定年後の再雇用・高年齢者活用のポイント

高年齢者雇用の現状と割合

日本は世界でも有数の高齢社会となっていて、総人口に占める65歳以上人口の割合は約29%に達しています。高年齢者の就業率も上昇していて、65歳以上の就業者数は900万人を超えています。

就業者全体に占める65歳以上の割合も年々増加していて、多くの企業で高年齢者は重要な戦力となっています。今後も労働力人口の減少が見込まれますので、高年齢者の活用は企業経営にとって重要課題といえます。

70歳就業確保措置の内容

高年齢者雇用安定法によって、本人が希望すれば65歳まで雇用を継続することが義務付けられています。また、2021年4月の法改正によって、本人が希望すれば70歳まで働けるようにすることが、企業の努力義務として定められました。

努力義務として想定されている措置は、次のいずれかです。

人手不足の解消と高年齢者採用のメリット

高年齢者を雇用している会社でも、定年退職後に継続して再雇用しているケースが多く、高年齢者を外部から新規で雇用しているケースは一般的ではありません。人手不足が深刻化していますが、積極的に高年齢者を採用したいという会社は、今はまだ少数派です。

中小企業が若年層の採用にこだわっても、良い人材を獲得することは困難です。「60歳以降も仕事をしたい」「65歳以降も仕事をしたい」という人が増えています。高年齢者の獲得競争が始まる前に、受け入れ体制を整えた会社は、人手不足の問題を解消できる可能性があります。

高年齢者の働き方と役割分担

高年齢者になると、勤務意欲、能力、経験、健康状態、家族の介護、生活環境などの個人差が大きくなりますので、一律の働き方しか認めていないと受け入れられない人が出てきます。個々の高年齢者の実情に合わせて、臨機応変に対応できる中小企業の方が、高年齢者を活用しやすいです。

会社から定年退職する予定の従業員に、年金制度等について説明をした上で、継続雇用を希望するか、どのような働き方を希望するか、意向を確認すると、「これまでどおり働きたい」という人、「補助的な仕事で短時間勤務に変更したい」という人、に分かれると思います。

「これまでどおり働きたい」という場合は、従来と同じ業務を引き続き担当してもらうことになります。60歳代前半はこのパターンが多いです。

役職者として勤務していた者については、そのまま引き継ぐこともありますが、役職を外して一担当者として勤務してもらったり、配属を変えたり、会社の状況等に応じて検討することになります。

また、高い技能や専門知識等を持っている者については、OJTで若手を指導したり、マニュアルの整備や手直しをしたりする役割を与えることも考えられます。

プライベートの事情等によっては、担当業務は同じままで、出勤日数や勤務時間を減らしたいという希望が出ることもあります。

一方、フルタイムでバリバリ働くのは難しいけれども、「補助的な仕事で短時間勤務に変更したい」という人は、65歳以降になると増えてきます。働くことが健康に繋がったり、生きがいになったりするという高年齢者が増えてくると思われます。

定年後再雇用の賃金決定方法

定年後に再雇用するタイミングで賃金を引き下げる企業は少なくありませんが、高年齢雇用継続給付が縮小されましたので、従来のように給付制度を前提とした賃金設計は見直しが必要になっています。

補助的な業務に変更してそれに応じた賃金を支払うのであれば、従業員から納得を得やすいですが、同じ業務を継続する場合は、職責や役割を軽減したとしても、それ以上に賃金を減額すると、モチベーションが低下する恐れがあります。

再雇用後の賃金については、担当業務、責任の程度、勤務日数、勤務時間などを考慮して決定することが重要です。しかし、年功賃金で積み上がった水準を維持することは困難という会社が多いです。定年前の割高な賃金を見直したり、賃金の決定方法をどうするかが課題になります。

また、定年後に再雇用した者についても、パートタイム・有期雇用労働法に基づいて、不合理な待遇差が禁止されます。賃金、賞与、福利厚生等について、職務内容や責任の程度、配置の変更範囲などを考慮して、合理的な説明ができるようにしておく必要があります。

高年齢者が働きやすい職場環境の整備

家族の介護が必要だったり、プライベートを重視する働き方を望む高年齢者は多いです。また、年齢を重ねると体力、視力、聴力等の身体機能が低下します。高年齢者を活用、戦力化するためには、高年齢者が働きやすい職場環境を整備することが大事です。

短時間勤務制度

家庭の事情や体力的な問題から、フルタイムで勤務をすることは難しいけれども、短時間勤務なら可能というケースがあります。高年齢者を外部から採用しようとする際は、フルタイムより短時間勤務で募集した方が集まりやすいと思います。フレックスタイム制も、そのような高年齢者の要望に応えられる制度の1つです。

多能工の推進

多能工や複数担当制を導入すると、誰かが休んだときでも、業務が滞ることはありません。例えば、3人がそれぞれの担当を決めて仕事をするより、短時間勤務の5人が3種類の仕事を処理できるよう訓練をすれば、より強い組織になります。

労災事故の予防

休業4日以上の労災事故の発生率は、60歳以上の高年齢者は、20歳~39歳の者と比較して、2倍以上になっています。また、高年齢者が被災したときは、重傷化する傾向があります。高年齢者の労災事故を予防するために、次のような対策が考えられます。

高年齢者に優しい職場はすべての人に優しい

短時間勤務等の様々な働き方を認めたり、事故予防の対策を考えたり、高年齢者に優しい職場は、女性、障害者、外国人にも優しい職場で、全ての従業員にとって働きやすい職場です。

上で列挙したのは一例で、それぞれの職場で求められる対策は異なります。高年齢者に優しい職場環境にするにはどうすれば良いか、改善した方が良い所はないか、直接、繰り返し、高年齢者に話を聴くことが大事です。

エイジフレンドリー補助金と高齢者の安全対策

高年齢者の労働災害の防止を目的として、エイジフレンドリー補助金制度があります。

転倒防止設備、照明改善、作業負担軽減設備等を導入した企業は、費用の一部について補助を受けられる場合があります。制度は毎年度見直されますので、最新情報を確認して活用を検討すると良いでしょう。

(2021/8作成)
(2026/3更新)


社会保険労務士 木下貴雄

執筆者:社会保険労務士 木下貴雄【 登録番号 第27020179号 】
就業規則を専門とする社会保険労務士です。メールを用いた関連サービスは20年以上の実績があり、全国の中小零細企業を対象に、これまで900社以上の就業規則の作成・変更に携わってきました。