いますので、ジョブ・リターン制度について、(制度の導入を歓迎するか、転職した者を受け入れられるか等)どのように考えているのか、直接従業員に意見を聴くのが手っ取り早いです。

ジョブ・リターン制度の検討事項

現状では、確立した制度としては設けないで、本人から元上司や同僚に再雇用の働き掛けがあったり、会社から本人に再雇用を打診したりして、個別に対応しているケースが多いです。

しかし、「ジョブ・リターン制度」として定めて従業員に周知しておけば、退職した従業員は復帰を申し出やすくなりますし、復帰したときに周囲の理解を得やすいです。

ジョブ・リターン制度を導入する場合は、いくつか検討する事項があります。

退職理由による制限

ジョブ・リターン制度を導入している会社では、結婚、出産、育児、介護、配偶者の転勤など、やむを得ない家庭の事情で退職した者に限定しているケースが多いです。しかし、この場合、利用者はほぼ女性だけになります。

解雇した者は問題外ですが、最近は退職理由を不問にして自己都合退職(転職、起業、病気療養など)した者も受け入れる会社が増えています。対象範囲を拡げれば、利用者の増加が見込めます。

雇用形態

対象者を正社員に限るのか、パートタイマーも認めるのか、雇用形態ごとに適用するかどうかを検討します。

勤続年数

対象者は、3年以上勤務した従業員としているケースが多いです。

応募期限

退職して何年後まで応募を認めるのか検討します。3年〜10年の間で設定している会社が多いです。また、退職理由ごとに違う年数にしても構いません。

採用試験

退職して2年以内であれば無条件で受け入れるといった方法もありますが、復帰する際に面接等の採用試験を実施することにしていれば、応募があっても不採用とすることができます。

また、小規模企業では、タイミングによって受け入れられる余地がない場合も考えられます。

通知方法

自分がジョブ・リターン制度の対象者なのか分からなければ、将来、状況が変わったときに会社に復帰を申し出にくいです。退職する従業員に制度の説明をして、対象者であることを示した書面を交付している会社もあります。

また、退職時にジョブ・リターン制度の利用を希望するかどうか確認をして、希望者にはその後、毎年1回連絡を取って、継続して希望するかどうかを確認する方法もあります。

更に、自社のホームページで、ジョブ・リターン制度を導入していることを告知しておけば、それを見た退職者が応募してくるかもしれません。

利用回数の上限

ジョブ・リターン制度の利用回数に上限を設けるかどうか検討します。

勤続年数の通算

勤続年数に応じてリフレッシュ休暇を与えたりしている場合に、以前の勤続年数を通算する必要はありませんが、通算する場合は明確にしておく必要があります。

再雇用後の労働条件等

再雇用した後の雇用形態(正社員やパートタイマー等)、ポジション、労働条件(賃金や労働時間等)については、本人の希望があるでしょうし、会社も他の従業員とのバランスを考慮する必要がありますので、その都度、個別に決定することになります。

(2020/11作成)