介護保険制度の概要

介護離職の防止

団塊の世代が介護を必要とする年齢に差し掛かり、親の介護をするために離職する方が増加しています。

このような介護離職を防止するためには、介護保険を活用して、家族の負担を軽減することが重要です。そのためには、介護保険制度を理解することが欠かせません。

介護保険制度の概要を紹介します。

介護保険の対象者

介護保険のサービスを受けられる対象者は、65歳以上で要介護(要支援)認定を受けた方です。

40歳から64歳までの方は、加齢に伴って生じる特定疾病(がん末期、認知症、脳血管疾患等、16種類が定められています)を原因として、要介護(要支援)認定を受けた場合に限られます。

介護サービスの利用の流れ

介護保険のサービスを受けるまでの流れは、次のようになります。

  1. 要介護認定の申請
    市区町村の窓口で要介護認定の申請をします。
  2. 要介護認定の調査
    市区町村の調査員が自宅を訪問し、心身の状況を確認するために、本人や家族から聞き取り調査を行います。また、市区町村からの依頼により、主治医が心身の状況について意見書を作成します。認定のための費用は掛かりません。
  3. 認定結果の通知
    介護認定審査会で審査、判定を行い、原則として申請してから30日以内に、市区町村から認定結果が通知されます。要介護は1から5まで、要支援は1又は2の7段階に分かれています。介護を必要としない場合は、非該当と判定されます。
  4. ケアプランの作成
    要介護と認定され、在宅で介護サービスを利用する場合は、ケアプラン作成事業者(居宅介護支援事業者)に依頼をして、ケアマネジャー(介護支援専門員)にケアプラン(介護サービス計画)を作成してもらいます。
    要介護と認定され、施設への入所を希望する場合は、希望する施設に申し込んで、施設のケアマネジャーにケアプランを作成してもらいます。
    ケアプランとは、どの介護サービスを、どの事業所で、どれだけ利用するか、といった計画書のことを言います。要支援と認定された場合は、地域包括支援センターで介護予防ケアプラン(介護予防サービス計画)を作成してもらいます。
  5. 介護サービスの利用
    ケアプランに基づいて、介護サービス(在宅サービスや施設サービス)を利用します。

介護サービスの利用料

ケアプランに基づいて介護サービスを利用した場合の利用者の自己負担は、費用の1割です。

ただし、所得金額が160万円以上(単身で年金収入のみの場合は年収280万円以上に相当します)の方については、自己負担は2割になります。

更に、所得金額が220万円以上(単身で年金収入のみの場合は年収340万円以上に相当します)の方については、自己負担は3割になります。

なお、食費、居住費(光熱水費や室料)、日常生活費(おむつ代や理美容代等)は、介護サービスとは別に費用を負担する必要があります。

また、利用者の負担が過重にならないように、「高額介護サービス費」という制度があります。1ヶ月の自己負担額(1割又は2割)が所得に応じて設定された上限額を超えた場合は、市区町村に申請をすれば、超えた分が払い戻されます。

ただし、在宅サービスを利用する場合は、1ヶ月の利用限度額が要介護度別に設定されています。一例を挙げると、要介護3の場合は約27万円、要介護5の場合は約36万円(10割の費用)となっています。利用限度額を超えた場合、超えた分は全額自己負担になります。

介護に関する相談窓口

介護サービスなど介護に関することは、「地域包括支援センター」で相談を受け付けています。「地域包括支援センター」とは、市区町村が委託して運営している公的な機関です。

また、「介護サービス公表情報システム」がインターネット上に公開されていて、地域ごとに介護サービスを行っている事業所を検索できるようになっています。

介護サービスの種類

介護保険のサービスは、次のように分類されます。

  1. ケアプランの作成
  2. 自宅に訪問
  3. 施設に通う
  4. 訪問・通い・宿泊を組み合わせる
  5. 短期間の宿泊
  6. 施設等で生活
  7. 地域密着型サービス
  8. 福祉用具を使う

個々の介護サービスの内容は次のとおりです。

ケアプランの作成

居宅介護支援(ケアマネジメント)

利用者が適切な介護サービスを利用できるようにするために、利用者の心身の状況、生活環境、本人や家族の希望等を考慮した上で、ケアマネジャーがケアプランを作成して、そのプランに基づいてサービスを受けられるよう事業者や関係機関と連絡、調整を行います。

自宅に訪問

訪問介護(ホームヘルプ)

ホームヘルパー(訪問介護員や介護福祉士)が利用者の自宅を訪問して、入浴、排泄、食事等の介護【身体介護】や掃除、洗濯、買物、調理等の家事【生活援助】を行います。

訪問入浴介護

看護職員や介護職員が利用者の自宅を訪問して、持参した浴槽によって入浴の介護を行います。

訪問看護

看護師等が疾患のある利用者の自宅を訪問して、主治医の指示に基づいて療養上の世話や診療の補助(血圧、脈拍、体温等の測定、病状のチェック等)を行います。

訪問リハビリテーション

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が利用者の自宅を訪問して、心身機能の維持回復や日常生活の自立に向けたリハビリテーションを行います。

夜間対応型訪問介護

24時間安心して日常生活を送れるよう、夜間帯にホームヘルパー(訪問介護員)が利用者の自宅を訪問して、身体介護や生活援助を行います。定期的に訪問する「定期巡回」と利用者の連絡を受けて対応する「随時対応」の2種類があります。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護

利用者の心身の状況に応じて、定期的に訪問したり、利用者の連絡を受けて対応したり、24時間365日必要なタイミングで、訪問介護や訪問看護のサービスを受けられます。

施設に通う

通所介護(デイサービス)

利用者が通所介護の施設(利用定員が19人以上のデイサービスセンター等)に通って、食事や入浴等の日常生活上の支援、生活機能向上のための機能訓練等を日帰りで受けられます。

通所リハビリテーション(デイケア)

利用者が通所リハビリテーションの施設(老人保健施設、病院、診療所等)に通って、心身機能の維持回復や日常生活の自立に向けたリハビリテーションを行います。

地域密着型通所介護

利用者が地域密着型通所介護の施設(利用定員が18人以下のデイサービスセンター等)に通って、食事や入浴等の日常生活上の支援、生活機能向上のための機能訓練等を日帰りで受けられます。

療養通所介護

看護師による観察が常に必要な難病、認知症、脳血管疾患等の重度要介護者又はがん末期患者を対象にしたサービスで、医師や訪問看護ステーションと連携して提供されます。利用者が通所介護の施設に通って、日常生活上の支援や機能訓練等を日帰りで受けられます。

認知症対応型通所介護

認知症の利用者を対象にしたサービスで、利用者が通所介護の施設(デイサービスセンターやグループホーム等)に通って、日常生活上の支援や機能訓練等を日帰りで受けられます。

訪問・通い・宿泊を組み合わせる

小規模多機能型居宅介護

利用者の選択に応じて、施設への「通い」を中心として、短期間の「宿泊」、利用者の自宅への「訪問」を組み合わせて、日常生活上の支援や機能訓練を受けられます。

複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)

利用者の選択に応じて、施設への「通い」を中心として、短期間の「宿泊」、利用者の自宅への「訪問(介護)」に加えて、看護師等による「訪問(看護)」も組み合わせることで、介護と看護の一体的なサービスを受けられます。

短期間の宿泊

短期入所生活介護(ショートステイ)

利用者が介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)等に短期間入所して、食事や入浴等の日常生活上の支援、機能訓練等を受けられます。連続利用日数は30日までとなっています。

短期入所療養介護(ショートステイ)

利用者が医療機関や介護老人保健施設に短期間入所して、医療、看護、介護、機能訓練、日常生活上の世話等を受けられます。連続利用日数は30日までとなっています。

施設等で生活

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)

入所定員が30人以上の施設で、入浴や食事等の日常生活上の支援、機能訓練、健康管理、療養上の世話等を提供します。常に介護が必要で、自宅では介護が困難な方(原則として要介護3以上の方)が対象です。入所期間に制限はありません。

介護老人保健施設

入院により一時的に身体機能が低下したりして、在宅復帰を目指している方を対象とする施設で、機能訓練、医療、看護、介護、日常生活上の世話等を提供します。入所期間は原則として3ヶ月間とされていて、長期の入所は想定されていません。

介護療養型医療施設

長期に渡って療養が必要な方を対象とする施設(療養病床のある病院や診療所)で、療養上の管理、医療、看護、介護、機能訓練等を提供します。

特定施設入居者生活介護

指定を受けた有料老人ホーム(民間企業が運営)、養護老人ホーム(入所の可否は市区町村が決定)、軽費老人ホーム(社会福祉法人や地方自治体が運営)が、利用者の入居を受け入れて、ケアプランの作成、安否確認、生活相談等を行います。

介護サービスの提供方法は2種類あって、「一般型」は施設が自ら提供します。「外部サービス利用型」は外部の事業者に委託して提供されます。

地域密着型サービス

認知症対応型共同生活介護(グループホーム)

認知症の利用者がグループホームに入居して、食事や入浴等の日常生活上の支援、機能訓練等のサービスを受けられます。グループホームでは、1つの共同生活住居に5〜9人の利用者が介護スタッフと一緒に共同生活を送ります。

地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護

入所定員が29人以下の介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)で、入浴や食事等の日常生活上の支援、機能訓練、健康管理、療養上の世話等を提供します。常に介護が必要で、自宅では介護が困難な方(原則として要介護3以上の方)が対象です。

地域密着型特定施設入居者生活介護

入居定員が29人以下の有料老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホームが、利用者の入居を受け入れて、ケアプランの作成、安否確認、生活相談等を行います。介護サービスの提供方法は、「一般型」と「外部サービス利用型」の2種類があります。

福祉用具を使う

福祉用具貸与

利用者が自宅で自立した日常生活を送ったり、家族が行う介護の負担を軽減したりするために、指定を受けた事業者から福祉用具を借りられます。

また、適切な福祉用具を選ぶための援助、取り付け、調整等も行ってもらえます。福祉用具の貸与に係る費用の1割(一定の所得がある場合は2割)を利用者が負担します。

対象となる福祉用具は次のとおりですが、要介護度に応じて異なります。

  1. 車椅子、及び付属品
  2. 特殊寝台、及び付属品
  3. 床ずれ予防用具
  4. 体位変換器
  5. 手摺り
  6. スロープ
  7. 歩行器
  8. 歩行補助杖
  9. 認知症老人徘徊感知機器
  10. 移動用リフト(つり具の部分を除く)
  11. 自動排泄処理装置

特定福祉用具販売

入浴や排泄に用いたりして貸与に馴染まない福祉用具を、指定を受けた事業者から購入できます。購入できる金額は年間10万円(10割の費用)までとなっていて、利用者が一旦全額を支払った後、費用の9割が払い戻されます。

対象となる福祉用具は次のとおりですが、要介護度に応じて異なります。

  1. 腰掛便座
  2. 自動排泄処理装置の交換可能部品
  3. 入浴補助用具
  4. 簡易浴槽
  5. 移動用リフトのつり具の部分

(2019/11作成)