年俸制と残業手当
年俸制と残業手当
年俸制を採用しているときの残業手当
年俸制を採用していても、残業手当の支払義務があります。
労働基準法には年俸制に関する規定はありません。年俸制だからといって、特別扱いされることはありません。通常どおり、労働基準法が適用されます。
年俸制というのは年額で賃金を決定しているというだけで、労働基準法上は月給制の従業員と何も変わりません。
例外的に、労働基準法でいう管理監督者に該当する従業員、裁量労働制が適用されている従業員については、残業手当の支払は不要です。年俸制かどうかは無関係です。
年俸制は、最初は労働基準法でいう管理監督者を中心に導入が進められたのですが、管理監督者については残業手当を支払わなくても構いません。
その間は良かったのですが、残業手当の支払について見落とされたまま、一般従業員にも年俸制が広まったため、年俸制の従業員には残業手当を支払わなくても良いという誤解を生んでいるようです。
年俸制の従業員にも残業手当を支払わないといけないことに気付いた会社では、「年俸には残業手当を含んでいる」と従業員に説明しているケースがあります。
そのようにしていても、残業手当としていくら支払っているのか、具体的な金額で明示していない場合は、労働基準法違反となる可能性が高いです。
残業手当に相当する金額が具体的に分からないと、労働基準法で定められている残業手当を支払っていることを確認できません。
仮に、従業員が残業手当込みの年俸であることを納得していても、労働基準監督署の調査が入ったときは是正勧告を受けることになるでしょう。
そのような状態で従業員から請求されると、残業手当を全く支払っていなかったものとして、2年前にさかのぼって残業手当を支払わされる可能性があります。
年俸制の場合も定額の残業手当と同じように、年俸の内、残業手当に相当する金額がいくらか具体的に明示する必要があります。
そして、実際の残業時間に基づいて算出した残業手当と、定額の残業手当に相当する金額を比較して、定額の残業手当に相当する金額の方が高ければ、問題はありません。
定額の残業手当に相当する金額の方が低いときは、その差額を支払う必要があります。支払わないと、労働基準法違反になります。
年俸制の賞与
年俸制の場合は、賞与の取扱いについても注意が必要です。例えば、年俸が800万円で、16等分して、4ヶ月分を賞与として支払うとします。
この場合、賞与の金額が確定している場合は、これも残業手当の基礎に含めて計算しないといけませんので、「800万円÷12ヶ月」を月給とみなして計算することになります。
支給額が確定している場合は、賞与とはみなされません。労働基準法上、賞与とは、あらかじめ支給額が確定していないものと定義されています。
業績等によって支給額が変動し、支給する都度、賞与の金額を決定する場合は、「800万円÷16ヶ月」で計算することができます。