職業安定法の概要

職業安定法の概要

職業安定法とは、労働市場における基本的なルールを定めた法律で、一般的には余り馴染みがない法律かもしれません。

職業安定法では、主に、次の3つの内容について定められています。

  1. 職業紹介
  2. 労働者の募集
  3. 労働者供給

職業安定法の概要について紹介いたします。

職業紹介とは

まず、1つ目の「職業紹介」とは、求人と求職の申込みを受けて、求人者(企業)と求職者(個人)の間に雇用関係が成立するようあっせんすることを言います。

政府が無料で行う職業紹介事業として、ハローワーク(公共職業安定所)があります。また、ハローワーク以外にも、民間で職業紹介事業を行っている事業者があります。

労働者の募集とは

次に、2つ目の「労働者の募集」とは、労働者を雇用しようとする者(求人者)が、自ら又は他人(他社)に委託して、労働者となろうとする者(求職者)に対して、勧誘することを言います。

労働者供給とは

最後に、3つ目の「労働者供給」とは、供給契約に基づいて、労働者を他人(他社)の指揮命令を受けて労働に従事させることを言います。

「労働者供給」と「労働者派遣」は似ていますが、職業安定法第4条第6項により、労働者派遣法に規定する「労働者派遣」に該当するものは、労働者供給には含まないことになっています。

なお、労働者派遣法において、「労働者派遣」とは、「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させること」とされています。

職業安定法の基本原則

求職者は、職業を自由に選択することができ、また、人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、従前の職業、労働組合の組合員であること等を理由として、差別的な取扱いを受けないことが保障されています。

労働条件の明示

ハローワークや職業紹介事業者、労働者の募集を行う者、労働者供給事業者は、それぞれ、職業紹介、労働者の募集、労働者供給を行う際は、労働者になろうとする者(求職者)に対して、労働条件を明示しないといけないことが定められています。

労働条件として明示が義務付けられているのは、具体的には、その者が従事する業務の内容、労働契約の期間、勤務地、勤務時間、賃金等です。

求職者の個人情報の取扱い

ハローワークや職業紹介事業者、労働者の募集を行う者、労働者供給事業者は、それぞれ、労働者になろうとする者(求職者)の個人情報を収集、保管、使用する際は、その業務の目的の達成に必要な範囲内で、求職者の個人情報を収集、保管、使用しないといけません。ただし、本人の同意がある場合、その他正当な事由がある場合は、この限りではありません。

職業紹介事業者

職業紹介事業者は、求人の申込みがあったときは、全て受理しないといけません。求職の申込みがあったときも同じで、全て受理しないといけません。ただし、法令違反がある場合は受理しないことができます。

そして、職業紹介事業者は、求職者に対しては、その能力に適合する職業を紹介し、求人者に対しては、その雇用条件に適合する求職者を紹介するよう努めるものとされています。

有料職業紹介事業の許可

有料の職業紹介事業を行う者は、厚生労働大臣の許可を受けないといけません。

また、許可に関して、許可の基準、許可の欠格事由、許可証、許可の条件、許可の有効期間、変更の届出、許可の取消し、等が職業安定法で定められています。

更に、有料職業紹介事業に関して、名義貸しの禁止、取扱い職種の範囲の届出、取扱い職種の範囲の明示、職業紹介責任者、帳簿の備付け、事業報告等について定められています。

有料職業紹介の手数料

有料で職業紹介を行う場合は、受け取る手数料について、細かい制限が定められています。有料職業紹介事業者は、職業紹介に関して、求人者から、

  1. 厚生労働省令で定められた手数料
  2. あらかじめ厚生労働大臣に届け出た手数料

以外の実費その他の手数料や報酬を、いかなる名義であっても受けることが禁止されています。

また、有料職業紹介事業者は、求職者から手数料を徴収することが禁止されています。ただし、例外的に、芸能人、モデル、科学技術者、経営管理者、熟練技能者で、その求職者の利益のために必要と認められるときは、一定の範囲内の手数料を徴収することができます。

通常、求職者は無料で職業紹介事業者を利用することができ、求人者が職業紹介事業者から紹介を受けて採用した場合は、年収の約30%の手数料が求められます。

職業の範囲

有料職業紹介事業者は、港湾運送業務に就く職業、建設業務に就く職業を求職者に紹介することが禁止されています。これ以外の職業紹介は可能です。

労働者の募集

自社で直接労働者の募集を行う場合は、余り制限はありません。しかし、他人(他社)に委託して労働者の募集を行う場合は、次のような制限が定められています。

労働者を雇用しようとする者(求人者)から委託を受けて、有料で労働者の募集を行う場合は、厚生労働大臣の許可を受けないといけません。また、その報酬の額についての認可も受けないといけません。無料で労働者の募集を行う場合は、厚生労働大臣に届け出ることとされています。

労働者の募集を行う者は、募集に応じた労働者から報酬を受けることが禁止されています。また、労働者の募集を行う者は、自社の社員に賃金以外の報酬を与えること、労働者の募集を委託した者に許可を受けた報酬以外の報酬を与えることが禁止されています。

労働者供給

労働者供給事業を行うこと、労働者供給事業を行う者から供給された労働者を労働させることが禁止されています。ただし、労働組合が厚生労働大臣の許可を受けて、無料で労働者供給事業を行うことは認められています。

(2014/7作成)