労働条件自主点検表

労働条件自主点検表とは

労働基準監督署による調査が行われる前に、会社に「労働条件自主点検表」という書類が郵送されることがあります。

この「労働条件自主点検表」に回答をして、指定された日時に労働基準監督署に訪問するよう求められます。

会社が自主点検を実施して、自主的に改善をして、その結果報告書を労働基準監督署にFAX又は郵送するよう求められるケースもあります。

もし、労働基準監督署への訪問を拒否すると、違反をしているからではないかと疑われて、より厳しい調査が行われることも考えられます。やむを得ない理由があって指定された日時に訪問できないときは、労働基準監督署に電話をして訪問する日時を調整してください。

労働基準監督署による調査

労働基準監督署に訪問をして要する時間は、個別の調査に約1時間、調査の前に説明会がある場合は説明会に約1時間です。

予定が続々と決まっていますので、「労働条件自主点検表」に基づいた、基本的な事項の調査しか行われません。そのため、労働基準監督署の職員が1社1社会社に訪問して調査する場合と比べると、数をたくさん処理できます。

そして、回答に違法となる部分があれば、その場で職員が是正勧告書を作成して、会社に交付します。会社は指定された是正期日までに是正をして、労働基準監督署に報告することになります。

持参する書類

労働基準監督署に訪問する際は、次の書類の持参を求められます。

労働条件自主点検表に虚偽の回答をしても、労働基準監督署の職員には通用しないと考えておくべきです。

もし、虚偽の回答が発覚すると、悪質な会社と判断されて、より厳しい本格的な調査を受けることになります。正直に回答していれば、是正勧告を受けることはあっても、書類送検されることはありません。

点検項目

労働条件自主点検表で点検をする主な項目は次のとおりです。地域や年度によって項目は少し変わりますが、ぜひ、会社に郵送される前に整備してください。

1.労働条件の明示

労働契約を締結するに当たり、労働時間、賃金、退職(解雇の事由を含む)、安全衛生等の労働条件を労働者に対し明示していますか?
この場合において、労働時間、賃金等に関する事項について書面を交付していますか?

従業員を採用する際は、従業員に労働条件を明示しないといけません。特に、労働契約の期間、労働時間、賃金、退職に関する事項については、書面を交付することが義務付けられています。

2.就業規則

就業規則(労働時間、休日、休憩、休暇、賃金の定め方及び支払方法、退職等、労働条件の具体的細目を定めた規則)を作成していますか?
また、就業規則の内容が実際の勤務の状況に合っていますか?

従業員数(パートタイマー等も含みます)が10人以上の会社は、就業規則を作成して、労働基準監督署に届け出ることが義務付けられています。また、就業規則の内容は会社の実態に合っていないといけません。

パートタイマーがいる場合は、パートタイマーにも正社員用の就業規則を適用するか、パートタイマー用の就業規則を作成して労働基準監督署に届け出ないといけません。

3.所定労働時間

1週の所定労働時間(休憩時間、所定時間外労働時間は含みません)は、何時間に定めていますか?

所定労働時間は週40時間以下でないといけません。ただし、特例措置として、従業員数が10人未満の商業、映画演劇業、保健衛生業、接客娯楽業については、週44時間以下となっています。

4.1ヶ月単位の変形労働時間制

1ヶ月単位の変形労働時間制を採用している場合に、@各日の始業時刻及び終業時刻、A所定休日、B変形期間の起算日、が就業規則で定められていますか?

1ヶ月単位の変形労働時間制を採用する場合は、これらの事項を就業規則に規定しないといけません。

5.1年単位の変形労働時間制

1年単位の変形労働時間制を採用している場合に、労使協定を締結し、所轄労働基準監督署長へ届け出ていますか?

1年単位の変形労働時間制を採用する場合は、労使協定を締結して、労働基準監督署に届け出ることが義務付けられています。

6.時間外労働、休日労働に関する協定届

法定労働時間を超える時間外労働及び法定休日における休日労働を行わせる場合に、時間外労働、休日労働に関する協定を締結し、所轄労働基準監督署長に届け出ていますか?
また、この協定の締結に当たっては、「時間外労働の限度に関する基準」に適合したものとなるようにしていますか?

法定の時間外労働及び休日労働を行わせる場合は、従業員数に関係なく、「時間外労働の限度に関する基準」に適合した36協定を締結して、労働基準監督署に届け出ることが義務付けられています。

なお、「時間外労働の限度に関する基準」は、1年単位の変形労働時間制の対象となる従業員については、1ヶ月につき42時間、1年につき320時間となっています。1年単位の変形労働時間制の対象ではない従業員については、1ヶ月につき45時間、1年につき360時間となっています。

7.所定休日

所定休日をどのように定めていますか?

少なくとも毎週1日、又は、4週間に4日の休日を与えないといけません。4週間に4日の休日を与えることとする場合は、就業規則に4週間の起算日(4週間の最初の日)を規定する必要があります。

8.年次有給休暇

年次有給休暇についてはどのように取り扱っていますか?

勤続年数に応じて、次の日数の年次有給休暇を与えないといけません。

勤続年数0.5年1.5年2.5年3.5年4.5年5.5年6.5年以上
付与日数10日11日12日14日16日18日20日

ただし、1週間の所定労働時間が30時間未満で、1週間の所定労働日数が4日以下のパートタイマー等については、比例付与で与える方法が認められています。

9.賃金控除

賃金の一部を控除しているものは、法令に定めのあるもの(税金、社会保険料等)のみですか?
また、法令に定めがあるもの以外のものを賃金から控除して支払う場合、社宅、寮、その他福利厚生施設の費用等、事理明白なものについてのみを控除の対象としていますか?

税金と社会保険料以外のものを賃金から控除して支払う場合は、労使協定を締結しないといけません。この労使協定の届出は不要です。

10.割増賃金

時間外労働、休日労働又は深夜労働を行わせた場合に、その時間に対する割増賃金は、どのように支払っていますか?

法定の時間外労働については2割5分以上の割増率、法定の休日労働については3割5分以上の割増率、深夜労働については2割5分以上の割増率で賃金を支払わないといけません。

また、割増賃金を定額で支払っていたりして、上限の時間や金額を設定している場合であっても、実際に上限の時間や金額を超えて勤務したときは、その超えた時間に対して割増賃金を支払わないといけません。

割増賃金の基礎となる賃金から除外できるのは、@家族手当、A通勤手当、B別居手当、C子女教育手当、D住宅手当、E臨時に支払われる賃金、F1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金、の7つだけです。

割増賃金の基礎となる1時間当たりの賃金額は、それぞれ次の方法で計算します。

  1. 時間給については、その時間給額
  2. 日給については、日給額÷1日の所定労働時間数(日によって所定労働時間数が異なる場合は、1週間における1日の平均所定労働時間数)
  3. 月給については、月給額÷1ヶ月の所定労働時間数(月によって所定労働時間数が異なる場合は、1年間における1ヶ月の平均所定労働時間数)

11.健康診断

定期健康診断を実施していますか?

毎年1回定期に健康診断を行うことが義務付けられています。なお、深夜業等の有害業務に従事する従業員に対しては、6ヶ月以内ごとに1回定期に健康診断を行わないといけません。

また、定期健康診断を行った従業員については、健康診断個人票を作成して、保存しないといけません。

12.最低賃金

最低賃金額以上の賃金を支払っていますか?
事業場で最も低い者の額は、1時間あたりに換算していくらですか?

最低賃金額以上の賃金を支払わないといけません。なお、最低賃金には、都道府県内の全労働者に適用される地域別最低賃金と都道府県内の特定産業の労働者に適用される特定最低賃金があります。

最低賃金には、次の賃金は含まれません。

  1. 臨時に支払われる賃金(結婚手当等)
  2. 1月を越える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
  3. 所定外、休日、深夜の労働に対して支払われる割増賃金
  4. 精皆勤手当、通勤手当、家族手当

13.有期労働契約(期間を定めて締結された労働契約)

有期契約労働者を使用していますか?
また、有期契約労働者に対して、当該契約の期間の満了時における当該契約に係る更新の有無、更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示していますか?

期間を定めて雇用する場合は、有期労働契約を締結(更新)する際に、@更新の有無、A更新する場合又はしない場合の判断の基準、を明示しないといけません。

14.就業規則、時間外労働協定等の周知

就業規則、時間外労働協定等法令で定めているものを、常時各作業場の見やすいところに掲示するなどにより、労働者に周知していますか?

就業規則や36協定等の労使協定は、職場の書棚に備え付けたりして、従業員が見たいと思ったときにいつでも見られる状態にしておかないといけません。

15.時間単位年休

時間単位の年次有給休暇の制度を設けていますか?
また、時間単位の年次有給休暇の制度を設けている場合には労使協定を締結していますか?

時間単位の年次有給休暇の制度を設ける場合は、労使協定を締結しないといけません。

16.休憩時間

休憩時間をどのように定めていますか?

労働時間(実働時間)が、6時間を超えるとき(8時間まで)は少なくとも45分、8時間を超えるときは少なくとも60分の休憩時間を与えないといけません。

17.労働者代表の選出方法

就業規則の作成・変更に当たって、労働者の過半数を代表する者の意見を聴く場合並びに労使協定の締結に当たって、労働者の過半数を代表する者と協定している場合、代表者の選出はどのようにしていますか?

従業員の過半数代表者は、目的を明らかにして実施される投票、挙手、話し合い、回覧等の方法により選出しないといけません。会社が一方的に指名したり、親睦会等の代表者が自動的に兼任するような方法は認められません。また、管理監督者は過半数代表者になることはできません。

(2017/12作成)