各種手当と同一労働同一賃金

中小企業への適用

同一労働同一賃金について、2021年から中小企業にも適用されるようになりました。

それぞれの会社で様々な手当を支払っていると思いますが、同一労働同一賃金が適用されると、手当ごとの性質や目的を考慮して、不合理な相違が禁止されます。相違があることについて、合理的な説明ができなければ、正社員に支払っている手当を、契約社員やパートタイマー等にも支払うよう求められる恐れがあります。

典型的な例として、次の者を想定して、手当の種類ごとに判定のポイントを解説いたします。

雇用形態職務内容異動契約期間
正社員あり無期
契約社員なし有期
パートタイマーなし有期

正社員と契約社員は職務内容(業務の内容及び責任の程度)が同じですが、契約社員は異動(配置転換、転勤、昇進等)がなく、契約期間を定めて雇用している者とします。パートタイマーは職務内容が異なる者とします。

典型例として示したものですので、全ての会社の契約社員やパートタイマーに当てはまるものではありませんし、会社に特有の事情がある場合は判断が異なるケースもあります。以降の解説は、1つの考え方として理解してください。

通勤手当

通勤に要する費用を補助するために支給する手当です。通勤に費用を要するのは、契約社員やパートタイマーも同じですので、正社員と同じ基準で支給する必要があります。

役職手当

役職に応じて支給する手当です。役職手当や役付手当と呼んでいる会社もあります。

契約社員に役職を与える場合は、正社員と同様の基準で支給する必要があります。ただし、例えば、契約社員の所定労働時間が正社員の6割とすると、役職手当を6割に減額することは認められます。

家族手当

扶養家族を有する従業員に支給する手当です。家族手当や扶養手当と呼んでいる会社もあります。

家族手当は生活設計を容易にして、継続的な雇用を確保することを目的として支給するものと考えられますので、有期雇用の契約社員やパートタイマーに支給する必要はありません。しかし、有期雇用の更新を繰り返して継続的な雇用が見込まれる場合は、支給するよう求められる可能性があります。

技能手当

職務に求められる特定の技能、技術、資格を有する従業員に支給する手当です。技能手当、技術手当、資格手当と呼んでいる会社もあります。

同じ技能、技術、資格を有する契約社員がいる場合は、正社員と同様の基準で技能手当を支給する必要があります。職務内容が異なるパートタイマーについては、支給を求められる可能性は低いです。

住宅手当

住宅に要する費用を補助するための手当です。

転勤を予定している場合は、住宅費用が高額になりやすいです。そのため、転勤を予定していない契約社員やパートタイマーについては、支給を求められる可能性は低いです。

しかし、転勤がない会社で正社員に住宅手当を支払っている場合は、契約社員やパートタイマーについても、支給するよう求められる可能性があります。また、家族手当と同様に、雇用の確保を目的とする場合は、有期雇用の者には支給する必要はありません。

皆勤手当

人員を確保するために、無遅刻・無欠勤の従業員に支給する手当です。皆勤手当や精勤手当と呼んでいる会社もあります。

職務内容が同じ契約社員については、人員を確保するという必要性は同じですので、正社員と同様の基準で支給する必要があります。職務内容が異なるパートタイマーについては、支給を求められる可能性は低いです。

特別勤務手当

土日祝日、年末年始、深夜、早朝など、従業員の配置が難しい特定の日や時間帯に出勤した従業員に支給する手当です。特別勤務手当や特殊勤務手当と呼んでいる会社もあります。

職務内容が同じ契約社員については、人員を確保するという必要性は同じですので、正社員と同様の基準で支給する必要があります。

また、一律の定額で支給している場合は、職務内容とは無関係に支給しているものと考えられますので、パートタイマーについても、支給するよう求められる可能性があります。

ただし、特定の日や時間帯に出勤することを前提にして採用した者については、特別勤務手当を含んだ賃金が支払われていると考えられますので、特別勤務手当を支給する必要はありません。

危険手当

危険な作業や特殊な環境で作業をする従業員に支給する手当です。危険手当や特殊作業手当と呼んでいる会社もあります。

契約社員やパートタイマーが同じ作業をする場合は、正社員と同様の基準で支給する必要があります。

地域手当

全国への転勤がある会社で、物価の格差を補うために、特定の地域で勤務をする従業員に支給する手当です。地域手当や勤務地手当と呼んでいる会社もあります。

転勤を予定していない契約社員やパートタイマーについては、地域手当を含んだ賃金が支払われていると考えられますので、地域手当を支給する必要はありません。

食事手当

食事に要する費用を補助するための手当です。

食事に費用を要するのは、契約社員やパートタイマーも同じですので、職務内容が異なっていたとしても、正社員と同じ基準で支給する必要があります。ただし、支給対象となる食事の休憩時間がない者(例えば、勤務時間が13時から17時までの者)には、支給する必要はありません。

無事故手当

顧客の信頼獲得や従業員の安全意識向上を目的として、無事故・無違反の従業員に支給する手当です。無事故手当や無違反手当と呼んでいる会社もあります。

職務内容が同じ契約社員については、その必要性は同じですので、正社員と同様の基準で支給する必要があります。職務内容が異なるパートタイマーについては、支給を求められる可能性は低いです。

時間外勤務手当

時間外労働をした従業員に支給する手当です。

労働基準法で定められている基準より、有利な計算方法で時間外勤務手当を支払っている会社があります。契約社員やパートタイマーについても、正社員と同様の計算方法で時間外勤務手当を支払う必要があります。休日勤務手当、深夜勤務手当についても同じです。

(2023/3作成)