リファラル採用とは
リファラル採用とは
新しい採用手段として、「リファラル採用」が注目されています。「リファラル採用」とは、自社の従業員に友人や知人を紹介・推薦してもらう採用手段のことを言います。
既にアメリカでは主要な採用手段として普及していて、日本でもベンチャー企業を中心に導入する企業が増えています。
コネ採用や縁故採用と似ていますが、これらは会社の役員や取引企業から依頼され、強制的に受け入れざるを得ないケースが多いです。
リファラル採用の場合は、会社の採用基準に照らして選考を行いますので、採用に至らないケースもあります。
リファラル採用のメリット
採用コストを削減できる
求人広告の掲載費用、人材紹介企業の利用料等が掛かりませんので、採用コストを大幅に削減できます。
定着率が向上する
入社する前に経営方針、社風、業務内容などについて、従業員から生の声を聴いていますので、ミスマッチが生じにくいです。また、従業員と友人の場合は似たタイプが多く、職場に馴染みやすいです。ミスマッチを理由とする退職者を減らすことができ、定着率が向上します。
優秀な人材と接触できる
優秀な人材は失業しても短期間で再就職します。転職市場では、多くの会社が欲しがるような人材は見付けにくいです。通常、リファラル採用は他社で勤務している人に働き掛けますので、転職市場にいない優秀な人材と接触できます。
リファラル採用のデメリット
人間関係が悪化する
従業員に紹介・推薦してもらったとしても、不採用とする場合があります。従業員とその友人の関係が悪化する恐れがあり、従業員は会社に対して不信感を持つかもしれません。人間関係の悪化を心配して、不採用にしにくいと考える経営者もいます。
また、採用に至った場合でも、プライベートでは対等な関係だったのに、職場では上司と部下の関係になったり、一方が活躍して、もう一方が活躍できなかったりして、気まずくなることがあります。
退職すると悪影響が生じる
リファラル採用で入社した後に、一方の従業員が退職することがあります。退職理由によりますが、残されたもう一方の従業員のモチベーションが低下したり、呼応して退職する恐れがあります。
多様性を妨げる
リファラル採用を続けていると、類は友を呼ぶという言葉どおり似たタイプの従業員ばかりになって、多様性を妨げる恐れがあります。そうなると、新しい発想が生まれにくくなって、競争力が低下します。
入社まで時間が掛かる
通常、リファラル採用では他社で勤務している人に転職を持ち掛けますので、入社するまで時間が掛かることがあります。直ちに欠員を補充したいような場合には向いていません。
リファラル採用の制度設計
報酬の支給
リファラル採用で入社したときに、従業員への報酬の支給について決める必要があります。それぞれの会社の考えで良いのですが、友人を勧誘するための食事代や時間を会社のために使ってくれたと考えると、その費用ぐらいは支払っても良いのではないでしょうか。
ただし、報酬を支払う場合でも、個人的には多くても20万円以下が望ましいと思います。高額にしても効果は限定的ですし、報酬を受け取ることで友人を売ったと罪悪感を持つ者もいます。
求める人材像
会社が求める人材像が曖昧なまま紹介・推薦されると、不採用になる可能性が高まります。事前に、会社が求める人材像や性格、技能、経験等を明確に具体的に伝えておかないといけません。
また、募集している部門やポジション等によって異なると思いますので、その都度、更新し続ける必要があります。待遇についても、可能な範囲で明らかにしておくべきです。
問い合わせ窓口の設置
紹介したい人がいたとき、確認したいことがあったときに、どこに問い合わせるのか分からないと、「面倒だからやめておこう」と考えます。問い合わせ窓口を設置して、そこでリファラル採用を主導するのが良いでしょう。
リファラル採用制度導入のポイント
少人数で始める
いきなり全従業員を対象にすると混乱するかもしれませんので、最初は、将来の幹部候補など、会社が信頼している従業員を6人ぐらい選抜して進めるのが良いです。そこで改善点を洗い出してから、徐々に対象範囲を広げていきます。後々にはアルバイトの採用にも使えます。
紹介したい会社にする
会社に対して不満を持っている従業員が、友人や知人を紹介することはありません。紹介したくなるような会社にすることが、リファラル採用に欠かせない最重要ポイントです。
会社によって課題は様々ですが、年次有給休暇の取得率を高めたり、残業時間を減らしたり、できることから1つ1つ実行していけば、従業員満足度が高まり、リファラル採用を活用できるようになります。
もし、課題が分からない場合は、直接従業員に聴いたり、紹介を断った友人や知人が話していた内容を参考にすると良いでしょう。
継続的に働き掛ける
「リファラル採用を導入した」と従業員に説明しただけでは、直ぐに忘れられてしまいます。友人や知人を勧誘して、会社に紹介・推薦するのは面倒なことです。
定期的に、個々の従業員に「会社に合いそうな人を紹介して欲しい」と声を掛けたりして、会社が期待し続けていることを伝える必要があります。リファラル採用は短期間で成果が出るものではありません。
他の採用方法と組み合わせる
リファラル採用にはいくつかデメリットがありますので、他の採用方法と組み合わせて、全部をリファラル採用とすることは避けた方が良いです。
正しく伝えてもらうよう注意する
次の2点について、従業員から紹介・推薦を考えている人に、正しく伝えるよう注意する必要があります。
- 会社の良い所も悪い所も正直に話すこと
- 不採用のケースがあること
いきなり採用面接をしない
求職中でない限り、紹介された人は入社したいという意思は強くないはずです。会社の実情を知ってもらうために、採用面接をする前に、飲食店等で面談の機会を設けるのが良いでしょう。会社に呼んで職場の雰囲気を感じてもらうのも良いと思います。
(2021/5作成)