国民年金の損得

国民年金の損得

「年金制度は破綻しているから将来年金はもらえない」「国民年金の保険料は払い損だ」「自己責任で自分で積み立てる」と思っている人は多いです。

実際、国民年金は滞納して、民間の金融機関の個人年金を積み立てている人もいるようです。

本当にそれでいいのでしょうか?

国民年金のメリット【得】

「老齢などによって生活の安定が損なわれることのないよう、国民全体で支えあう」という国民年金制度の意義は別にして、国民年金に加入するのが損か得かという視点で見てみましょう。

国民年金の保険者は国

国民年金を管理しているのは国(政府)です。国より安全な民間の金融機関はありません。

国民年金の財源の「1/2」は税金

国民年金の財源は、保険料だけではありません。財源の「1/2」は税金です。

保険料を滞納している人も、税金という形で徴収されています。滞納期間が長くなると、将来年金を受け取ることができません。そうなると、戻ってくるはずの税金が徴収されるだけになってしまいます。

国民年金の保険料は社会保険料控除の対象

納付した国民年金の保険料は全額、社会保険料控除の対象になります。生命保険料控除には上限がありますので、それと比べても優遇されています。

平成26年度の1年間の保険料は、15,250円×12ヶ月=183,000円です。所得税率が10%とすると、18,300円になります。この金額は本来所得税として徴収されるものですが、免除されます。つまり、1ヶ月分の保険料は国に払ってもらっているのと同じです。

保険料と年金額の比較

現在の制度で保険料と年金額を比較すると次のようになります。

40年間で負担する国民年金の保険料老齢基礎年金
183,000円×40年=7,320,000円772,800円/年

物価の上昇や将来の制度変更などは無視して、ものすごく単純に計算すると、約10年間、老齢基礎年金を受け取れば、元が取れることになります。民間の金融機関の個人年金で、こんなに有利な商品はないはずです。

障害基礎年金と遺族基礎年金

障害基礎年金は、障害等級2級で772,800円/年、障害等級1級で966,000円/年の金額を受け取ることができます。また、遺族基礎年金は772,800円/年です。

遺族基礎年金を受けられるのは、18歳未満の子のある妻又は18歳未満の子という制限がありますが、このように老齢だけでなく、万一の障害や死亡についての保障もあります。

物価スライド

国民年金制度には「物価スライド」という仕組みがあります。

例えば、今から約40年前(昭和47年)の初任給の平均は約5万円でした。現在の初任給の平均は約20万円ですので、当時と比べて物価が4倍ぐらい上昇したことになります。

つまり、当時5万円をタンス預金していたとしても、実質的な価値としては4分の1に減ってしまったことになります。

こういった物価の変動に応じて、年金額の実質的な価値が維持されるように、「物価スライド」によって年金額が改定されます。予期しない物価の上昇にも安心できます。

国民年金デメリット【損】

国民年金制度が破綻して、年金が支払われなくなると、損することになります。確かに人口推移を見ると財源が厳しくなることは確実ですが、将来、年金が支払われないような状況になるかどうかは分かりません。

万一、国民年金制度が破綻したときは、国レベルで問題を抱えていることになりますので、そのときは民間の金融機関も機能していないように思います。

以上のように、損得からいっても、まずは国民年金の保険料を納付しながら、個人でも備えておくのが賢明かと思います。

国民年金をもっと有利に活用

付加年金

国民年金の独自給付として付加年金という制度があります。

付加保険料は月額400円で、通常の国民年金の保険料に追加して納付します。そして、将来受け取る付加年金は年額で、「200円×付加保険料納付月数」です。

例えば、10年間付加保険料を納付した場合の保険料は、48,000円(=400円×12ヶ月×10年)になります。そして、将来受け取る付加年金は年額で、24,000円(=200円×12ヶ月×10年)になります。

つまり、2年間付加年金を受け取ると、元が取れることになります。額はわずかですが、とてもお得だと思います。ただし、付加年金には物価スライドがありません。

保険料の前納制度

国民年金の平成26年度の保険料は、1ヶ月15,250円ですが、1年分をまとめて支払う前納制度があります。本来、1年間の保険料の合計は183,000円ですが、口座振替で1年分を前納すると179,160円となって、3,840円安くなります。

銀行に預けていてもこんなに利子は付かないので、余裕がある場合は前納制度を利用するといいでしょう。

また、6ヶ月分の前納制度がありますし、平成26年度からは2年分の前納制度が開始され、14,800円(2年分の保険料と比較)も安くなります。

(2003/1作成)
(2014/5更新)