残業単価の計算から除外できる賃金
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残業単価の計算から除外できる賃金
月給制の場合、月給を「1ヶ月の所定労働時間の平均」で割って、1時間あたりの単価を算出することをお伝えしました。
この月給とは、月額で決定して支払っている手当(賃金)のことを言います。
しかし、月給の中には通勤手当もあります。通勤手当は通勤に要する費用を補助するために支払う手当ですので、実費で支払っている会社が一般的です。
その場合に、残業したからといって、通勤手当を加算して(実費を超えて)支給するのは、支給する側にとっては釈然としません。
残業単価の計算から除外できる賃金
そのため、一定の賃金(手当)については、労働基準法では、残業手当の単価を計算する際に除外することが認められています。具体的には、次の7種類の賃金(手当)です。
- 家族手当・・・扶養家族の数に応じて支給額を決定する手当
- 通勤手当・・・通勤距離や通勤に要する費用に応じて支給額を決定する手当
- 別居手当・・・単身赴任等で別居を余儀なくされ、その生活費を補うために支給する手当
- 子女教育手当・・・子の教育費を補助するために支給する手当
- 臨時に支払われた賃金・・・結婚祝金や見舞金など、突発的な理由で支給する手当
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金・・・賞与など
- 住宅手当・・・住宅に要する費用に応じて支給額を決定する手当
通勤手当、家族手当、住宅手当は、個人の事情によって支給額を決定する手当で、福利厚生として支払うものです。
このような手当を残業手当の単価に加算すると、本来の目的を超えて支給することになりますので、除外することが認められています。
7種類以外は残業手当の単価の計算から除外できません
これらは労働基準法によって、限定的に列挙されたものですので、これ以外の賃金(手当)を除外することはできません。
残業手当の単価を計算する際に除外できるのは、この7種類の手当だけ(「除外賃金」)です。
除外賃金は実態で判断されます
これらの「除外賃金」に該当するかどうかは、実態に基づいて判断されます。つまり、名称が「家族手当」となっていても、
- 扶養家族がいない従業員にも支給している
- 扶養家族の有無だけで、支給額を決定している
- 配偶者の有無だけで、支給額を決定している
このような家族手当は、実質的には家族手当と認められませんので、残業手当の単価を計算する際に除外できません。扶養家族の数に応じて、支給額を変動させる必要があります。
例えば、子1人につき3,000円を支払うこととして、2人扶養している従業員に6,000円を支給するような場合は、家族手当として除外できます。
通勤手当についても、通勤距離や交通費に関係なく、例えば、通勤手当として一律1万円を支給しているような場合は、除外できません。
住宅手当
住宅手当も同じように考えられます。住宅に要する費用に応じて支給額を決定していれば、残業手当の単価を計算する際に除外できます。
例えば、次のような住宅手当は、除外できます。
- 家賃(又はローン月額)に一定の支給率を掛けた金額を支給する
- 家賃(又はローン月額)に応じて段階的に支給する
(5〜10万円の者には2万円、10万円以上の者には3万円など)
しかし、次のような基準で住宅手当の支給額(支給の有無)を決定している場合は、除外できません。
- 賃貸かどうか
- 持家かどうか
- 扶養家族の有無
- 役職
これらは全て、住宅に要する費用に関係なく支払われていますので、残業手当の単価を計算する際は除外できません。
時間単価の計算
これで、1時間あたりの単価(以下「時間単価」)が計算できるようになりました。
時間単価=(7種類の除外賃金を除いた)賃金/1ヶ月の所定労働時間の平均