仕事と介護の両立支援|企業が取り組む6つのステップ

仕事と介護の両立支援が企業に求められる背景

1947年から1949年に生まれた団塊の世代が、介護が必要な年齢に差し掛かっていて、2030年には、働きながら家族の介護をする者が約300万人に達すると予測されています。

従業員が介護の問題を抱えていると、生産性の低下や介護離職に繋がることがあります。特に、介護に直面する可能性が高い40歳以上の従業員が中核を担っている企業にとっては大きな影響が及びます。

仕事と介護を両立できる職場にすることは、現在は優先順位が低いかもしれませんが、今後はリスクマネジメントとして重要になっていきます。

両立支援に取り組む企業側のメリット

仕事と介護の両立支援を受けられる従業員にとっては、退職することなく、安心して働き続けることができます。

企業にとっては、介護離職を防止して、競争力を維持できます。また、仕事と介護の両立支援に取り組んでいることを求人広告等でアピールすれば、受け入れられる人材の幅が拡がって、応募者の増加が期待できます。

更に、仕事と介護の両立支援の一環として、サポート体制を整備するために、多能工や複数担当制を実現できれば、業務の改善、ノウハウの蓄積、過重労働の防止など、組織力が強化されます。

両立支援の取り組みの進め方

仕事と介護の両立支援の取り組みは、次のような流れで進めることが考えられます。

アンケートの実施

家族の介護は多数の従業員に発生する可能性があって、実際に介護をしている従業員がいるかもしれませんが、個人的な問題と思ったり、キャリアに影響しないか心配したりして、本人から言い出しにくいことがあります。

まずは、企業内の介護に関する状況を把握するために、アンケートを実施します。従業員数が少ない場合は、個別に面談をして聴取する方法もあります。

アンケートの項目としては、次のような内容が考えられます。

会社の方針の周知

アンケートを実施する前又は実施する際に、従業員に対して、①家族の介護は個人の問題ではなく、企業が取り組むべき課題であると認識していること、②仕事と介護の両立支援に取り組むこと、を明示することが重要です。これによって、オープンで積極的な回答が得られやすくなります。

このような会社の方針が明確でないと、介護休業や介護休暇の取得をためらうことがありますが、会社が方針を明確にすることによって、従業員は介護に関連する制度を利用しやすくなって、仕事と介護の両立の実現に繋がります。また、従業員同士で介護について話しやすくなります。

従業員が介護休業や介護休暇を取得すると、代替要員が穴埋めをするケースが多くなります。家族の介護は多数の者に発生する可能性があります(介護の可能性がなくても病気等で長期間休業をする可能性はあります)ので、会社の方針を周知して、お互い様という認識を職場全体で共有することが理想です。

両立支援制度の検討

介護休業、介護休暇、介護短時間勤務、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限は、育児介護休業法で定められている制度ですので、利用しやすいように整備をする必要があります。その上で、様々な働き方を実現できないか検討します。

介護の状態は様々で時間の経過によって変化しますので、従業員が必要とする支援も様々です。できれば1つ2つの支援制度ではなく、その都度、複数から選択できる状態にしておくことが望ましいです。また、代替要員に生じる負担の程度によっては、理解を得るために、代替要員に対して、代休や特別に有給の休暇を与えたり、賞与を増額したりすることも考えられます。

仕事と介護の両立ではなく、介護に専念することを選択する者もいます。それは尊重する必要がありますが、一旦、退職しても、将来、状況が変わったときに職場に復帰できる制度を整えることも支援になります。

なお、ケアマネジャーと打合せをしたり、介護保険サービスの手続きを代行したり、施設や病院への送迎・付添いをするために休むことは望ましいですが、従業員が自ら介護する時間を増やすために休むことは望ましくないです。介護はいつまで続くのか予測できませんので、介護に専念して退職する可能性が高くなります。

介護に関する情報提供

育児介護休業法で定められている介護休業等については、会社の育児介護休業規程を従業員に周知する方法が考えられますが、最新の法改正に準拠した内容になっていないと、対応を間違える恐れがありますので、注意が必要です。

また、介護保険のサービスを利用できることを知らないまま、本人が家族の介護をして疲弊することがあります。事前に介護保険制度の概要を理解しておくことで、要介護認定を受ける前から準備をして、早い段階で介護保険のサービスを利用するなど、それぞれの状況に応じて適切な支援制度を受けられるようになります。

育児介護休業法や介護保険制度については、厚生労働省や市町村からリーフレットやパンフレットが公開されていますので、活用すると良いでしょう。厚生労働省は「仕事と介護の両立」「介護保険制度の概要」、市町村は「介護保険の手引き」といったページが参考になると思います。

また、管理職を対象にして、研修を実施している会社もあります。

相談先の周知

職場で利用をする介護休業や介護休暇等については、会社の育児介護休業規程に基づいて対応しますので、管理職は相談の対応が可能と思います。しかし、介護保険の制度については、専門的な知識が必要ですので、管理職が対応することは困難です。

介護保険制度に関する相談は、「地域包括支援センター」が窓口となって受け付けていることを周知します。「地域包括支援センター」は介護保険法に基づいて市町村に設置されていて、介護保険の利用者の家族による相談も可能です。

(2026/5作成)


社会保険労務士 木下貴雄

執筆者:社会保険労務士 木下貴雄【 登録番号 第27020179号 】
就業規則を専門とする社会保険労務士です。メールを用いた関連サービスは20年以上の実績があり、全国の中小零細企業を対象に、これまで900社以上の就業規則の作成・変更に携わってきました。