新型コロナウイルス感染症による休業

新型コロナウイルス

新型コロナウイルスに関連して従業員が会社を休む場合は、賃金の支払いについて注意をする必要があります。

労働基準法によって、会社の都合で休業させた場合は、休業期間に対して平均賃金の60%の休業手当を支払うことが義務付けられています。会社の都合による休業かどうかがポイントです。

なお、労働基準法は全ての労働者に適用されますので、パートタイマー、外国人、派遣社員等も対象になります。

保健所の指示等により休んだ場合

新型コロナウイルスが指定感染症に指定されましたので、都道府県知事、保健所、医師から就業を制限して、自宅で待機するよう指導や協力要請が行われることがあります。この場合は、会社の都合で休業させたことにはなりませんので、無給で処理をしても構いません。

従業員の家族が新型コロナウイルスに感染したりして、従業員が濃厚接触者と疑われる場合は保健所等に設置されている「帰国者・接触者相談センター」に電話相談して、判断してもらってください。

本人が自主的に休んだ場合

発熱等の症状があったりして、従業員が自主的に休んだ場合は、通常の病欠と同様の取扱いで構いません。つまり、年次有給休暇を取得した場合は有給で処理をして、そうでない場合は無給で処理をすることになります。

会社が予防的に休ませた場合

風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く場合、強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合は、帰国者・接触者相談センターに問い合わせるよう従業員に伝えてください。

そして、帰国者・接触者相談センターに相談した結果、就業を制限するケースに該当しないと判断されたけれども、会社が予防的に休ませた場合は、会社の都合(会社の判断)で休業させたことになります。この場合は、休業期間に対して休業手当を支払う必要があります。

資材不足等のため休業する場合

新型コロナウイルスによる影響で、取引先が事業を休止したため、資材を調達できなくなったりして、休業せざるを得ないケースが生じる恐れがあります。資材不足を理由にして休業する場合は、通常は、休業手当の支払い義務があると考えられます。

新型コロナウイルスは自然災害と同じように不可抗力による休業と考えられる余地はありますが、休業手当を支払って、雇用調整助成金を利用する流れになると思います。

年次有給休暇の取得

「発熱等の症状がある従業員に年次有給休暇を取得させることは可能ですか?」と相談を受けることがあります。年次有給休暇は従業員が指定した日に取得することが原則ですので、会社が強制的に取得(消化)させることはできません。本人と話し合って、本人が取得に同意すれば問題ありません。

特別有給休暇

休業手当(平均賃金の60%)を支払う義務があるケース、無給で処理できるケースを説明しましたが、これらは労働基準法上の最低基準ですので、それを上回る取扱い(特別有給休暇として有給で処理)をすることは可能です。

いずれの取扱いをするとしても、後になって労使間で思い違いが生じないように、休業期間に対する賃金の処理方法について、あらかじめ従業員と話し合っておくことが大事です。

傷病手当金の支給要件

従業員(健康保険の加入者)が、次の要件を全て満たしている場合は、傷病手当金が支給されます。

  1. 業務外の病気やケガのため
  2. 仕事ができない状態になり
  3. 連続して3日以上休業し
  4. 4日目以降の休業期間に対して賃金が支払われなかった

休業して4日目以降の無給の休業期間に対して、健康保険から傷病手当金として、標準報酬日額(過去1年間の標準報酬日額の平均)の3分の2が支給されます。

傷病手当金の支給

新型コロナウイルスに感染して休業する場合(発熱等の自覚症状がない場合も含みます)、発熱等の自覚症状があって休業する場合(新型コロナウイルスに感染していない場合も含みます)は、傷病手当金が支給されます。

しかし、従業員の家族が新型コロナウイルスに感染して、従業員が濃厚接触者となって休業するような場合は、発熱等の自覚症状がなく感染もしていなければ、要件を満たしませんので、傷病手当金は支給されません。

雇用調整助成金

雇用調整助成金とは、景気の後退等、経済上の理由によって、事業活動の縮小を余儀なくされ、雇用調整を行わざるを得ない状況になり、従業員に一時的に休業、教育訓練、出向をして、雇用を維持した企業に対して、休業手当や賃金の一部を助成する制度です。

新型コロナウイルスによる影響が広範囲にわたり、長期化することが懸念されます。このため、新型コロナウイルスの影響を受けて、事業活動の縮小を余儀なくされた企業を対象に、雇用調整助成金の支給要件を緩和する特例措置が設けられました。

原則的な受給額は、休業期間に支払った休業手当や賃金の3分の2(大企業は2分の1)で、1人1日につき上限額が定められています。なお、特例措置によって、受給率や上限額が増額されています。申請や相談はハローワーク又は労働局で受け付けています。

小学校休業等対応助成金

新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために、小学校等に対して臨時休校が要請されました。臨時休校をした小学校等に通う子を世話するために、会社を休んだ従業員に、労働基準法の年次有給休暇とは別に、有給(賃金の全額)の休暇を取得させた企業に対して、助成金が支給されます。

なお、法律的には無給で処理できるケースに該当しますが、新聞やニュース等で報道されましたので、「年次有給休暇とは別の有給の休暇を取得したい」という従業員が現れるように思います。

感染防止に向けた柔軟な働き方

新型コロナウイルスへの感染を防ぐために、できるだけ人混みを避けた方が良いです。通勤のピークの時間帯を避ける時差出勤の制度、出退勤の時刻を従業員に委ねるフレックスタイム制の導入が考えられます。可能であれば、在宅勤務(テレワーク)も効果的です。

このような制度を導入する場合は、労働条件の変更に当たりますので、その内容について、従業員と協議の上、決定してください。

(2022/3作成)