手当の種類と性質

手当とは

基本給の他に賃金として、通勤手当、役職手当、家族手当といった手当を支払っている会社が多いと思います。

しかし、割増賃金(時間外勤務手当、休日勤務手当、深夜勤務手当)以外の手当の支払については、労働基準法では特に義務付けられていません。諸手当(通勤手当も含みます)を支給するかどうかは、会社の自由です。

ただし、就業規則(賃金規程)や雇用契約書で支給することを定めている場合は、それらに基づいて支給しないといけません。

また、手当を支給する場合は、就業規則(賃金規程)にその決定方法を記載する必要があります。

手当の分類

大きく分けると、手当は次の3つに分類されます。

  1. 職務給・・・労働の対償として、従業員の職務、職責、職能に応じて支給する手当(役職手当や資格手当など)
  2. 生活給・・・従業員の職務、職責、職能とは無関係に、生活費を補助するために支給する手当(通勤手当や家族手当など)
  3. その他・・・職務給にも生活給にも当てはまらない手当(調整手当など)

それぞれどのような手当があるのか見てみましょう。

職務給

役職手当

一定の役職(部長、課長、主任等)に就いている従業員に対して、その役職(職責)に応じて支給するものです。役付手当や管理職手当等と呼ばれることもあります。

基本給を引き下げることは難しいですが、役職手当は役職に応じて支給しますので、降格したときの減額変更について、従業員から理解を得やすいです。

資格手当

一定の資格、免許、技能を持っている従業員に対して、その資格等(難易度や貢献度)に応じて支給するものです。技術手当や技能手当等と呼ばれることもあります。

資格手当を設けることによって、資格等の取得を促すことになります。

営業手当

社外勤務をする営業職の従業員については、事業場外労働のみなし労働時間制を適用して所定労働時間勤務したものとみなすケースが一般的です。

しかし、所定労働時間を超える勤務が普通になると、実際には残業をしているにもかかわらず、残業手当が支払われないという不満が生じます。このような不満を解消するために、残業手当に見合うものとして支給するケースがあります。

また、社外勤務が多いと金銭的な負担が増えるため、その代償として支給するケースもあります。外勤手当等と呼ばれることもあります。

皆勤手当

無遅刻・無欠勤を促すために支給するもので、賃金の計算期間内に、欠勤・遅刻・早退があった場合は、減額又は不支給となります。精皆勤手当、出勤手当等と呼ばれることもあります。

特殊作業手当

危険を伴ったり、有害な環境であったり、肉体的・精神的苦痛を伴ったり、通常ではない特殊な作業を行わせる場合に、その代償として支給するものです。危険手当等と呼ばれることもあります。

特殊勤務手当

宿直や日直、深夜勤務、年末年始など、特殊な時間帯や日に勤務を行わせる場合に、その代償として支給するものです。特別勤務手当、宿直手当、日直手当、夜勤手当、交替勤務手当、年末年始手当等と呼ばれることもあります。

業績手当

販売量や生産量など、個人・部門・グループ・会社全体を単位として、一定の業績を達成したときに支給するものです。能率手当、生産手当、奨励金等と呼ばれることもあります。

生活給

通勤手当

通勤に要する費用を補助するために支給するものです。

公共交通機関を利用して通勤する従業員には定期券代の実費、自動車で通勤する従業員には通勤距離に応じて算出した額を支給するケースが一般的です。

家族手当

家族(配偶者、子、父母等)を扶養している従業員に対して、生活費を補助するために支給するものです。扶養手当、育児支援手当等と呼ばれることもあります。

最近は共働きが増え、子育て支援が注目されていることから、配偶者に対する支給額を減額して、子に対する支給額を増額するよう制度を見直す会社が増えています。

住宅手当

住宅に要する費用を補助するために支給するものです。住居手当等と呼ばれることもあります。

賃貸住宅の場合は家賃月額、持家住宅の場合はローン月額、に応じて支給額を決定している場合は、割増賃金の基礎となる賃金から除外できます。

単身赴任手当

転勤命令により、単身赴任(二重生活)をすることになった従業員に対して、生活費を補助するために支給するものです。別居手当等と呼ばれることもあります。

地域手当

複数の地域に拠点がある場合に、それぞれの地域における物価や生活費の格差を補うために支給するものです。勤務地手当、物価手当、都市手当、寒冷地手当等と呼ばれることもあります。

その他

調整手当

様々な事情により、賃金に生じた不均衡を解消するために支給するものです。

手当を追加するときの注意点

以上の手当は例として示したもので、取り入れるよう推奨している訳ではありません。

人に個性があるように、会社にも個性があります。「会社が生活給を支払うのは違うと思う。そんな余裕があるんだったら、会社に貢献してくれた従業員にたくさん支払ってあげたい」と考えるのでしたら、それがその会社にとっては正解と言えるでしょう。

そして、一旦、賃金規程に手当を追加すると、簡単に手当を廃止(削除)することはできません。

歴史の長い会社によくあるのですが、たくさんの手当を設けてきたために歪みが生じて、最終的に調整手当で賃金の総額を調整して、個々の手当を支給する目的を失っているケースがあります。

手当を追加する場合は、支給要件と支給額の決定方法について、時間を掛けて慎重に検討するべきです。

なお、それぞれの手当を支給している会社の割合は、当事務所の経験で言いますと、通勤手当はほぼ100%、役職手当は6〜7割前後、家族手当は3〜4割前後、その他の手当は0〜1割前後ではないかと思います。

(2019/5作成)