個人型確定拠出年金(iDeCo【イデコ】)
確定拠出年金とは
全ての人に対して加入が義務付けられている公的年金として、国民年金(1階部分)や厚生年金(2階部分)があります。
確定拠出年金は、その上乗せ(3階部分)となる私的年金の1つで、平成13年から確定拠出年金法に基づいて実施されています。
私的年金としては、他には、確定給付企業年金、厚生年金基金、国民年金基金等があります。
確定拠出年金は、確定給付年金と異なり、加入者の責任で自らの年金資産を運用する制度です。運用方法は、預貯金、保険商品、投資信託等の運用商品の中から選択して、自分で決定します。複数の運用商品を選択したり、選択後に変更したりすることも可能です。
また、確定拠出年金の年金資産は個人ごとに管理されていますので、加入者が転職したり、退職したり、自営業に変わったりしても、そのまま持ち運ぶことができます。
個人型確定拠出年金の改正
確定拠出年金には、企業が掛金を拠出する“企業型”と個人が掛金を拠出する“個人型”の2種類があります。
個人型確定拠出年金に加入できるのは、これまでは、自営業者や企業年金に加入していない人に限られていましたが、平成29年1月からは、企業年金に加入している人や専業主婦(夫)も加入できるようになり、基本的に20歳以上60歳未満の全ての人が加入できるようになりました。
企業が行う事務手続き
政府もこの改正のタイミングに合わせて、個人型確定拠出年金に「iDeCo(イデコ)」という愛称を付けて普及を推進しています。
それを見た従業員が、「イデコに加入したい」と会社に言ってくるかもしれません。その場合、会社は次のような事務手続きをして協力しないといけません。
- 加入時に、証明書に必要事項を記入する。
- 年に1回、従業員の加入資格について届け出る。
- 賃金から控除して企業が掛金を払い込む場合は、企業の口座から徴収される。
- 従業員が掛金を払い込む場合は、年末調整をする。
既に企業型確定拠出年金を実施していて、同時に個人型確定拠出年金も認める場合は、規約を変更して、個人型確定拠出年金にも同時に加入できる旨を規定する必要があります。
個人型確定拠出年金のメリット
個人型確定拠出年金に加入することにより、加入者(従業員)は、次の3つの段階で税制上の優遇措置を受けられます。
- 掛金は全額所得控除の対象になります。
例えば、掛金が月額10,000円、所得税と住民税を合計した税率が20%とすると、1年間で24,000円(税率が30%とすると、1年間で36,000円)の節税効果が得られます。 - 運用益は非課税で再投資されます。
金融商品の運用益には通常約20%の税金が掛かりますが、確定拠出年金の運用益は非課税です。 - 給付金を受け取る際は税制優遇措置があります。
一時金で受け取る場合は「退職所得控除」、年金で受け取る場合は「公的年金等控除」が適用されます。
なお、専業主婦(夫)も個人型確定拠出年金に加入できるようになりましたが、所得がない場合は、掛金を拠出しても所得控除は受けられません。所得がなかったり、少ない方については、メリットは余りありません。
確定拠出年金の拠出限度額
確定拠出年金の掛金は、月額5,000円が下限になっていて、1,000円単位で自由に設定できます。ただし、掛金額の変更は、1年間(4月から翌年の3月までの間)に1回しか行えません。
掛金の上限については、加入者の種類によって、それぞれ次のように定められています。
区分 | 掛金の上限 |
---|---|
【第1号被保険者】 自営業者等(国民年金基金との合計額) | 月額68,000円 |
【第2号被保険者】 企業年金等に加入していない従業員 | 月額23,000円 |
【第2号被保険者】 企業型確定拠出年金にだけ加入している従業員 | 月額20,000円 |
【第2号被保険者】 確定給付企業年金や厚生年金基金に加入している従業員 | 月額12,000円 |
【第3号被保険者】 専業主婦等 | 月額23,000円 |
確定拠出年金の給付
確定拠出年金の給付には、@老齢給付金、A障害給付金、B死亡一時金の3種類があります。それぞれの給付を受けるためには、請求をする必要があります。これらの他に、一定の要件を満たした場合は例外的に、脱退一時金を受けることができます。
老齢給付金
老齢給付金は、原則として60歳から、年金又は一時金で受け取れます。ただし、加入していた期間によって、受給を開始できる年齢が異なります。
加入期間 | 受給開始年齢 |
---|---|
10年以上 | 60歳 |
8年以上10年未満 | 61歳 |
6年以上 8年未満 | 62歳 |
4年以上 6年未満 | 63歳 |
2年以上 4年未満 | 64歳 |
2年未満 | 65歳 |
障害給付金
障害給付金は、70歳になる前に一定の障害状態になって、その状態が続いたまま一定の期間(1年6ヶ月)が経過した場合、年金又は一時金で受け取れます。
死亡一時金
死亡一時金は、加入者が死亡した場合、遺族に対して一時金で支給されます。
確定拠出年金の注意点
個人型確定拠出年金に加入する際は、次の3点に注意することが欠かせません。加入したいという従業員には念を押しておく必要があります。
運用リスクは本人が負うこと
60歳になったときに受け取れる給付金額は、それまでの運用成績(拠出金額と運用収益の合計)によって変動します。運用商品の中には元本保証のないものもありますので、元本を下回ることがあります。
手数料が掛かること
加入時や運用期間中は口座を管理するための手数料が掛かります。また、投資信託で運用する場合は更に信託報酬も掛かります。手数料は、運営管理機関(金融機関)や運用商品によって異なります。
60歳になるまでは引き出せないこと
確定拠出年金は、老後の資産形成を目的とした制度で、税制上の優遇措置が設けられています。そのため、障害給付金や死亡一時金の支給対象にならない限り、60歳になるまでは年金資産を引き出せません。中途解約は不可能で、解約返戻金のような制度はありません。
(2019/2 作成)