最低賃金法
最低賃金法
最低賃金法とは、賃金の最低限度額を定めた法律で、会社は最低賃金額以上の賃金を支払わないといけません。
もし、賃金が最低賃金に達していない場合は、会社は最低賃金との差額をさかのぼって支払わないといけません。
また、最低賃金より低い賃金を支払うことについて、社員と合意していたとしても、法律(「最低賃金法」)が優先されますので、そのような合意は無効になります。
最低賃金の種類
最低賃金には、「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。
地域別最低賃金と特定(産業別)最低賃金の両方が適用される場合は、高い方の最低賃金が優先されます。
地域別最低賃金
地域別最低賃金は、都道府県ごとに定められています。パートタイマーやアルバイト、臨時従業員、派遣社員等の呼称や雇用形態に関係なく、全ての労働者に対して適用されます。
本社以外に支店等がある場合は、それぞれの支店等の所在地の最低賃金が適用されます。また、派遣社員については、派遣先企業の最低賃金が適用されます。
特定(産業別)最低賃金
特定(産業別)最低賃金は、特定の産業ごとに定められていて、この特定の産業は都道府県ごとに異なります。
ただし、次の者には特定(産業別)最低賃金は適用されません。これらの者については地域別最低賃金が適用されます。
- 18歳未満又は65歳以上の者
- 雇入れ後一定期間未満で技能習得中の者
- その他当該産業に特有の軽易な業務に従事する者
この具体的な基準や内容は、特定(産業別)最低賃金ごとに定められています。
最低賃金の確認方法
最低賃金に達しているかどうかの確認方法は、次のとおりです。
時間給の場合
最低賃金は時間給で定められていますので、時間給の場合は、その時間給と最低賃金額を比較します。
日給の場合
日給を1日の所定労働時間で割ると、1時間当たりの賃金が算出されますので、その金額と最低賃金額を比較します。
月給の場合
月給を「1ヶ月平均所定労働時間」で割ると、1時間当たりの賃金が算出されますので、その金額と最低賃金額を比較します。
例)1日の所定労働時間が8時間、1年間の所定労働日数が255日とすると、8時間×255日=2,040時間が、1年間の所定労働時間となります。これを12ヶ月で割ると「1ヶ月平均所定労働時間」は、170.0時間になります。
出来高払制の場合
出来高払の賃金をその賃金計算期間の総労働時間で割ると、1時間当たりの賃金が算出されますので、その金額と最低賃金を比較します。
出来高払制の場合の分母は所定労働時間ではなく、時間外労働の時間も含めた総労働時間で計算します。その出来高は所定労働時間だけを費やして出した成果ではなく、時間外労働の時間も含めた総労働時間を費やして出した成果であるためです。
時間給、日給、月給、出来高払制を組み合わせて支払っている場合
例えば、時間給で基本給を支払って、これとは別に手当を月額で決めて支払っているような場合があります。このような場合は、それぞれ1時間当たりの賃金に換算して、それらを合計した金額と最低賃金額を比較します。
最低賃金の対象とならない賃金、手当
最低賃金の対象となるのは基本的な賃金に限られていて、次の賃金、手当は除外して計算します。
- 臨時に支払われる賃金(結婚祝金など)
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
- 時間外勤務手当
- 休日勤務手当
- 深夜勤務手当
- 精皆勤手当、通勤手当、家族手当
また、定額の残業手当など、時間外勤務手当や休日勤務手当等として支払っている手当は、3.〜5.に該当しますので、これらも除外して計算します。
最低賃金の減額の特例
一般の社員より著しく労働能力が低かったりして、最低賃金を一律に適用するとかえって雇用機会を狭める場合があります。このため、次の者については、最低賃金の減額の特例が認められています。ただし、個別に都道府県労働局長の許可を受けることが条件になっています。
- 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
- 試の使用期間中の者
- 基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める者
- 軽易な業務に従事する者
- 断続的労働に従事する者
最低賃金の周知義務
会社は、次の内容を常時作業場の見やすい場所に掲示する等の方法によって周知しないといけません。
- 最低賃金の適用を受ける社員の範囲
- 最低賃金額
- 算入しない賃金
- 効力発生年月日
地域別最低賃金は、賃金や物価等の動向に応じて、毎年10月頃に改定されます。
違反、罰金
地域別最低賃金以上の賃金を支払わない場合は50万円以下の罰金、特定(産業別)最低賃金以上の賃金を支払わない場合は30万円以下の罰金が定められています。
(2015/4作成)