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大和銀行事件 事件の概要

銀行において、毎年2回、6月と12月に賞与を支給していました。

従業員が5月に銀行を退職したのですが、賞与は従来から、その支給日に在籍している従業員に対してのみ支給してきたため、銀行はその退職した従業員に賞与を支給しませんでした。

また、この従業員が退職する前に、銀行は労働組合の要請を受けて、従来からの慣行を明文化するために、就業規則を改訂し、賞与は支給日に在籍している者に対して支給することを定めて、全従業員に周知していました。

従業員は、賞与の支給対象期間に勤務していたので、賞与は支払われるべきだと主張して、賞与の支払いを求めて、銀行を提訴しました。

大和銀行事件 判決の概要

銀行においては、就業規則を改訂する前から、年2回の決算期の中間時点を支給日と定めて、その支給日に在籍している者に対してのみ、決算期間を対象とする賞与が支給されるという慣行が存在していた。

また、支給日に在籍していることを要件として定めた就業規則の改訂は、労働組合の要請によって慣行を明文化したものであって、その内容については合理性がある。

以上により、従業員は、銀行を退職した以降の6月及び12月を支給日とする賞与については、受給権はない。

解説−賃金の定義

賞与の支給日在籍要件(賞与の支給対象者を支給日に在籍している者に限ること)を定めた就業規則の内容が、有効かどうか争われた裁判です。結果的に、銀行の主張が認められ、賞与の支給日の前に退職した従業員に対しては、賞与を支払わなくても良いと判断されました。

この銀行では、就業規則を改訂する前から、支給日に在籍していない従業員には賞与を支給していなかったという慣行がありました。そのため、就業規則を改訂していなくても、銀行(会社)の主張が認められたかもしれません。

しかし、他の会社においては、慣行が存在していたと認められるかどうかという問題になりますので、就業規則に、支給日在籍要件を明確に定めておくべきです。もちろん、既に退職した従業員にも賞与を支給するという会社については、支給日在籍要件の記載は不要です。

なお、賞与は、支給対象期間中の会社の業績や勤務成績等を評価して、支給額を決定している会社が一般的です。賞与をこのように「後払いの賃金」と位置付けると、支給日に退職しているかどうかに関係なく、支給対象期間に在籍していれば、支給義務があると考えられるかもしれません。

しかし、賞与は、「将来の勤務を期待して支給する」という意味合いも大きいです。また、労働基準法等により、賞与は支給が義務付けられているものではありませんので、差別的な取扱いでない限り、ある程度、会社が自由に決定することができます。通常は、就業規則で取扱いを定めています。