GビズIDとは

電子申請の義務化

社会保険(健康保険・厚生年金保険)や労働保険(雇用保険・労災保険)では、従業員の入退社があった場合など様々なケースで届出が義務付けられていますが、届出書類は紙に印刷して郵送している企業が多いと思います。

その一方で、インターネットを利用した電子申請の利用が増加していて、2020年4月から、大企業に対して(事業年度の開始日以降)、一部の届出をするときは電子申請で行うことが義務付けられました。

資本金等が1億円を超えている法人は、大企業として取り扱われます。労働基準法では中小企業に該当するかどうかは、「資本金」と「従業員数」の両方を基準にしていますが、電子申請の義務化に関しては、従業員数は条件に含まれていません。従業員数が少なくても、資本金等が1億円を超えている場合は電子申請が義務付けられます。

義務付けられる届出書類

大企業に対して、電子申請による届出が義務付けられている書類は、次のとおりです。

社会保険(日本年金機構)

雇用保険(ハローワーク)

労災保険(労働基準監督署)

社会保険と労働保険の全ての届出を電子申請で行わなければならないということではありません。また、社会保険の資格取得届や資格喪失届等は、ここには入っていませんが、電子申請による届出は可能です。

e−Gov電子申請

電子申請を行う手段として、「e−Gov電子申請」があります。e−Gov電子申請を利用する場合は、会社の代表者印(実印)に相当する「電子証明書」を取得する必要があります。

電子申請自体は無料ですが、電子証明書は認証局が発行することになっていて、取得費用が掛かります。取得費用は認証局によって異なり、1年につき約1万円です。電子証明書には有効期限が設定されています。e−Gov電子申請が利用可能な認証局は、次のとおりです。

GビズID

電子申請をする場合は、従来は「e−Gov電子申請」しか選択肢がありませんでしたが、2020年4月から、「GビズID」でも電子申請が行えるようになりました。「e−Gov電子申請」と2つの制度が併存することになります。

GビズIDは電子証明書が不要で、無料のIDとパスワードで利用できます。今後は、GビズIDで利用できる行政サービスを拡大していくことが計画されています。

GビズIDで届出が可能な書類

社会保険と労働保険の分野で、現在、GビズIDで届出が可能な書類は次のとおりです。

社会保険(日本年金機構)

雇用保険(ハローワーク)

届出が可能な書類は限られていて、大企業に対して、電子申請による届出が義務化された書類のうち、次の書類が含まれていません。

これらは「e−Gov電子申請」でしか手続きができませんので、現時点では、大企業は「e−Gov電子申請」を利用するしかなく、有料の電子証明書を取得する必要があります。

電子申請のメリット

電子申請による届出は、義務付けられていない中小企業にも様々なメリットがあります。

  1. 郵送の作業が不要ですので、事務作業の効率化、コストダウンが期待できます。GビズIDを利用すれば無料です。
  2. オンラインで行政機関に届きますので、迅速に処理されます。
  3. 24時間365日、いつでも申請が可能です。
  4. 会社以外の場所から申請が可能です。

現在、電子申請が義務付けられているのは大企業だけですが、デジタル化は既定路線ですので、将来は中小企業にも義務化が拡大される可能性が高いです。

GビズIDの発行

GビズIDには3種類のアカウントがあります。「エントリー」は、オンラインで即日発行されます。電子申請を行う場合は、次の手順で「プライム」を取得する必要があります。

  1. 法人の場合は法人番号等を入力
  2. GビズIDの申請書をダウンロード
  3. 登録印鑑(代表者印)で押印
  4. 印鑑証明書を添付して郵送
  5. 承認のお知らせがメールで届きます

「プライム」は、代表取締役などの代表者に割り当てられるアカウントです。「メンバー」も電子申請が可能で、社内の担当者に割り当てられるアカウントです。「メンバー」のアカウントは、「プライム」が発行します。

届出作成プログラム

GビズIDで電子申請をする場合は、日本年金機構のホームページから無料で「届出作成プログラム」をダウンロードできます。

このプログラムから、社会保険と雇用保険の届出書類を作成、申請することが可能です。自動チェック機能が付いていますので、記入漏れや間違いを防止できます。離職票(離職証明書)も作成できますので、手書きで記入するより楽になると思います。

また、「届出作成プログラム」を使わないで、市販のGビズIDに対応している給与計算ソフトを介して、電子申請をする方法もあります。入力したデータを再利用できますので、効率的で、入力ミスを防止できます。

(2022/6作成)