賃金の端数処理

端数が生じるタイミング

毎月、賃金を計算していると、端数が生じるタイミングがいくつかあります。

認められている端数処理

労働基準法(通達)により、認められている端数処理の方法は次のとおりです。

1時間当たりの賃金額及び割増賃金額

1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に、1円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切捨て、50銭以上の端数を1円に切り上げる。

このように1円単位に四捨五入する場合は、特に就業規則(賃金規程)に記載をする必要はありません。

1ヶ月間における割増賃金の総額

1ヶ月間における割増賃金の総額に、1円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切捨て、50銭以上の端数を1円に切り上げる。

最初の方法は1時間当たりの金額を計算する場合のものですが、これは1ヶ月の割増賃金の総額を計算する場合のものです。

1円単位に四捨五入する場合は、特に就業規則(賃金規程)に記載をする必要はありません。就業規則等で特に取り決めていない場合は、1円単位に四捨五入することになります。

1ヶ月の賃金額

1ヶ月の賃金額に、100円未満の端数が生じた場合、50円未満の端数を切捨て、50円以上の端数を100円に切り上げて支払う。

なお、「1ヶ月の賃金額」とは、賃金の一部を控除する場合は控除した後の支払額のことを言います。

この方法は、賃金を現金で支払っていた時代の名残で、小銭を用意したり、間違いを防止したり、事務を簡略化するために認められている方法です。

今は銀行振り込みが主流ですので、この方法で端数処理をしている会社は少ないと思いますが、この方法で端数処理をする場合は、その旨を就業規則(賃金規程)に定める必要があります。

1ヶ月の賃金額

1ヶ月の賃金額に、1,000円未満の端数が生じた場合、その端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払う。

これも事務を簡略化するために認められている方法で、この方法で端数処理をする場合は、その旨を就業規則(賃金規程)に定める必要があります。

平均賃金

賃金の総額をその期間の総日数で除した金額(平均賃金)に、1銭未満の端数が生じた場合、その端数を切り捨てる。

例えば、賃金の総額をその期間の総日数で除した金額(平均賃金)が、8,888.8888・・・円になったとすると、少数第三位以下を切り捨てますので、8,888円88銭(8,888.88円)となります。

そして、この平均賃金を基準にして、休業手当や解雇予告手当等を計算する場合は、就業規則や賃金規程等で特に取り決めていなければ、1円単位に四捨五入することになります。

労働基準法 第24条違反

以上の方法が、通達で認められている賃金の端数処理の方法です。

これ以外の方法については、列挙した方法と比較して、従業員にとって有利な取扱いになっていれば構いません。支給する金額を切り上げたり、控除する金額を切り捨てたりする方法が考えられます。

また、1時間当たりの割増賃金を1円単位に四捨五入する方法は認められていますが、例えば、10円単位に四捨五入したりするような方法は認められません。

もし、従業員にとって不利な取扱いになっているとすると、賃金の全額支払の原則に抵触し、労働基準法第24条に違反していることになります。

(2016/9作成)