残業に対する認識を変える

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残業に対する認識を変える

残業時間を削減するために、色々な方法や制度を紹介していますが、制度だけを取り入れても根本的な解決には至りません。仏造って魂を入れずとならないよう、同時に労使双方の残業に対する意識を変える必要があります。

中には意識を変えるだけで、残業時間(残業手当)を減らすことが可能な場合もあります。

経営者の決断

残業時間の長さは、経営者の考えによって大きく変わります。経営者が「残業してでも売り上げを確保して欲しい」等と考えてきた結果、今の残業時間があります。

経営者自らが「残業時間を削減する」と決断することが、第一に欠かせないことです。現状を変えることは従業員にとっては面倒なことですので、経営者が決断し、率先して取り組まなければ、部下の意識を変えることはできません。

これまでサービス残業をさせていた会社は大変です。サービス残業を見越して経営していた訳ですから、それなりの出費や混乱は覚悟しないといけません。それを覚悟の上で決断できるかどうかです。

しかし、法律違反の取り扱いは、どこかで方向転換をする必要があります。「半年後にはサービス残業を止める」「今すぐは無理だけど、1年後には適正に残業手当を支払う」等と宣言して、その間に残業時間を減らす取り組みを実行してください。

残業は緊急時に限定する

「仕事があるから残業する」という考えを改める必要があります。つまり、「残業は緊急時又は納期に間に合わない場合だけ、例外的に行うもの」とします。

例えば、工場の機械が壊れて緊急に修理をしなければ、納期を守れないケースがあるでしょう。そのような場合は、修理を優先するべきです。

しかし、部下が納期に余裕があるにもかかわらず残業をしている場合は、上司は定時で帰宅するよう命じてください。

部下が「残業をしたい」と申し出たときは、「その業務は緊急なのか?」「定時で処理していたら納期に間に合わないのか?」と聴いて、実際にそうなのか確認をする必要があります。

そのような指導を繰り返していれば、部下にも「残業は緊急時又は納期に間に合わない場合だけ、例外的に行うもの」という考えが浸透していきます。

残業しても評価しない

例えば、仕事が早いAさんと仕事が遅いBさんがいて、同じ成果を上げたとします。同じ評価で基本給が30万円だったとすると、仕事が遅いBさんには残業手当が加算して支払われます。

同じ成果、同じ評価(残業を前提とした成果、評価)であるならば、Bさんの賃金は。残業手当も込みで30万円(基本給は残業手当を差し引いた金額)とするべきです。

人事考課をするときは一般的に、残業を考慮しないケースが多いです。反対に、残業をする従業員は仕事熱心に見えて、プラスに評価するケースもあります。

「残業は悪」として、一定の時間を超える残業をした従業員、残業をさせた上司、部署をマイナス評価の対象にすることも考えられます。

過労死は絶対に出してはいけない

厚生労働省の過労死の認定基準によると、残業時間が1ヶ月につき45時間を超えると業務との関連性が徐々に強まり、1ヶ月につき80時間を超えると業務との関連性が強いと判断されます。

会社には、従業員の健康や安全に配慮する義務があります。過労死(過労自殺)が起きた場合は、安全配慮義務違反として、会社は損害賠償を請求されます。会社に対して1億円を超える損害賠償の支払を命じた裁判もありました。

「月80時間を超える残業をしている従業員がいるけど、体力があるから大丈夫だ」と軽く考えていると危険です。脳・心臓疾患や過労自殺は発生しないと言い切ることはできません。

まずは、月80時間以内、その次は月45時間以内を目標として、残業時間を削減していきましょう。

競争力の低下

サービス残業をさせていると、会社の競争力が低下します。

サービス残業をさせていると、従業員は「どうせ残業手当が出ないんだから、仕事のやり方にとやかく言わないで欲しい」とダラダラと仕事をするようになります。これに対して、会社は強く反論や指示をすることができません。

生産性や効率は無視され、他社では4時間でできる仕事を8時間掛けて行うようになり、競争力が低下していきます。そうなると、残業手当を支払うことは、更に困難になっていきます。悪循環です。

サービス残業は法律的に問題ですが、競争力を失うことの方が問題です。

「生産性が向上して利益が出れば、サービス残業を止めて適正に残業手当を払おう」という考えは捨てないといけません。サービス残業をさせている間は、生産性や競争力が向上することはあり得ません。

今すぐ残業手当を支払うことが難しい場合は、3ヶ月後から(6ヶ月後から)適正に残業手当を支払うことを従業員に約束してはいかかでしょうか。生産性の向上や仕事の進め方に関して、従業員から協力を得るために、最低限必要なことと思います。

法令遵守(コンプライアンス)

近年は法令遵守(コンプライアンス)が重視され、従業員や経営者が違法な行為をした場合、会社の責任が問われます。従業員に対して、製品やサービスに関連する法律を守るよう繰り返し指導している会社も多いでしょう。

しかし、経営不振で生き残るためには、サービス残業はやむを得ないと考えている経営者もいます。そうなると、他の法律も、理由があれば破っても仕方がないという考えが成り立ってしまいます。

また、会社が違法な行為をしながら、従業員に法令遵守(コンプライアンス)を説いても、説得力がありません。まずは、会社が率先して法令遵守の姿勢を示すことが大切です。

身近な社会貢献

長時間労働や深夜労働は、ストレスの大きな原因となります。特に睡眠時間が短くなると、メンタルヘルスに悪影響が及ぶことが知られています。残業時間を減らすことで、次のような良い面があります。

最近は社会貢献が注目されていますが、残業時間を減らすことも身近な社会貢献の1つです。

そうすることによって従業員満足が高まり、結果的に顧客満足も高まります。顧客満足を高めようと思っても、従業員満足を無視しているとどこかで無理が生じて、いつかは破綻してしまいます。