2つの会社で勤務する場合の社会保険料

2つの会社で勤務する場合の労働保険と社会保険の保険料

同時に2つの会社で勤務することになった場合は、労働保険と社会保険の保険料はどうなるのでしょうか。

出向をして、出向元に在籍したまま出向先で勤務をする場合がありますが、その場合はこちらのページで解説しています。

このページでは、役員を兼任したり、掛け持ちしたりして、同時に2つの会社で勤務をして、2つの会社から賃金が支払われる場合について解説しています。

労働保険(労災保険)

労働保険には労災保険と雇用保険がありますが、それぞれで取扱いが異なります。

労災保険の保険料は、それぞれの会社が支払う賃金に基づいて、それぞれの会社が負担します。全額会社負担です。

なお、労災保険については、雇用保険や社会保険のような加入基準がなく、個人ごとに加入手続きをする必要はありません。勤務をすれば自動的に、全ての従業員が加入したものとみなされます。

ただし、毎年7月10日までに労働保険の年度更新をして、労働保険料(労災保険料と雇用保険料)を納付する必要があります。

なお、労災保険は従業員(労働者)に適用されるものですので、役員(取締役)には適用されません。役員(取締役)に支給する賃金(役員報酬)には、労災保険料は掛かりません。

労働保険(雇用保険)

雇用保険については、加入基準が次のように定められています。

「1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上雇用する見込みがある者」

2つの会社で勤務をして、2社とも雇用保険の加入基準を満たしていない場合は、どちらの会社も加入できません。この場合は当然、雇用保険料は掛かりません。

次に、片方の会社だけ加入基準を満たしている場合は、その会社で資格取得の手続きをします。通常の従業員と同じです。未加入の会社では雇用保険料は掛かりません。

また、アルバイトを掛け持ちしたりして、稀に両方の会社で加入基準を満たしている場合がありますが、ハローワークでは重複して雇用保険に加入できないことになっています。通常は賃金額の高い方の会社で加入します。

未加入の会社では雇用保険料は掛かりませんが、雇用保険の給付は加入している会社から支払われる賃金のみを基準にして算定されます。

なお、雇用保険は従業員(労働者)に適用されるものですので、役員(取締役)には適用されません。役員(取締役)は雇用保険に加入できませんので、雇用保険料も掛かりません。

社会保険(健康保険と厚生年金保険)の加入基準

社会保険(健康保険と厚生年金保険)については、加入基準が次のように定められています。

「1週間の所定労働時間及び1ヶ月間の所定労働日数が、正社員の1週間の所定労働時間及び1ヶ月間の所定労働日数の4分の3以上である者」

正社員の1週間の所定労働時間が40時間とすると、1週間の労働時間が30時間以上の場合に加入義務が生じます。

一般の従業員については、2つの会社で勤務をして、2社とも労働時間が1週30時間以上になることは考えにくいです。もし、両方の会社で加入義務があるとすると、労働時間が1週60時間以上になりますので、過労死の認定基準を超えてしまいます。そのような働き方は、絶対に認めるべきではありません。

ただし、500人を超える大企業では、1週間の所定労働時間が20時間以上の場合に加入義務が生じますので、可能性は少し高くなるでしょう。

また、両方の会社で役員(取締役)に就任する場合は、常勤か非常勤かがポイントになります。常勤の場合は加入義務があり、非常勤の場合は加入義務がない(加入できない)という扱いになります。

役員(取締役)は労働者ではありませんので、労働時間という考えがありません。そのため、1週30時間や1週20時間といった基準は適用されません。

現状では常勤か非常勤かを区別する明確な基準がありませんので、予め年金事務所に勤務実態等を説明して、常勤か非常勤か(加入義務があるかどうか)を確認するようお勧めいたします。後になって、さかのぼって社会保険に加入するよう指導されると、かなり面倒なことになります。

ただし、役員(取締役)でも、代表取締役として就任する場合は、原則的には常勤で加入義務があると考えられています。

社会保険(健康保険と厚生年金保険)

そして、2つの会社で勤務をして、2社とも社会保険の加入基準を満たしていない(加入義務がない)場合は、どちらの会社も加入できません。この場合は当然、社会保険料は掛かりません。

次に、片方の会社だけ加入義務がある場合は、その会社で資格取得の手続きをします。通常の従業員と同じで、特別な手続きは必要ありません。なお、未加入の会社では、資格取得の手続きはしませんので、社会保険料は掛かりません。

雇用保険は加入基準を満たしていても重複して加入できないことになっていますが、社会保険はそれぞれの会社で加入義務がある場合は重複して加入手続きをする必要があります。加入義務がある場合に加入手続きを怠っていると、さかのぼって社会保険料が徴収されます。

一般従業員については考えにくいですが、代表取締役や役員(取締役)については、子会社や関連会社で兼任する等して十分あり得ることです。「保険証を持っているから、兼任する会社では加入しない」という訳にはいきません。

二以上事業所勤務

新たに社会保険の加入義務が生じたときは、管轄する年金事務所に「資格取得届」を提出(又は事務センターに郵送)します。必要に応じて、「健康保険被扶養者(異動)届」も提出します。

それに伴って、2つの会社で社会保険に加入することになった場合は、「所属選択・二以上事業所勤務届」という書類を年金事務所に提出して、どちらか一方の会社を選択することになっています。提出先は、選択する方の年金事務所です。

また、以前から在籍している会社で健康保険被保険者証(保険証)が発行されている場合は、(どちらの会社を選択しても)整理番号が変更されますので、一旦、健康保険被保険者証(保険証)を添付して返還する必要があります。

そして、通常の資格取得の場合と同じように、2週間もすれば新しく選択した会社の健康保険被保険者証(保険証)が手元に届きます。健康保険の給付等の手続きは、選択した会社で行うことになります。

二以上事業所勤務の社会保険料

二以上事業所勤務となった場合の社会保険料の計算は、少し複雑になります。単純にそれぞれの会社で社会保険に加入したものとして処理されません。

  1. まず、それぞれの会社から支払われる報酬月額(A及びB)を合算して、標準報酬月額(Z)を決定します。
  2. この標準報酬月額(Z)に保険料率(Y)を乗じた金額が、社会保険料(健康保険や厚生年金保険の保険料)の合計金額になります。
  3. この社会保険料(Z×Y)を、それぞれの会社から支払われる報酬月額(A及びB)で按分して、それぞれの会社が社会保険料を負担します。

A社の報酬月額をA、B社の報酬月額をBとすると、それぞれの会社が負担する社会保険料は、次のようになります。

会社が納付する社会保険料は、年金事務所から自動的に引き落とされますが、会社は本人負担分の社会保険料を賃金から控除しないといけませんので、個別に計算をする必要があります。

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(2017/10作成)