同一労働同一賃金の概要

同一労働同一賃金とは

同一労働同一賃金とは、同じ仕事をする者には同じ賃金が支払われるべきだという考え方です。

日本の法律では、同じ企業内の正社員と短時間労働者、同じ企業内の正社員と有期雇用労働者の間に、不合理な待遇の相違を禁止する【均衡待遇】、及び、差別的な取扱いを禁止する【均等待遇】の2つの規定が設けられています。

均衡待遇とは

  1. 職務内容
  2. 職務内容と配置の変更の範囲
  3. その他の事情

を考慮して、不合理な待遇の相違を禁止することを「均衡待遇」と言います。

一切の待遇の相違を禁止するものではなく、待遇の性質や目的を考慮して、不合理な相違が禁止されます。合理的な(理由を説明できる)相違は許されます。

考慮要素の定義

「1.職務内容」とは、業務の内容とその業務に伴う責任の程度のことを言います。責任の程度とは、具体的には、権限の範囲、成果に求められる役割、緊急時に求められる対応の程度等が考えられます。

「2.職務内容と配置の変更の範囲」とは、人事異動や役割の変化等の有無や範囲のことを言います。人材活用の仕組みや運用等に応じて待遇に違いが生じることは合理的と考えられています。

「3.その他の事情」とは、具体的には、職務の成果、能力、経験、労使慣行、労使交渉の経緯等の諸事情が考えられます。定年退職後に再雇用された者であることも諸事情の1つに含まれます。

また、「待遇」には、基本給、諸手当、賞与といった賃金だけではなく、福利厚生、教育訓練、休憩、休日、休暇、安全衛生、災害補償、解雇等の全ての待遇が含まれます。

均等待遇とは

  1. 職務内容
  2. 職務内容と配置の変更の範囲

といった就業の実態が同一の者は、全ての待遇について同一の取扱いを受けるべきとして、差別的な取扱いが禁止されています。これを「均等待遇」と言います。

法律の改正

従来の「パートタイム労働法」は短時間労働者を対象とする法律でしたが、今回の改正によって、有期雇用労働者も対象に追加されます。そのため、法律の略称も「パートタイム・有期雇用労働法」に変わります。

また、「労働者派遣法」にも【均衡待遇】と【均等待遇】の規定が追加されましたので、派遣労働者も対象に加わります。

改正法の施行期日は2020年4月1日ですが、中小企業については猶予期間が設けられて2021年4月1日から適用されています。

不合理な待遇差の禁止

法律が改正されて、均衡待遇について、個々の待遇ごとに、その性質や目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断することが、法律上に明記されます。

ガイドラインの策定

待遇の相違がある場合に不合理かどうかは、基本給、諸手当、賞与、福利厚生、教育訓練など、個々の待遇ごとに判断されるのですが、基準が明確ではありませんでした。

そのため、ガイドライン(指針)が策定され、個々の待遇ごとに、どのような待遇差が不合理に当たるのか、考え方や具体例が次のように示されています。

基本給

  1. 能力や経験に応じて
  2. 業績や成果に応じて
  3. 勤続年数に応じて

基本給を支給している場合は、@ABに応じた部分について、同一であれば同一の基本給を支給、一定の相違があれば相違に応じた基本給を支給しないといけません。

役職手当

役職に対して役職手当を支給している場合は、同一の内容の役職には同一の役職手当を支給、一定の相違があれば相違に応じた役職手当を支給しないといけません。

諸手当

それぞれ職務内容等が同一の場合は、短時間労働者等にも正社員と同一の支給が求められます。

通勤手当・食事手当

通勤手当や食事手当は、通常は職務内容と関連がありませんので、短時間労働者等にも同一の支給が求められます。

賞与

業績等への貢献に応じて賞与を支給している場合は、貢献に応じた部分について、同一の貢献であれば同一の賞与を支給、一定の相違があれば相違に応じた賞与を支給しないといけません。

パートタイマーや契約社員に賞与を支給していない会社が多いですが、その場合は、賞与の性質や目的に照らして、合理的な説明が可能か検討する必要があります。

例えば、正社員には目標を設定して、目標を達成するための裁量が与えられて、その責任を負うけれども、パートタイマーには目標を達成するための裁量や責任がない(未達でも不利益を受けることはない)場合は、賞与を支給しなくても問題はないと考えられます。

福利厚生

食堂、休憩室、更衣室等の福利厚生施設については、正社員と同一の利用を認めないといけません。また、短時間労働者等にも正社員と同一の慶弔休暇を付与して、健康診断に伴う勤務免除(有給保障)をしなければならないことになっています。

病気休職については、無期雇用労働者には正社員と同一の休職の取得を認めて、有期雇用労働者には労働契約が終了するまでの期間を踏まえて休職の取得を認めないといけないとされています。

教育訓練

現在の職務に必要な技能・知識を習得するために教育訓練を実施している場合は、職務内容が同一であれば同一の教育訓練、相違があれば相違に応じた教育訓練を実施する必要があります。

待遇に関する説明義務の強化

これまでは短時間労働者と派遣労働者を対象として、「待遇の内容」(採用時)や「待遇を決定する際に考慮した事項」(求めがあった場合)について、説明義務が定められていました。

法律が改正されて、説明を求められる事項として「正社員との待遇差の内容や理由」が追加されます。また、これらの説明を求められる者として、有期雇用労働者が追加されます。

更に、短時間労働者等が説明を求めたことを理由として、解雇などの不利益な取扱いを禁止する規定が追加されます。説明するよう求めがあった場合は、会社は応じる必要があります。

(2021/6作成)